日本は海に囲まれているので,国境というものを感じることがあまりない。海上や空中を通って,いつの間にか日本の領土に入っている。陸続きの国だと,国境が実感できる。
昨日,国境のことに触れて,思い出したことを2件書記す。いずれも,1982年3月に,カミさんが3人の子供を連れて,パラグアイに来た時の話だ。
1)わたしの家族が日本からくると聞いて,日系の移住者の方々から,あれこれと買ってきて欲しいものの依頼があった。移住者の方々は”made in Japan”へ,強いあこがれを持っている。カミさんにそれを伝え,彼女は「お世話になっている方々だから」と,注文の品を全部整えた。
わたしは,休暇をとってリマまで家族を迎えに行き,パラグアイへの途次にリオデジャネイロに立ち寄った,空港の税関でカミさんの荷物は見事にひっかかり,多額の関税をとられそうになった。パラグアイの友人への贈り物だと抗弁これ務めたが認められず,結局ボンドにして税関にあずけ,翌日受け取って次の便に乗った。この便は国内便で,降りたところはブラジル国内。何のお咎めもなく荷物を受け取った。
イグアスの滝を見物して,チャーターした小型バスでパラグアイに向かおうとしたところ,余りの荷物の多さに,国境「友情の橋」の税関でひっかかりそうだと,運転手さんがビビってしまった。急遽大型バスに乗り換え,底のトランクに荷物を突っ込み,税関の目を逃れて無事パラグアイに入国した。運転手さんの「国境を越えました。」の声に,一同歓声をあげ,拍手した。
2)わたしの任地のエンカルナシオンは,パラナ川をはさんで,ポサダスというアルゼンチン領の街と相対している。家族の滞在中に,日本から家族に同行してきた知人の女性も一緒に,ポサダスと近郊の遺跡を見物しようと,フェリーでアルゼンチン領にわたった。
いつもだと大した検査もなしに税関を通るのだが,この日は日本人のも含めて,ほかの車はすいすい通っているのに,私の車だけが3,4人の係員に取り囲まれ,車内,トランクはもとより,ボンネットを開けさせられ,車の下まで検査された。オーディオ機器に神経をとがらせ,いろいろ質問された。
ようやく放免され,税関を出るとき,5,6人の武装兵士がこちらを見ているのに気付いた。
翌々日のテレビが,アルゼンチン軍が,英領フォークランド(マルビーナス)島に侵攻して占領したことを報じた。
同行した女性は海外旅行が好きで,旅券にはイギリスをはじめ,ヨーロッパ諸国への渡航記録が記載されていて,恐らくスパイの疑いをもたれたのだろう。
家族にとっても,貴重な記憶に残るできごとだった。
イグアス川がパラナ川に合流する地点。ブラジル(手前),アルゼンチン(左),パラグアイ(右)の3国が境を接している。2002年撮影。
少なく海外旅行も皆無な小生にとり驚かされる事ばかりです。日本への渡航者は安全・安心ですね。