英語教師のひとりごつ

英語教育について考える。時々ラーメンについて語ることもある。

rentという言葉の不思議

2015-03-27 07:17:00 | 日記
日本語の発想からすると、「借りる」と「貸す」は真逆の関係にあるので、同じ語で表すわけがないと思うでしょう。もちろん英語でもborrowとlendでそれぞれ「借りる」と「貸す」を表します。しかし、rentという語は少し変わっています。なぜなら「金を払って借りる」という意味にも「金を貰って貸す」という意味にもなるからです。つまりrentの意味は「金のやりとりをして貸し借りする」というわけです。どちらの意味になるかは文脈次第ですが、ネイティブスピーカーによれば次の(1)では「借りる」の意味で解釈されます。

(1)I rented a DVD.

これはおそらくDVDは借りるものだという常識的な解釈が優先されるからでしょう。rentはもちろん次の(2)のようにどこから借りたのかを示すこともできます。

(2)I rented a DVD from GEO.

一方、「貸す」という意味に解釈されるためには特別な形式が必要です。例えば話者がアパートのオーナーであれば次のように言うことが可能です。

(3)I rented a room to Mike.
(4)I rented him a room.

(3)ではto Mike「マイクに」とあるので、この場合「貸す」という解釈しかありえません。つまりtoがあれば「貸す」という解釈が可能になります。また、(4)のように表現しても「貸す」という解釈しかありません。ちなみに、「貸す」という意味をはっきりさせるためにoutをつけて以下のように表現することもあります。

(4)I rented out a car.

outには外に出るというイメージがあるので、「自分から出ていく→貸す」という解釈しかとりません。

それにしても、rentがなぜ真逆ともいえる2つの意味を持つのか、疑問は払拭できません。

卒業アルバムを英語でいうと?

2015-03-08 08:17:00 | 日記
卒業シーズンです。卒業生の新しい人生の門出となるこの季節は、教師にとっても新たな挑戦の始まりの季節になるわけです。私は去年まさに学校がかわり、新たな挑戦の1年でした。夢中に、がむしゃらに挑戦して過ぎた1年でした。

さて、「卒業アルバム」を英語で何というのか、と問われれば「yearbook」が一番近いのですが、これは必ずしも適切ではありません。英語でyearbookというと、在校生も含めて全員の1年間の記録が載った本、という感じで、日本の卒業アルバムとは似て非なるものだからです。日本独自の卒業アルバムに正式な英語の名称があるわけではないので、私は生徒に「graduation album」でもいいんじゃないか、と話しています。同じものは存在しないのです。ちなみにイギリス出身のALTの話では、イギリスにはそもそもyearbookや卒業アルバム的なものは存在しないということです。アメリカではyearbookは一般的なようです。

そういえばちょっと違った例ですが、最近は海外のcomic bookに対して、日本のmangaという語が生まれ、英語として定着してきました。日本で書かれたものはmangaといえば通じるようになってきています。つまりmangaとcomic bookは別物なのです。

「行ってきます」や「ただいま」、「いただきます」や「ごちそうさま」なども英語では決まった表現はありません。例えば「行ってきます」はI'm leaving.「ただいま」はI'm home.と書いてある文献もありますが、日本語のように決まった表現ではないので、これらも正確には間違いです。出かける時には夫婦ならLove you.というかもしれないし、See you later.かもしれませんし、Bye.かもしれません。相手との関係にもよるので一概にはいえないのが英語の特徴です。

また、以前取り上げましたが、「卒業する」という表現は、日本やアメリカでは高校にも使えます。

(1)I graduated from Hokkaido High School.

しかし、イギリスでは高校には卒業という表現は用いられません。大学になってはじめて卒業という語が使われます。よって次の(2)はイギリスでも使うことができます。

(2)I graduated from Hokkaido Collage in 2001.

もうひとつ、先日生徒に話したのですが、「思いやり」という日本語について。なかなか英語にしにくいというと、不思議な感じがします。辞書ではconsiderationやkindness、thoughtfulness、compassion、sympathy、なぜかpolitenessなんかも出てきたりします。英語では様々な語が
日本語でいう「思いやり」の中に含まれているようです。では「思いやる」と動詞になると…なんて考えてみると、これも難しいと思います。「思いやりがある」ならまだなんとかなりそうですが。

逆に、英語では一般的でも日本語ではあまり言わないこともあります。例えば「Have a nice day.」は別れの挨拶として用いられますが、日本語で「よい1日を」とは普通言いませんし、「Good luck.」なんかも日本語ではあまり言わないので訳すのが難しい表現です。

言語を学ぶことは文化を学ぶことと言ってもよいと思います。言語は文化を反映しているからです。「この場面で日本語ならこう言うんだけど、この日本語って英語でなんて言えばいいんだろう?」という段階から、「この場面で英語話者はなんと表現するんだろう?」という段階へ進むことは、文化を理解する上で非常に大切な視点だと思います。意外にも、中高6年間英語を学んできて、このことに気づいている生徒は少ないのです。「自分らしさ」の1部を形成している日本語的な思考法からの脱却は容易ではないのだと気づかされます。あるいは私の指導力不足もあるのでしょう。