郷が杜備忘録

旅行や読書と日々の行動の記録。
日常のできごとや思い出の写真が中心。 たまに旅行の記事も投稿します!

六地蔵河原の決闘(佐藤雅美著)

2024-09-22 | 読書・佐藤雅美著

しばらくぶりに時代小説を読んだ。佐藤雅美さんの八州廻り桑山十兵衛シリーズだ。

5冊読んだところで一休みしていたが、長く間が空いてしまった。
 
前にも書いているが、時代は江戸時代後半の、今の関東周辺を管轄した「八州廻り」という、悪人を取り締まる「関東取締役出役」の話である。
 
8編の話からなる今回は、出張の多い八州廻りの、十年ぶりの娘との再会から始まる。
 
この娘にも、いろいろ事情があり、父としての対応や、後妻にもらった妻との関係にも難しいところがある。
 
間間に、関東周辺のいろんな悪党の話が出てきて、江戸時代も、今と同じようにいろんな悪党がいたものである。そして、それに対応する警察も苦労するようである。
 
それにしても、江戸時代でも訴訟や裁判の決まりもあり、もちろんいまのように簡単にはいかないのだが、何か事件が起これば村全体も悪党たちの処分に関わらせられるようであった。
 
時代小説を読みながら、現代も振り返り、世の中の男と女、父と娘、夫と連れ合いなど、いろんなことを考えさせながら、楽しく読むことができた。
 
 
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千世と与一郎の関ケ原(佐藤雅美著)

2023-10-02 | 読書・佐藤雅美著

しばらくぶりに佐藤雅美さんの小説を読んだ。実はこの本は2回目の挑戦である。一度目は、図書館から借りたのだが読まずに返却してしまった

のである。

 

題名だけではわからないが、この本は前に書いた細川幽斎の孫の話である。

細川幽斎には、忠興という息子がいる。その子供が幼名与一郎の忠隆(長男)であり、千世とは、前田利家の娘(七女)である。

この二人は秀吉の勧めで夫婦となったのである。

その時期は、慶長二年のころで、秀吉が亡くなる前であった。

その後秀吉がなくなり、五大老五奉行の支配の時期となり、家康と光成の衝突する関ケ原の戦いへと移ってゆく天下大乱の前の時代であった。

この時期、家康は着々と天下取りに歩みを始めていた。そしてそれに対抗するのが、五大老のひとり前田利家であった。

この時、幽斎の知恵を入れて和解という名目で利家と家康の間を取り持ったのが、細川忠興であった。

忠興は家康に味方し恩を売った形になったが、家康はそんなことは意に介さず、その後、前田利家の息子の利長と忠興の離間を図るべく、

両家に家康への忠誠を誓う条件を突きつけた。

加賀前田家の利長には、1.家康宛ての誓紙を出すこと。2.利長の生母芳春院を証人として江戸へ下すこと。3.利長の弟利常に秀忠の

二女を迎えさせること。

細川忠興には、1.謀反しない旨の誓紙をだすこと。2.三男光千代を証人として江戸へ下すこと。3.前田家との縁者振りを絶つこと。

このことが、与一郎忠隆と千世の生涯に思わぬ不幸をもたらすことになったのである。

 

細川家の嫡男・忠隆と前田家の絶世の美女と言われた千世、家柄もいい、相性も良かった二人であったが、天下の大乱の中で、その将来を

乱されるきっかけとなったのが、関ケ原の戦いであった。

忠興の妻は、明智光秀の娘であった玉である。関ケ原の戦いの前段、光成が挙兵して最初にやったのが、大阪近辺にいた諸将の妻子の大阪城

への取り込みであった。このことに、忠興の妻、玉は入場を拒み自害して果てたのである。そのことは光秀側にとっては大きな目論見違いで

あった。

しかし、この時長男の妻として姑と一緒に行動を共にすべきだった千世は、近くの前田家に逃げ込んこんだのである。

父忠興から嫁千世に因果を含めておけと言われたのに、妻を愛していた忠隆はそう言えずに、「脱げてくれ」と言っていたのである。

このことがあり、忠隆は関ヶ原の戦後、忠興から丹後の山奥の河守(こうもり)の城の守備を命じられ、幽閉同然の暮らしを強いられた

のである。

関ヶ原の論功行賞で、細川忠興は九州の豊前一国と豊後の速見、国東の二郡を与えられた。しかし、忠隆には「豊前に足踏み、無用」と

浪人しろと言ってきたのである。細川家の嫡男は、その後の忠興による家康体制への忠誠の犠牲になって、ひとりで生きていかねばなら

なくなったのである。

忠隆のその後は、しばらく京にいた祖父幽斎夫妻の世話になりながら暮らし、猿楽や茶などをたしなみ京の名士となり、茶会にも招かれる

ようになったという。茶会では号を休無と称するようになった。

忠隆は後年父忠興とも交流し、忠興の跡を継いだ三男忠利が熊本細川家を継いだが、忠隆の息子たちに扶持が与えられ、

二男の半衛門家が内膳家を名乗り、幕末まで続いたという。

 

佐藤雅美さんの作品には、戦国乱世を縦横無尽に駆け回った武将というよりも、その周りで陰ながら行動した人々や女性など、あまり名も

知られていない人々の生涯に陽を当てているところがあり好きである。

また、合戦や武将の行動、心の動きにも他の作家とは違う解釈をされることもあり、いろんな方面からの見方を提示され面白いと思っている。

 

しばらく読んでいなかった時代ものであったが、関ケ原の戦いの細部も頭に入り、良い作品を読むことができたと思う。

 

 

 

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八州廻り桑山十兵衛「花輪茂十郎の特技」(佐藤雅美著)

2021-03-03 | 読書・佐藤雅美著

桑山十兵衛の第5作。

 博突打ち三之助の祟り

 足尾銅山異聞・足の字四文銭

 末恐ろしい悪党

 憎まれ口が命取り

 津宮河岸で迎えた初雪

 見えぬ手がかり

 勢至堂宿三人の生き残り

 花輪茂十郎の特技

の8編である。

桑山十兵衛は妻に先立たられ独り身であったが、前回の作品の中で、房州の白旗村の「登勢」と結婚している。

関東取締役出役は、通常十人いて、一人ないし二人が江戸に常駐、裏方の仕事をしていた。

結婚を機会に長い休暇をもらおうとしていたところ、老齢、古株の加賀美徳蔵が、廻村に回ってもいいということで、

加賀美の代役で江戸常駐することになった。

ということで江戸常駐をしていたが、そこにまた事件が起こり十兵衛は公事方勘定奉行の手伝いをすることになった。

その事件の犯人を追いながら、西へ東へ、そのうちに佐原で十兵衛は命を狙われることになる。

誰に狙われたのか?

それを考えていると、前回に会津藩への探索の帰りに狙われた勢至堂峠のことが思い出される。

その時、襲ってきた賊のうち3人に逃げられていた。

その3人に、十兵衛襲撃を頼んだものは?

そこに花輪茂十郎の特技が役立った。

なかなかに、理解が難しい。手が込んでいるのだ。

江戸時代に起きた大名の改廃や南北町奉行所の事件が元ネタになっているとみたが、よく調べている。

そして、現代とまた変わらない男たち、女たちの欲望の渦である。

裏で暗躍している連中も同じである。

十兵衛の活躍にスッとするところもある時代小説である。

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八州廻り桑山十兵衛「江戸からの恋飛脚」(佐藤雅美著)

2021-01-10 | 読書・佐藤雅美著

桑山十兵衛の第4作である。

 

高原新田笹ノ沢の霊風

白旗村への誘い

五つで売られた飯盛女

江戸からの恋飛脚

十と一つの花嫁の涙

隠すより現る

勢至堂宿の馬泥棒

思い立ったが吉日

 

8編の物語だが、関八州を巡回している間に起こった事件から、物語が次々とつながってゆく。

最初は、日光の先、会津西街道、今の鬼怒川温泉の奥の方、高原新田での事件

 

次は、熱海での話。

甲州街道を八王子へ向かった十兵衛は、八王子で事件を起こした悪党者が甲州へ向かったので追いかけたが、

その後駿州へ逃げたので、三島まで追いかけた。しかし、甲州も駿州も八州廻りの管轄外なので、あきらめて

熱海に向かうことにした。熱海には大湯と言って、間歇泉があったという。

ここでの事件が、その後の展開の始まりとなり、独身の八州廻り桑山十兵衛の再婚へつながる。

 

この八州廻りの物語は、桑山十兵衛が関東の各地を廻村と言って、巡回して事件を解決していく物語である。

今回も日光街道を皮切りに、甲州街道から熱海へ、銚子へ向かうのに、成田方面への木下街道や鮮魚街道、

ついでは、大山街道の矢倉沢往還・厚木の宿などとにかく、各地を巡回する。

その間に、作者は各地の名所や名跡、由緒などを盛り込んで案内してくれる。

とにかく地図を手元に見ながら、小説を読まないといられなくなるものである。

 

そして、巡回の間に江戸時代の各地の事件やできごと、十兵衛の生活などが盛り込まれて、話は進展してゆく。

今回は、姫君を連れた五人組の話と十兵衛の再婚の話が織り込んである。

 

特に興味を持ったのが、公事方勘定奉行・石川主水守(もんどのかみ)に指示された、将軍・家斉からの

探索依頼で、会津若松・松平家へ旅の絵師になりすまして出張することであった。

会津若松での捜索後、勢至堂峠を越えて江戸へ帰ろうとするが、後を追ってきた会津藩士と思われるものたちに

襲われ、窮地に一生を得たところなどは、十兵衛の活躍に感心したものである。

 

最後に、姫君を連れた五人組の正体が明かされ、会津松平肥後守の出生の秘密までつながってくるような話であった。

とにかく、いろんな資料を読み込んで物語が組み立てられていると思う。史実との相違はどうなのかとも思われるが、

江戸末期の社会の動きも知れる面白い小説である。

 

 

 

 

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八州廻り桑山十兵衛「劇盗二代目日本左衛門」(佐藤雅美著)

2020-12-31 | 読書・佐藤雅美著

シリーズ3作目である。

今回の作品も8編の捕物帖からなっている。

 

大山鳴動馬一匹

劇盗日本佐衛門の嘲笑い

浪人喬四郎の笑み

彫刻大名の置き土産

女手形の女

虚無僧の後ろ姿

蔑みの視線

斂堂の陰謀

 

3作目、4作目と続けて読んでいたのだが、ブログに下書きしたままになっていた。

「・・・馬一匹」は御用乗馬買付用人に扮して栃木に出向いた十兵衛が、牢抜けした悪党、甚九郎を追っているのを

見抜かれそうになり、仙台の馬喰長助から馬を買うことになった話である。

だがこの馬が、またあとの物語の伏線になっている。

 

この時代、八州廻りができて大分年月が経っているのだが、悪党者の江戸への護送にかかる費用は多大であった。

その負担は、関東取締役出役でも、幕府でもなかった。村方の負担であった。

捕まえた村、事件があった村が負担しなければならなかった。

今回桑山十兵衛には、その改革に取り組むように指示され、「組合村」という構想を考えていた。

そしてその親村と子村の割り当てを現場に詳しい十兵衛に考えるよう指示されたのである。

 

「日本左衛門」の事件に似た事件が、江尻の宿(今の静岡県清水市辺り)の近くであったということで、

関八州にも押し入ってくるかもしれないので注意しろとのお触れがあり、今で言う指名手配書のようなもの

の一件書類を預けられ、東海道藤沢宿のほうに廻村に向かった。

 

ここから、二代目日本左衛門の謎解きが始まる。

十兵衛はこのあと総州(千葉県)の関宿や佐原、それから上州三国街道から越後へと「二代目日本左衛門」を探して各地を追跡することになる。

その中に小金牧の放牧場の話や虚無僧の話、老中水野出羽守の登場など、盛りだくさんの内容で江戸時代の関八州が描かれている。

知らないことばかりで、作者の知識の豊富さと調査力の凄さに感心させられた。

 

  

 

 

 

 

 

 

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