嘘つきみーくん6~見つけたのは不寛容~

2009-05-20 18:12:50 | 本関係
(はじめに)
この記事は、元々「君が望む永遠」のレビュー(+主人公というものへの先入観)に組み込まれるものとして書いた。しかし、ちょうどはるひ野へ行く機会があったので、「はるひ野~栗平~永山」及び「宇宙人」と連続させることでまた別の意味を持たせようと構想していたが、それはPCの故障という思わぬトラブルによって頓挫してしまっていた。状況が整った今、その流れに戻すこととしたい。なお、上でリンクを貼った過去ログを全て読む必要はないが、少なくとも、先の「宇宙人」の記事に関しては、「ビアンカかフローラか、それとも…」の話が選択(不)可能性の記事とセットでなければ意味が半減するのと同じ関係にあるので、ぜひ一読してもらえればと思う。


①第六巻を読んだ状況など
かつて「怒涛のゲーム三昧」でも触れたが、4巻の主人公の行動があまりに間抜けだったのに憤慨してすぐに3・4巻を売り払い、しばらく見向きもしない時期があった。多少怒りが収まった頃、5巻を古本で買い、そこに描かれた凄絶さと滑稽さの入り混じった箱庭の狂気(極限状況での振舞い)を見て、再評価することとなった。そんな経緯があって読むことになった第六巻だが、ここでその「紹介」や演出の評価、構造解析をするつもりはない(ゆえに、例えば湯女や恋日の話には全く触れていない)。あくまでいくつかの印象に残った部分(もっと言えばキャラクター)をピックアップし、感想を述べていくことにしたい。


②序盤の二人のやり取り
3巻において、身代わりがいたとはいえ、真犯人への罰はどうなったのか?という疑問が残ったが、6巻ではその疑問に対する強烈なカウンターが返ってきた。それはすなわち罪悪感により壊れた心…これで十分か?これがお前の望んだ罰・償いか?そう突きつけられた気がした。

そうこれでいい。むしろこうでなくてはいけない。誰彼となく罪と罰を求める精神、その不寛容さ・驕慢さを叩き潰すがいい。「殴られぬ」作品などしょせんは受け流されるだけで終わりなのだ。俺を殺せ!


③マユを殺したい
これは、この状況が認識できない女を黙らせることで自分の生存の可能性を高めるのが目的ではない。そもそも、その前提には「もし俺がこの場にいたら」という仮定が存在するが、「みーくん」ではない俺にマユはそもそも興味を示さず人形のように静かにしているだろうし、あるいは俺がそのような名称の持つ重みを知っている立場(すなわち*のような境遇を経験すること)にいれば、そもそも今のような考え方をする保障が全くないからだ(君が望む永遠の「ヘタレ」の話にも繋がる)。

まあそれは細かい話として、上記のような、ある意味プラクティカルな理由でマユを殺したいのではない。単純に、このような極限状況が認識できないこの女の存在に我慢がならないのだ。あ~この女の首絞めて殺してえ。そもそもこの女が世界に存在していることが許せねえ…俺の言う「殺したい」とはそういうことである。


④犯人を見て…全能感、パラノイア、理性的判断but俗物etc,etc
この犯人を見て読者は池田小や秋葉原の事件を想起するだろう。しかし俺自身は、それと同時に自らの「滅びの希求」、「完全なる消失」、「オブジェ」、「狂気への傾倒」などを思い出していた。ゆえに、こいつに全く同情しないのは当然としても、笑う資格はない。

※てゆーかそんなにイヤなら死ねよ。まあ自分が悪いと思ってないからそんな風にはならねーか。

※他者から押し付けられる筋合いがないと言うのなら、自分が他者にそうする資格もまたない。


⑤犯人についてⅡ…祭祭祭祭祭祭
彼は狂気が退屈な日常を打ち破ってくれる救世主、あるいは高揚をもたらすものだと思っている。そしてそれ自体が、むしろ「普通」に縛られた幻想である。とはいえ彼はマユの狂気(異質さ)と自分の思っているものが異質だと気づく程度の観察力(誤解を恐れずに言えば聡明さ)は持っており、それゆえ「主犯」にならなかったということだろう。

狂気と正常が二項対立的に存在し、正常なるものの欺瞞に倦んで狂気を求めた身として、こいつのこともまた笑うことは決してできない。


⑥終りに
以上のことから再認識したのは、自らの不寛容さであった。これについては、「嫌われ松子の一生」への反応なども絡めていずれ書いてみたい。また、今回は内容の紹介や分析より感想の部分を前面に出したが、(あるとすればだが)次回は別の視点で読みなおし、論じることができればと思う。

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