前回は第18話の内容についてあれこれ感想を述べつつ今後の展開について色々書いてみた。そして今回は、第18話より新ED「不規則性エントロピー」になったということで、歌詞内容をあれこれ考えてみようという回でございますよと(ちなみにOPの歌詞と考察は1番がこちらで2番がこちら。旧EDの歌詞と考察はこちら)。
もうクライマックスも近のにわざわざ?と思われるかもしれないが、OPの歌詞が映像と共に相当示唆的であること、そしてOPは変わってないのにEDだけ第18話から変化しているという具合に、その使用のタイミングが(機械的に全体の後半=14話から変えるのとは違い)きちんと意味を持たされていることを踏まえると、ここで歌詞内容を確認・考察してみることにはそれなりの価値があると思う次第である。なお、今回は1番のみを対象とする。
〇誰かの嘘がまた 誰かを傷つけ 誰かの嘘がまた 誰かを護った
この部分で気になるのは、「嘘」が誰かを「傷つけ」・「護った」と真逆のことが並列されていることである。なるほどこれは、一般的に考えれば別に不思議なことではないかもしれない。というのも、人を貶めるための嘘もあれば、人が傷つくことを避けるための嘘もあるからだ。
この点、偽りの昭和58年(以下、「昭和58年」と表記)が現出した理由について、梨花や入江が沙都子の両親殺し(梨花の言葉を借りれば「不幸な事故」)を隠し続けてきたのが沙都子に露見したことが要因の一つではないかと私は考えており、非常に興味深いと感じる。
第18話の考察で述べた「鷹野=沙都子のアナロジー」という推測が正しいなら、鷹野が吐露する「罪の重さに耐えられない」という発言とも完全にリンクする。そうして生じた絶望と不信が、同じく18話で暗示される周囲との微妙な溝と不幸にも噛み合ってしまった時、北条沙都子の心は「壊れてしまった」のではないだろうか。
〇歪んだ景色 やがて螺旋へ 落ちる感覚 痛みに震え 口かみ殺す
これは「昭和58」の世界が生まれた状況を指しているものと思われる。あるいはそこでのループも含んだ歌詞だろうか。
〇笑い合い 悲しみ分け合い 掛け替えのない 特別な場面 絆はずっと ここに在るよね
この部分は梨花と沙都子の関係性であり、沙都子の願いでもあるとストレートに解釈できそうだ。ただ、この後の歌詞も加味すると、梨花と羽入の関係性をも暗示しているのかもしれない。
〇無自覚に 打ち鳴らす鼓動 明確な命の証明 落ちる影(不意なる) 後ろの正面
うーん、ここはよくわからんなあ。「不意なる」とかからすると、予想外の犯人が自分(梨花)を襲うことを意味しているのかしらん?
〇天高く 描かれた 空の色は 蒼くて 無限回 繰り返す まるでそれは 箱庭
これはOPの2番にも類似の表現が出てきたが、要するにループしているのは偽りの昭和58年=「昭和58年」であり、旧ひぐらしの世界とは登場人物こそ同じであるものの、そこからは切り離された特異な空間ということが確認できる。
〇幼き動機の共鳴 結ばれた糸先は 狂気と惨劇の舞台へ 繋がってる
「幼き動機の共鳴」というのが非常に気になる。というのも、「共鳴」である以上は「二人の動機」が存在するはずだからであり、そうすると「昭和58年」における事件及びその世界の生成は、やはり「北条沙都子」単独でなされたものではないと考えるのが自然だろう(まあ沙都子は梨花や羽入の如き特異な力は持っていないはずだから、これはありきたりな予測ではあるが)。
以上のことから、次のような流れを想定するのが最も妥当ではないかと考える。
1:古手梨花=女王感染者が雛見沢から離れることで、羽入にマイナスの影響が生じた
2:羽入へのマイナスの影響で、村はもちろん沙都子の症候群が再発(こう考えると、旧ひぐらしでは症候群を発症しない人物が、「昭和58年」では末期症状を呈しているケースが見られるのは、こういった状況の暗示でもあるのか?)。
3:これにより、羽入は梨花を雛見沢に引き戻そうとする(羽入の動機づけ→OPの「嘲笑った」参照)
4:沙都子の症候群が再発したところで、彼女は自分が両親を殺したことを梨花たちが「隠蔽」していたことを知る→梨花などへの不信を増幅
5:沙都子は梨花を聖ルチーア学園から連れ戻すためにオヤシロ様の力を利用しようと考え、祭具殿に侵入(この時の行動が、「昭和58年」の中で羽入が梨花に伝えたオヤシロソードが実際には欠片しか残っていなかったことに影響か?)
6:羽入も梨花を連れ戻す動機づけを持っており、かつ沙都子がオヤシロソード=宝具的なものを使用したことで「昭和58年」が顕現してしまった。
という具合。また、以上のような推測が概ね正しいとすれば、羽入と沙都子は利害が一致しており、「昭和58年」において二人は共闘していると考えるのが自然だ。具体的には、羽入は梨花に誤情報を教えて世界構造の理解をミスリードするよう動くとともに(例えば、前述の歌詞にある「無限回繰り返す」が語義通りなら、羽入が猫騙し編其の壱で述べた「繰り返せるのはあと5回」という説明が誤りとなるなど、不自然な点が見られる)、「北条沙都子」は梨花を屈服させる具体的な行動、即ち自らが殺人者になるか梨花が予想だにしなかった人物をけしかけて梨花を殺させることで彼女を精神的・肉体的に追い詰めるという役割分担なのではないか。
まあこれも突っ込み所は色々あって、そもそも「幼き」という形容詞が1000年を生きた羽入に適切なのかは率直に疑問だ(かと言って、昭和63年に何かが起きたとした場合、例えば「聖ルチーア学園」というワードで関係しうる詩音なら、昭和59年で双子の魅音が高校1年=15or16才であることがほぼ確定な以上は彼女も昭和63年段階で20才前後にはなっているわけで、これを「幼き」と言えるのかはやはり疑問がある。まあメインキャラクター内だと最年少の梨花ですら昭和63年で16歳ぐらいにはなっているはずなので、このワードを犯人絞り込みに使うことはあまり考えなくてよいのかもしれないが)。
とはいえ、一旦現状の推理には準拠枠となるという観点では、明記しておくべき点だろうと思った次第である。
今回はここまで。次回は2番を取り上げていきたい。
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