「音読は重要だ」といわれれば、私も当然そうだろうな、と考えています。しかし、SLAの世界ではあまり音読について触れているものはありません。それはある意味では当然のことで、第2言語として言語を学ぶ時、多くの場合周りにはその言語の話者がおり、日常の生活である程度接する機会をもっていること(つまりアウトプットまで強いられること)が前提となることが想定され、あえて音読を授業で課すよりも、タスク中心やフォーカス・オン・フォームなどの指導法が適切である場合が多いでしょう。
しかし、われわれが英語を学ぶときには、実際に音声に接する機会はかなり限られているので、リスニングだけでなく、音読によってもインテイクの機会を設ける必要があるといえます(定義にもよりますが、単純な音読活動をアウトプットとはよびません。一応。この辺の議論については以前取り上げましたのでそちらも参照されたい)。よって日本では音読の効果について、多くの文献(たとえば門田(2007)、門田(2012)、鈴木・門田(2012))が手に入ります。音読の有用性についてはこれらの文献を読めばよいでしょう。
しかし、教師の中には音読について懐疑的な人もいるようです。ある人がこのようなことを言っていました。「読む流暢さと英文の内容理解度には相関関係がない、というデータがある。だから音読をしたからといって英語の理解が進むわけではない。」まず第一に、私はその研究の出所を知らないのであまり断定的にはいえません。しかし、これは音読の効果にたいする反論にはならないと思います。なぜなら、音読活動はそもそも内容理解を促すための活動ではないからです。音読活動はむしろ、内容理解がある程度できた段階で課す作業であると思います。もちろん音読することでさらに内容理解が深まることは事実ですが、最初から内容理解をさせるために音読をするわけではないことは知っておくべきだと思います。よって内容を全く理解していない文を読むことに意味はないと思います。それはたとえば、内容はまったくわからない子に、何度も繰り返し音読させて流暢に発音できるようにさせて「読めるようになったから内容もわかるでしょ。」と言っているようなものです。
つまり音読は、意味を意識させる工夫をしなければ、ただ単に音を表出するだけに終わってしまう恐れがあるともいえます。そこで生徒に音読をさせるときには、いくつか気をつけておかなければならないことがあると思います。この点について詳しくは鈴木・門田(2012;p.22)が参考になります。その中でも、私が特に重要だと思うのは以下の点です。
①音読は(程度の差こそあれ)内容理解後に行うこと。
②意味(や場面、状況)を意識しながら行うこと。
③多様な方法で繰り返し行うこと。
④まずは全体で発音を確認してから、ペアなどで行うこと。
③については、②を意識しながら行うことが求められます。音読の方法としては次のようなものがあります。
1.リッスンアンドリピート:教師やCDの後にリピートする
2.パラレルリーディング:教師やCDの音声を聴くと同時に、スクリプトを見ながらリピートする
3.シャドーイング:2をスクリプトなしで行う
4.リードアンドルックアップ:生徒に黙読する時間を与え、その後スクリプトから目を離しておぼえた文を言う
5.穴埋め音読:(主にペアで)穴埋め式のワークシートを用いて音読する
6.通訳音読:(主にペアで)パートナーに日本語を読んでもらい、英語に直す
これ以外にもさまざまな方法があり、枚挙にいとまがありません。詳しくは鈴木・門田(2012)が参考になると思います。また、主にシャドーイングを中心にして、その効果を詳しく検証している門田(2012)も参考になります。特に音読とシャドーイングの違いについては興味深いですね。
また、音読といえば初級や中級の学習者だけに必要だと思われがちですが、上級学習者でも日常で使う機会がない人にとっては、音読はかなり有効な学習方法だと思います。私はいつもネイティブと話していて「これは使えるな」と思った表現は、そのまま頂戴して頭のなかで、あるいは家に帰ってからひとりごとのように何度も呟いて覚えて使うようにしています(決してあやしい者ではありません)。かなり英語を使う機会には恵まれていますが、それでも何度も口ならししておかないと新しい表現はパッとは出てきません。先日はこんな表現を頂戴しました。
(1)She was this close to winning a gold medal.(彼女あとほんの少しで金メダルとれたのにね。)
これは使える表現です。応用してI was this close to~でもよく使われ、「もう少しで~だったのに!」のような感じで使われます。使える表現はパクってそのまま使ってしまいましょう。
【参考文献】
門田修平.(2007).『シャドーイングと音読の科学』.コスモピア.
門田修平.(2012).『シャドーイング・音読と英語習得の科学』.コスモピア.
鈴木寿一・門田修平.(2012).『英語音読指導ハンドブック』.大修館書店.
しかし、われわれが英語を学ぶときには、実際に音声に接する機会はかなり限られているので、リスニングだけでなく、音読によってもインテイクの機会を設ける必要があるといえます(定義にもよりますが、単純な音読活動をアウトプットとはよびません。一応。この辺の議論については以前取り上げましたのでそちらも参照されたい)。よって日本では音読の効果について、多くの文献(たとえば門田(2007)、門田(2012)、鈴木・門田(2012))が手に入ります。音読の有用性についてはこれらの文献を読めばよいでしょう。
しかし、教師の中には音読について懐疑的な人もいるようです。ある人がこのようなことを言っていました。「読む流暢さと英文の内容理解度には相関関係がない、というデータがある。だから音読をしたからといって英語の理解が進むわけではない。」まず第一に、私はその研究の出所を知らないのであまり断定的にはいえません。しかし、これは音読の効果にたいする反論にはならないと思います。なぜなら、音読活動はそもそも内容理解を促すための活動ではないからです。音読活動はむしろ、内容理解がある程度できた段階で課す作業であると思います。もちろん音読することでさらに内容理解が深まることは事実ですが、最初から内容理解をさせるために音読をするわけではないことは知っておくべきだと思います。よって内容を全く理解していない文を読むことに意味はないと思います。それはたとえば、内容はまったくわからない子に、何度も繰り返し音読させて流暢に発音できるようにさせて「読めるようになったから内容もわかるでしょ。」と言っているようなものです。
つまり音読は、意味を意識させる工夫をしなければ、ただ単に音を表出するだけに終わってしまう恐れがあるともいえます。そこで生徒に音読をさせるときには、いくつか気をつけておかなければならないことがあると思います。この点について詳しくは鈴木・門田(2012;p.22)が参考になります。その中でも、私が特に重要だと思うのは以下の点です。
①音読は(程度の差こそあれ)内容理解後に行うこと。
②意味(や場面、状況)を意識しながら行うこと。
③多様な方法で繰り返し行うこと。
④まずは全体で発音を確認してから、ペアなどで行うこと。
③については、②を意識しながら行うことが求められます。音読の方法としては次のようなものがあります。
1.リッスンアンドリピート:教師やCDの後にリピートする
2.パラレルリーディング:教師やCDの音声を聴くと同時に、スクリプトを見ながらリピートする
3.シャドーイング:2をスクリプトなしで行う
4.リードアンドルックアップ:生徒に黙読する時間を与え、その後スクリプトから目を離しておぼえた文を言う
5.穴埋め音読:(主にペアで)穴埋め式のワークシートを用いて音読する
6.通訳音読:(主にペアで)パートナーに日本語を読んでもらい、英語に直す
これ以外にもさまざまな方法があり、枚挙にいとまがありません。詳しくは鈴木・門田(2012)が参考になると思います。また、主にシャドーイングを中心にして、その効果を詳しく検証している門田(2012)も参考になります。特に音読とシャドーイングの違いについては興味深いですね。
また、音読といえば初級や中級の学習者だけに必要だと思われがちですが、上級学習者でも日常で使う機会がない人にとっては、音読はかなり有効な学習方法だと思います。私はいつもネイティブと話していて「これは使えるな」と思った表現は、そのまま頂戴して頭のなかで、あるいは家に帰ってからひとりごとのように何度も呟いて覚えて使うようにしています(決してあやしい者ではありません)。かなり英語を使う機会には恵まれていますが、それでも何度も口ならししておかないと新しい表現はパッとは出てきません。先日はこんな表現を頂戴しました。
(1)She was this close to winning a gold medal.(彼女あとほんの少しで金メダルとれたのにね。)
これは使える表現です。応用してI was this close to~でもよく使われ、「もう少しで~だったのに!」のような感じで使われます。使える表現はパクってそのまま使ってしまいましょう。
【参考文献】
門田修平.(2007).『シャドーイングと音読の科学』.コスモピア.
門田修平.(2012).『シャドーイング・音読と英語習得の科学』.コスモピア.
鈴木寿一・門田修平.(2012).『英語音読指導ハンドブック』.大修館書店.
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