シリーズ3作目である。
今回の作品も8編の捕物帖からなっている。
大山鳴動馬一匹
劇盗日本佐衛門の嘲笑い
浪人喬四郎の笑み
彫刻大名の置き土産
女手形の女
虚無僧の後ろ姿
蔑みの視線
斂堂の陰謀
3作目、4作目と続けて読んでいたのだが、ブログに下書きしたままになっていた。
「・・・馬一匹」は御用乗馬買付用人に扮して栃木に出向いた十兵衛が、牢抜けした悪党、甚九郎を追っているのを
見抜かれそうになり、仙台の馬喰長助から馬を買うことになった話である。
だがこの馬が、またあとの物語の伏線になっている。
この時代、八州廻りができて大分年月が経っているのだが、悪党者の江戸への護送にかかる費用は多大であった。
その負担は、関東取締役出役でも、幕府でもなかった。村方の負担であった。
捕まえた村、事件があった村が負担しなければならなかった。
今回桑山十兵衛には、その改革に取り組むように指示され、「組合村」という構想を考えていた。
そしてその親村と子村の割り当てを現場に詳しい十兵衛に考えるよう指示されたのである。
「日本左衛門」の事件に似た事件が、江尻の宿(今の静岡県清水市辺り)の近くであったということで、
関八州にも押し入ってくるかもしれないので注意しろとのお触れがあり、今で言う指名手配書のようなもの
の一件書類を預けられ、東海道藤沢宿のほうに廻村に向かった。
ここから、二代目日本左衛門の謎解きが始まる。
十兵衛はこのあと総州(千葉県)の関宿や佐原、それから上州三国街道から越後へと「二代目日本左衛門」を探して各地を追跡することになる。
その中に小金牧の放牧場の話や虚無僧の話、老中水野出羽守の登場など、盛りだくさんの内容で江戸時代の関八州が描かれている。
知らないことばかりで、作者の知識の豊富さと調査力の凄さに感心させられた。