郷が杜備忘録

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新装版 ハゲタカⅡ(上)(下)

2019-03-03 | 読書
新装版 ハゲタカⅡ(上)(下)

  講談社文庫  2013年10月16日第1刷発行 2018年7月27日第10刷発行
  この作品は、2006年4月に講談社より「バイアウト」として刊行され、2007年3月に改題し、講談社文庫より
  刊行された。


  著者 真山 仁(まやま じん)
  1962年 大阪府生まれ、同志社大学法学部政治学科卒業。
  読売新聞記者を経て、フリーランスとして独立。
  2004年「ハゲタカ」でデビュー。
  「ハゲタカ」シリーズのほか、「虚像の砦」「そして、星の輝く夜が来る」「売国」「コラプティオ」「黙示」「プライド」
  「海は見えるか」「当確師」「標的」「バラ色の未来」「オペレーションZ」がある。


  前作「ハゲタカ」に続き、主人公鷲津政彦の活躍が面白く、あっという間に読み終えてしまった。
  あわせて、小説に出てくる企業がどこなのか、平成の経済事件を思い出しながら、難しい企業買収の話を
  なんとか頭に入れながら読み進めた。

  今回は前半は、繊維業界の老舗・鈴紡の買収をめぐる攻防であった。そして、その結果は?
  後半は、巨大電機メーカー・曙電機であった。新興メーカーシャインも登場し、アメリカの軍産ファンドも加わり
  熾烈な戦いが続けられた。


  この本では、各部の冒頭に太平湯戦争前後の無頼派作家、坂口安吾の「堕落論」の文章が引用されている。
  敗戦後に敗戦に打ちひしがれている日本人に向かって、「堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、
  救わなければならない」という逆説的エールを送った評論「堕落論」を書いたのである。
  冒頭に「堕落論」の文章が引用されたのには、この著作を通して筆者が現代の日本に対して願っている
  「そこには厳しい現実を見つめることなくして、日本社会の真の再生はないという、強いメッセージがある」と
  解説にはあった。


  日本社会はこの本が書かれてからも、リーマンショックや東日本大震災を経て10数年たっているが、バブルの
  後遺症のデフレからも抜けられず、混迷化する世界情勢のはざまにもあって、一進一退の状況が続いている。
  この後東京オリンピックもあり、大阪万博と浮かれているが、少子高齢化の波も止まらないなか、将来の明るい
  見通しも政治からは見えてこないので、今後日本社会は安定していくのか、不安が高まっていくばかりである。
コメント
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