南都周遊記 二日目:蘇我入鹿の墓標を前に思うこと

2024-04-13 16:45:21 | 畿内・近畿旅行

 

 

飛鳥寺のすぐ近くには、蘇我入鹿の墓標がある・・・ってむっちゃ簡素やな😅

 

 

 

 

かつて仏教伝来時には蘇我氏と物部氏が対立し、仏教肯定派の蘇我氏側が勝利した(以前も書いたけれども、今でこそ神仏習合というのは当たり前のように感じられるが、神宮寺の建立などを通じて本地垂迹説が成立し、神仏習合の形態がある程度確立するのは、仏教伝来から実に400年の時を要したのである)。その後、蘇我氏側の勢力が拡大して専横を極める中で、中大兄皇子と中臣カタマリもとい鎌足がクーデターを起こした・・・これを「大化の改新」と言う。

 

こんな具合に教科書で習ったわけで、蘇我氏というのはどうも「悪役」的な印象を持ちやすいが、近年では大化の改新も「乙巳の変」と習うようになったそうだ(まあ正確には、入鹿暗殺以降の諸政策も含め「大化の改新」とされていたのだけど)。

 

これについては、以前取り上げた平泉澄などを代表とする戦前的皇国史観からの脱却、木簡など新出史料による『日本書紀』の記述の批判的検討の進展etcが背景にあるわけだが、もう一つは、「改新」という呼称がある価値観を色濃く反映している点も関係しているだろう(前に書いた楠木正成伝説などを思えば、皇国史観の影響は今も残っていることが容易に理解されると思う)。

 

すなわち、この場合の「改新」とは、要するに天皇家がその臣下に権力を掌握されかけた状況を打破し、天皇親政の律令国家体制構築に動き出したということで、天皇家が権力を握るべきという価値観に基づくなら、肯定的に捉えるべき現象となる。しかし、そのような価値観を離れて見るならば、入鹿暗殺はあくまで「クーデターによる権力者の交代」に過ぎないわけで、そこに「善」も「悪」もないのである。これが「改新」から「変」という呼び名の変化の根底にあると言ってよいだろう。

 

なお、こういった表記の変化は日本史に限ったことではない。例えば以前は、フランス革命でロベスピエールらが失脚した出来事をテルミドールの「反動」と呼んでいた。しかし今では、一般的にテルミドールの「クーデター」と言い換えられるようになっている。なるほどマルクス主義史観などであれば、「アンシャンレジーム→ブルジョワ革命→プロレタリアート革命」という道筋を描き、その過程を「進歩」と呼んだわけで、そこからすれば(それがどの程度支持されていたかはさておき)革命を推し進めんとするロベスピエールらの諸政策は「進歩」的であり、その否定は「反動」となるだろう(その一証左として、後に皇帝となったナポレオン=アンシャンレジームへの回帰を促した男による総裁政府から統領政府への政変は、ブリュメール18日の「クーデター」という呼称で一貫している)。

 

しかしそのような価値判断から離れれば、ロベスピエールらの失脚はあくまでモンターニュ派(ジャコバン派の中でも急進派)を中心とした恐怖政治から総裁政府への移行という意味で権力者の変更に過ぎず、その意味で「クーデター」と言い換えるのが相応しい、というわけである。

 

もちろん、そのような言い換え・読み替えを要求する今の基準が無色透明って考えるのも危ないけどね。例えば、生類憐みの令やそれを出した徳川綱吉が昨今では再評価されたりしてるけど、その精神性はともかく、それが刑罰化されたことで多くの人間が迷惑を被ったことは事実なわけで。

 

それを遠い時代の人間が、今の動物愛護的な価値観で「動物を大事にして素晴らしい!」とか評価するのは、いかにも夢想家の理想主義者がやりそうなことだわな、と私は思ったりする(もちろん、「武断政治から文治政治への移行を促進した」といった歴史的意義などはきちんと理解しておく必要があるが)。

 

 

 

 

とか何とか思いつつ、飛鳥寺の境内へ戻ってまいりましたよと。

 

 

 

 

せっかくだし、俺はこの鐘を打ってみるぜ!と台に上ってみれば、「連打禁止」との張り紙がw

 

これを見て、自由の女神像をオラオラした某死刑囚を思い出してしまったぜ(・∀・)

 

 

 

 

 

 

とりあえず濡れ衣を着せつつ全力逃走のスタイル(・∀・)

 

 

 

 

ということで(何がだ)、古い仏像を実見したり、由緒のアピールを見たりと色々楽しむことができたぜ。

 

ほな、次なる目的地へ行きましょか。


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