伊集院静さんの本を読んだ。副題は「旅だから出逢えた言葉Ⅲ」である。ある雑誌に連載されていたものの、再編集改題したものという。
2022年2月発行だ。
副題の通り、伊集院さんが旅に出た中で出会った言葉を綴っている。なかに、ゴルフの話や美術、絵画の話が出てくる。
ゴルフは詳しくないが、旅先のフランスやパリ、絵画などの話は、私も好みなので、読んでいて楽しかった。
いくつかの言葉とその土地が興味を引いた。
「路地は都市の顔である。情緒のある路地が、恋愛の場所を提供してくれている。」(スペイン/モンセラット)
私も旅にゆくと、案外路地が好きである。裏通りみたいな所に、その土地の本当の姿があるように思うのである。もう一つ、この章では、奇跡由縁の地、モンセラットという町が出ていた。初めて知ったが、そこの修道院には黒いマリアがあるという。
「ナポリの息子よ いったい なにがきみを ロシアの戦場へおもむかせたのか? (イタリア/フィレンツェ)
この章では、ミラノ駅のところで、イタリア映画「ひまわり」のことがでてくる。私もこの映画は好きである。ソフィア·ローレンも良いし、音楽も良かった。先に上げた言葉は、スターリングラード の攻防のあった場所に立っている記念碑の言葉だという。
「これから私は無になります」(フランス/パリ、イギリス/ロンドン)
イギリスの風景画家、ターナーの最後の言葉だという。作品はロンドンのテイトギャラリーやナショナルギャラリーに展示してある。まだ写真のない時代に、都市の近郊の風景や貴族の大邸宅を写真のごとく描いたという。彼はフランスの画家、クロード・ロランに影響されて画家になったという。ロランの作品のそばに自分の作品を展示されることが願いだったという。
「カレンダーの美しい旅もあるのだ」(宮城/仙台、アメリカ合衆国/ニューヨーク、フランス/ニース、ヴァンス)
仙台にある伊集院の家に届いたカレンダーに、アンリ・マティスの作品を月ごとに鑑賞できるものがあったという。そしてこのカレンダーとともに伊集院の南仏での思い出が語られる。それは、私が前に原田マハの作品で読んだマティスについての小編のようなことだった。ロザリオ礼拝堂にも触れられていた。以前に読んで知っていたことが、また出ていたが、同じところに関心があったことがうれしかった。