木村さん(仮称)は、肺がんでいろいろな合併症もあり、トイレに行く動作だけでも息苦しさが強くなってきました。
その息苦しさの程度は、トイレを終えてベッドに戻るときには、汗びっちょりになって、顔色も悪く、息はあえぐような感じで、ぐったりされてしまうほどです。
そんなに苦しいなら、ベッドで尿器を使ってやってもらうと身体的には幾分か楽になるのですが、人というのはこうしたいと思う気持ちと身体的なしんどさに関しては必ずしも一致しないことが多々あります。
明らかに、誰が見てもしんどそうだ、と感じる時期が、がん患者さんにやってくる時があります。
そんな時、ご家族はどうしても、患者さんのそばで付き添って、見守られる時間が長くなります。
「病院にいて、患者さんを見ていると自分もしんどくなってしまう。
だからといって、家でちょっと休もうと思っても、患者さんが今、どうなっているのかと思うと気が気でない。」
という気持ちを持つご家族が多くいらっしゃいます。
患者さんがしんどいのだから、家族が付き添うのは当たり前。
医療者が、そんな考え方を持つのはよくないと思います。
当たり前。
その医療者の感覚には、医療者が抱く「当たり前」の思いがあります。
実際には、医療者の当たり前は目の前のご家族には当てはまらないことがあります。
どのようなご家族であっても、病院に来て、患者さんを見守ってくれたり、声をかけてくださったりすることは、「ご苦労様」というに値することだと思っています。
患者さんがどんな状態であろうと、ご家族にも、ご家族の生活があります。
ご家族の「できるだけ」普通の生活なしにして、患者さんを気遣ったり、見守るという思いやりは、ほんの少しであっても、心の余裕や患者さんへの思いなくしては無理なことではないかと思います。
前置きが長くなりましたが。
患者さんの付き添いが長くなっているご家族は、看護師としては「気にかけなきゃ」いえ、「気にかけたい」家族さんのランク(???)の最上位の一つであります。
私は常々、ご家族には、患者さんがどんな状態であろうと、できるだけ、ご家族が普通の生活が営めることは、とても大切なことだと伝えています。
患者さんの生活のすべてに自分の生活を合わせてしまう。
それは一部のご家族には可能なことであっても、ご家族もご家族なりに社会的な生活をしている限りは、患者さんに自分の生活のすべてを注ぐということは非現実的だと思っています。
だから、
付き添い続けているご家族がいると、とても気になる。
患者さんのためにある「家族」かもしれなけど、「家族」である「あなた」の生活、そして、「あなた」は大丈夫ですか?と。
そこんとこ、気にかけるのが看護師の役割!!だと思っています。
さてはて。
看護師としてのポンは、そう思っているのですが、気にかけ方は、職種によっても違うみたいです。
*病院では、医師、看護師以外にもたくさんの職種が患者さんのお手伝いをしています。
次回は、ちょっと、そのことについて書いてみたいと思います。
