文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

日本がダメだと喜ぶ朝日新聞が紙面を大幅に割いて「G7では最低」と大はしゃぎしたが、ではどんな国が上位にいるのか、

2024年06月27日 11時04分20秒 | 全般

以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。

女が偉い国
仏、米を叩きのめし、ポルポト派を追っ払い、華夷秩序で嵩に懸かる支那もこっぴどく痛めつける。 
結構な大国を相手に勝ちを制してきたベトナムは大した国だが、それはみな女性のおかげだとあの国を旅して知った。 
その象徴みたいな人が「サイゴン佐竹」の女経営者グェン・ティティ女史だ。 
サイゴン特別市の副市長も兼ねるが、もっと知られた二つ名もある。
「ベトコン女元帥」だ。 
ベトコンは北ベトナムに呼応して生まれた南ベトナム解放民族戦線のこと。 
北との連携を示すためサイゴンからハノイまで1770㌔の戦場を縦断してホーチミンと固い握手をしたのが彼女だった。 
武勲は数えきれない。
米映画『フルメタル・ジヤケット』には米軍を恐怖させた女狙撃手が出てくる。 
「あれは実話だ」とティティは言う。
「戦争はみな女がやって勝った」 
この国は女が強い。
漢との戦では姉妹が軍を指揮した。
「娘子軍」の名はこの地で生まれた。
抗仏運動も13歳の少女ボー・ティ・サオが引っ張り、最後は銃殺された。 
ベトナムの男もそれを認める。
世界でここだけ「女の博物館」があって、救国の女性の歴史を伝える。
しかしティティは戦いが終わると「政治は何も産まない」と経済再建の先頭に立った。 
馬鹿な男たちは共産主義に則った集団農業を作らせたが、彼女の仕切るサイゴン特別市では自由農業をやらせて大成功した。 
囚みに経済再建のモデルは日本。
品質と誠実さを柱に「サイゴン佐竹」以下80の企業を仕切る。
企業幹部はみな女性。 
「男はダメ。政治でもやらせておけばいい」 
世界経済フォーラム(WEF)が世界各国のジェンダーギャップ、つまり女性蔑視度の国別ランキングを発表した。 
判断基準は女性の政界進出度。
日本は女政治家が少ないから146か国中118位だった。 
日本がダメだと喜ぶ朝日新聞が紙面を大幅に割いて「G7では最低」と大はしゃぎしたが、ではどんな国が上位にいるのか、ランキングに信頼度があるのかは触れていない。 
例えば47位のエスワティニだ。
昔のスワジランドのことで、国王が独裁制を敷く。
政党もデモも禁止で逆らえば射殺する。 
女の政界進出も国王が決め、下院70議席中4議席をあてがう。
日本の衆院では10%の議席を女が占めるのにランクは遥か下だ。 
韓国も日本より上だが、あの国は日帝支配まで女に名がなかった。
それで日本風の良子とか芳恵とかが付けられた。
家庭内の身分も低く、今も女は台所で食事をとらされる。 
米国も女は準禁治産者扱いで、財布は夫が握り、妻の自由になるのは20㌦まで。
だから妻からのバレンタインデーの贈り物は16㌦のハート柄のパンツとチョコセットで決まり。 
では女なしでは歴史も編めなかったベトナムはというとそれが1位でなく72位という不当評価だ。 
WEFのランキングは政治という「男の職業」に女がどれほど進出したかを判断基準にしている。 
それこそ視野の狭い男の偏見で、それにWEFも朝日も気づいていない。 
ハノイ名物の朝市でフォーを啜っていたら、買い物帰りの妻を荷台に乗せた男の自転車と別の夫婦者の自転車が目の前でぶつかった。 
自転車は派手に倒れ、妻たちは投げ出され、買い物の品々が散乱する。 
男どもは立ち上がると物も言わずに殴り合いを始めた。
傍らで妻たちが品物を拾い集め、これはお宅のですねとか分別している。 
作業が終わると、妻はそれぞれの亭主に声をかけた。
男たちはそれを始めたときと同じくらいの唐突さで殴り合いをやめ、自転車を起こし、妻を乗せ、それぞれの方向に去っていった。
妻たちが別れ際、笑顔で会釈していた。 
「男はダメだから政治でもやらせておく」というティティの言葉がふと思い出された。


2024/6/26 in Osaka


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