鈴木信夫の詩の世界 ~筋ジスと向き合った40年~

筋ジストロフィーと向き合い、2011年5月、40歳の若さでこの世を去った詩人鈴木信夫の心に響く詩を紹介します。

鈴木信夫の「詩集」

これまでに出版した詩集は                                                     「マイナスからのスタート」(2001年文芸社)                                           「君に いい風 吹きますように」(2004年神奈川新聞社)                                               「生命いっぱい」(2007年神奈川新聞社)                                                      「こころのごちそう」(2012年神奈川新聞社) の4冊と                                                    浅田美知子さんとの共著の絵手紙詩手紙                                                                   「風のように花のように」(2010年 日貿出版社)                                        があります。ホームページでも紹介していますのでご覧下さい。                                               

「勝つ知恵」と「負けない工夫」

2014-01-31 | 
スポーツの世界や勝負事では勝ち負けがあります。
人生の勝ち負けは果たしてあるのでしょうか。


    「勝つ知恵」と「負けない工夫」
                           2002年12月 鈴木信夫

生きるために必要なことは、何だと思いますか
人に勝ち、すべてを手に入れることだけのために
「知恵」を使っている人はたくさんいるけど
僕も人との比較の中でだけ生きていたのかもしれない
それを本当の意味で勝つとは言わないのに
今、僕は知ったよ、勝つとは、自分に勝つことだと
そこに「知恵」を使わなければならないことを
それさえ忘れなければ、勝ちつづけることができる

僕は生きる中でもう一つ教えられた
人には勝つことが難しい時もたくさんある
そのときに負けないという「知恵」が必要だということ
負けに片方の足を踏み出していたとしても遅くない
まだ本当の意味で負けたわけではないから
今、僕は知ったよ、負けないためにはあきらめないことだと
それが「負けない工夫」なのだということを
それさえ忘れなければ、負けてしまうことはない
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小さな願い

2014-01-30 | 
不自由な身体でいつも一日一日を精一杯生きようとしていました。
また、いつも誰かのためになりたいと思い続けていました。
40年の生命でしたが、鈴木信夫らしく生きたと思います。


       小さな願い
                  2006年4月 鈴木信夫

僕には小さな願いがあるから生きていられる
そんな小さな願いを大切にしていきたい
それは悔いのない一瞬を送ること
それは悔いのない一日を送ること
それは悔いのない一ケ月を送ること
それは悔いのない一年を送ること
それは悔いのない一生を送ること
それができた時に僕らしく生きたということになる

僕には小さな願いがあるかぎり生きていられる
そんな小さな願いを大切にしていきたい
それは誰かのために一瞬を送ること
それは誰かのために一日を送ること
それは誰かのために一ケ月を送ること
それは誰かのために一年を送ること
それは誰かのために一生を送ること
それができた時に僕らしく生きたということになる
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花畑に埋もれて

2014-01-29 | 
時には自分を違う世界に置きたい、という気持ちを持つものです。
そんな気持ちを表した詩です。


花畑に埋もれて
2006年4月 鈴木信夫

ずっと花畑に埋もれていたい
やわらかな、やわらかな花の咲きみだれる花畑に
かおりたつ、かおりたつ花いっぱいの花畑に
追いだしてしまいたい
あんな気持ち、こんな気持ちをはてしない空に
ここにあるあの言葉、この言葉をしずかな空に
ふかく花畑に埋もれていたい

からだをぜんぶ投げだしたい
おだやかな、おだやかな風ながれる花畑に
ゆるやかな、ゆるやかな時がながれる花畑に
しっかり向き合っていたい
好きな自分、嫌いな自分どちらとも
生きてる自分、生かされてる自分どちらとも
からだぜんぶつつまれたい

受け止めていたい
小さなかなしみ、大きなかなしみを心に
小さなやさしさ、大きなやさしさを心に
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嘘のない生き方をしたい

2014-01-28 | 
「嘘も方便」という言葉があるように、時には嘘も必要なのかもしれません。
自分の気持ちには嘘をつきたくない…。でも、なかなかそうはいかない…。


     嘘のない生き方をしたい
                    2006年4月 鈴木信夫

嘘のない生き方をしたい
世の中はきれいごとじゃいかない
だから、嘘のない生き方をしたい
世の中は嘘なしじゃいかない
だけど、嘘のない生き方をしたい
わたしの気持ちに嘘のない生き方をしたい

嘘のない生き方をしてほしい
世の中は簡単にいくわけがない
だけど、嘘のない生き方をしてほしい
世の中は嘘があふれているじゃない
だから、嘘のない生き方をしてほしい
あなたの気持ちに嘘のない生き方をしてほしい
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やがて空気が動きだす

2014-01-27 | 
1月23日に「LOST&FOUND]という詩を紹介しました。
今日のこの詩も同じ気持ちを表したものです。


        やがて空気が動きだす
                        2006年4月 鈴木信夫

僕は、いつのまにこうなってしまったの
一つ一つを奪われて、それでも生きつづける
奪われるつらさ、苦しさから逃げていたなら
僕は、ここにいないだろう
そんな時に、あなたの言葉が心に呼びかけてくれる
海に光がさしこんでいくように、心に明かりがさしていく
その明かりで時を照らしていけ、やがて空気が動きだす
僕が逃げさえしなければ、与えられていくんだね
僕らしく生きていけるんだね

僕は、いつのまにかどうなってしまったの
一つ一つを無くして、それでも生きている
奪われる淋しさ、悲しみに向き合わなければ
僕は、人になりきれないだろう
そんな時に、あなたの想いが心を支えてくれる
海風が僕を追い越していくように、心を何かが吹き抜けていく
その透明感で空間を満たしていけ、やがて空気が動きだす
僕が背を向けなければ、与えられていくんだね
僕らしく生きていけるんだね

すべてが砂のようにくずれてしまっても
心さえ失くさなければ、与えられていくんだね
僕らしく生きていけるんだね

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ほら、あの空を見てごらん

2014-01-26 | 
身体が不自由な人、心を病んでいる人、そういう人たちを励ます詩を多く作ってきました。
この詩もその一つですが、星の話にすることによって、やわらかな言葉になっています。


      ほら、あの空を見てごらん
                        2006年4月 鈴木信夫

ほら、あの空を見てごらん

星たちがこんなふうに話し合っているみたい
「哀しみ」を薄めてあげるよ、僕たちのなみだでね
「苦しみ」を薄めてあげるよ、僕たちのなみだでね

この雨は、なみだ集めて降らせてるんだよ
君の哀しみを薄めて、街を優しくしてみよう
その苦しみを薄めて、街を優しくしてみよう
そしたら、君は生きてくれるかな

ほら、あの空を見てごらん

星たちがこんなふうに話し合っているみたい
「痛み」を薄めてあげるよ、僕たちのなみだでね
「嘆き」を薄めてあげるよ、僕たちのなみだでね

この雨は、なみだ集めて降らせてるんだよ
君の痛みを薄めて、人を優しくしてみよう
その嘆きを薄めて、人を優しくしてみよう
そしたら、君は生きていられるよね
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てくてくあるいていきましょう

2014-01-25 | 
先がよく見えないときに、動かずにじっと様子を見るか、まず動いて見るか、
考え方はいろいろあると思いますが、少しづつ前へ動くのがいいようです。
それも、「はしる」のではなく「あるく」…です。


    てくてくあるいていきましょう
                       2006年4月 鈴木信夫

てくてくあるいていきましょう
このさきにどんなことがあるか、わからないけどね
まずはね、あるいていくことだよ
とまってたらさ、なぁんにもかわらないから
とにかく、あるいていくことだよ
そうすれば、まわりがかわっていくもの
はながさいている、かぜがふいている
はっぱがゆれている、こどものこえがする

てくてくあるいていきましょう
いきていれば、けっこうたのしくなるものだよ
まずはね、いきていくことだよ
とまってたらさ、いきててもつまらないから
とにかく、あるいていくことだよ
そうすれば、まわりがかわっていくもの
あなたがいてくれる、わたしがここにいる
それでいいんだよ、たったそれだけでね

てくてくあるいていきましょう
まずはね、あるいていくことだよ
まずはね、いきていくことだよ
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しあわせ係数

2014-01-24 | 
学生時代、数学が苦手でした。
プログラマーの仕事には数学が必要なのでは…と思われたのですが、
実は、数学の得手不得手とは直接関係がなかったようです。


     しあわせ係数
                  2006年3月 鈴木信夫

数学にいろんな係数があるように
僕らが生きてる世界にも係数があったらいい
それを「しあわせ係数」と呼びたいと思う
悲しみに掛けると、しあわせ、あまり、なみだになる
そんな係数があればいいのにね
苦しみに掛けると、しあわせ、あまり、ねがいになる
そんな係数があればいいのにね
不安に掛けると、しあわせ、あまり、あたたかさになる
そんな係数があればいいのにね
寂しさに掛けると、しあわせ、あまり、やさしさになる
そんな係数があればいいのにね
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LOST & FOUND

2014-01-23 | 
筋ジストロフィーが進行してゆき、身体の力が少しづつ失われていきました。
最後に残った指先のわずかな力でパソコンを使い詩を紡いできました。
失ったものは大きなものでしたが、それにもまして得たものは大きかったようです。


        LOST & FOUND
                        2006年4月 鈴木信夫

人は生きていく中でほとんどのものをなくしていく
生まれたらそれまでの記憶はなくなっていく
生きていくうちに大事なものをなくしていく

僕はすべてをなくしていった、少しずつね
歩いていく力も空気をすう力もなくした
僕はすべてをなくしていった、少しずつね
動く力も手の力も指先の力すらもなくした

今までになくしたのは見えるものばかりだったが
なくしたぶんだけ、たくさんのものを見つけた
すべて僕の今を形づくってくれている

ある時、悲しみにかくれている愛を見つけた
ある時、痛みを知って優しさを見つけた
ある時には、死を見つめて生きる勇気を見つけた

そこから見つけられた「人の心」がいちばんなのかも知れない
なくしたものは捨て去って新しいなにか見つけたい
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「やさしさ」を配って

2014-01-22 | 
自身が弱者であるがゆえに弱者に対する思いは人一倍強く持っていました。
苦しんでいる人、困っている人に何が必要か…ということを考えてみました。


        「やさしさ」を配って
                         2005年12月 鈴木信夫

例えば、きみの前に苦しい誰かがいるとしよう
そんな時にはどうしたらいい?
どうしたの?そう声をかけてほしい
なにを苦しんでるの?そう聞いてみてほしい
それだけでいいから
あとは顔をみて話をしずかに聞いてあげよう
それが本当のやさしさっていうんだよ
それならきみにだって配れるから

例えば、きみの前に死にたい誰かがいるとしよう
そんな時にはどうしたらいい?
どうしたの?そう肩をたたいてほしい
なんで死にたいの?そう聞いてみてほしい
それだけでいいから
きみが死んだら悲しい、そう言ってあげよう
それが本当のやさしさっていうんだよ
それならきみにだって配れるから
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落ちこぼれた天使

2014-01-21 | 
「天使」もたくさん使われたテーマのひとつです。
かわいいよく気が付く天使ではなく、少しできの悪い天使、かえって魅力的なのでしょう。
人に置き換えてみるとよくわかりますね。


落ちこぼれた天使
2005年11月 鈴木信夫

きみからこぼれた涙が語りかけてくる
いいんだね、「落ちこぼれた天使」でって
ぼくからそっと語りかけてみる
ほんとつらかったね、くるしかったね
これから楽になってもいい、笑っていけばいい
いいんだよ、「落ちこぼれた天使」でね
落ちこぼれだから知ってること
落ちこぼれだから出来ること
いっぱいあるし、人の心にまでとどける力がある
いいんだよ、「落ちこぼれた天使」でね
落ちこぼれだから優しい人になれる
落ちこぼれだから涙ふいてあげられる
さりげなくできるし、ほんとの愛をもってる
ぼくは「落ちこぼれた天使」が大好きだよ
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人生は「らせん階段」

2014-01-20 | 
生き方をテーマにした詩をたくさん作っています。
これもその一つですが、悩んでいる人に対して語りかけているのですが、
実は自分自身に言い聞かせているのかと思います。


        人生は「らせん階段」
                                2005年11月 鈴木信夫

君の人生を外からじっとながめて見てごらん
人生は「らせん階段」みたいなものかもしれない
目の前をぐるぐる回っているだけで先は見えてこないものさ
まるで君の人生が今までそうであったかのように
それでもいいのかもしれない、それでもね
今から変えてみよう、変わってみよう
こうなったら、今できることはこれしかない
まずは一段一段と上っていくことかな、かならず先は見えてくるはずだからね
すぐに夢を捨ててしまわないことかな、かならず光が見えてくるはずだからね
こうなったら、今しっかり生きるしかない
まずは一つ一つ進めていくことかな、かならず何か与えられているはずだからね
すぐにあきらめてしまわないことかな、かならず光が与えられているはずだからね
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二人いない意味

2014-01-19 | 
十人十色といいますが、確かに同じ人はいませんね。


       二人いない意味
                       2005年9月 鈴木信夫

この世界を生きる人に一人も同じ人がいない
それって、なぜだか分かりますか
同じ人が二人いても何も変わらないから
一人一人が別の人だから世界がまわっていくんです
同じ人がこの世界に二人いないから
一人一人がとてもとても大切になっていくんです
あなたの隣にいる人が…、目の前にいる人が…
とてもとても大切になっていくんです
あなたの先を歩く人が…、後ろから来る人が…
とてもとても大切になっていくんです
それが、この世界を生きる人に一人も同じ人がいない意味
それが、この世界にかくされている大きな意味
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神様はみているから

2014-01-18 | 
身体が動かせず、指先だけでパソコンを使い、詩を作ってきました。
必ず誰かが見ていてくれる…ことを信じて毎日を頑張ってきました。


    神様はみているから
                   2005年6月 鈴木信夫

わずかに動く指先で生きるわたし
ひとと話すことで生きるわたし
あとはみずからでは生きられないわたし
それでも神様はみているから生きていられるわたし
あたえられているから生きていられるわたし
生きているからつたえられること
わたしはそれをあなたにとどけていきたい
言葉でしかつながれないわたし
想いでしかつながれないわたし
そんなわたしでも生きていることを知らせたい
それがわたしができることのひとつ
あなたにも生きる勇気をとどけていきたい
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人でいうなら、花でいうなら

2014-01-17 | 
人の生き方にはいろいろありますが、つねに控えめに控えめにと考えていました。
もっとも、身体が自由にならない身ではそう考えざるを得なかったのかもしれませんが…。


  人でいうなら、花でいうなら
                  2005年9月 鈴木信夫

私は生きたいと思います
あたえられた時だけでいい
人でいうなら、ひかえめでいられたら
強打者より守備の人になりたい
好投手(エース)より中継ぎ投手がいい
選手達(チーム)の輪の中にいれるなら
そんな風に生きてみたい
そんな風な生き方できないでしょうか

私は生きたいと思います
ありふれたような人生でいい
花でいうなら、そこにひっそり咲けたら
しずかな目立たない花になりたい
ほのかにかほるような花がいい
確かな自分を感じられるなら
そんな風に生きてみたい
そんな風な生き方できないでしょうか
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作品を引用するとき

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