デレク・ベイリー氏、死去

　イギリスのギタリスト、デレク・ベイリー（Derek Bailey）氏（75）が、12月24日に死去したと伝えられる。
　（写真は70年代後半のベイリー氏）

　フリー・ミュージック、インプロビゼイション、即興演奏など、彼の演奏はさまざまな言葉で定義されてきた。それだけ彼の演奏が従来の定義ではとらえきれない自在さを放っていたためだ。

　ベイリー氏がエヴァン・パーカーやトニー・オックスレイなどと1970年にした自主レーベール、インカス（INCUS）から発表した『デレク・ベイリー・ソロ』やハン・ベニンクとのデュオなどを聴き、真に自由奔放な音楽に圧倒された。この世にこれほど奥深い音楽を創り上げられる人物の存在を知ることができただけでもうれしかった。

　これをきっかけにジャンルにこだわることなく、さまざまな音楽を聴くことができるようになった。解放の音楽だと痛感させられた。

　日本とヨーロッパで、数回、ベイリー氏に会ったことがある。実に物静かな人物だった。普段のその静けさが彼の音楽の奥深さを創り出しているような印象を受けた。

　ベイリー氏を初めて日本に招いた間章氏の死を悼んだ『AIDA』、セロ奏者トリスタン・ホンシンガーを始めとする数々のインプロバイザーとの共演した作品はまぎれもなく20世紀の音楽、同時代に生きて聴けたことは幸せだった。