欠点を愛する

2006-03-23 02:42:08 | Notebook
    
わたしはその若者の、欠点を愛している。そう自覚したときは信じられなかった。このわたしが、ひとの欠点を気に入るなんて。

ときどき受け答えが的はずれで、とんちんかん。言っていることがときに、すこしずつずれている。かなり年上のわたしにたいして、おやと思うような言葉づかいをすることもある。
表向きは穏やかな人格だが、波に揺られるボートのように不安定で、気が短かったり長かったり、見かけよりは気が強かったり、脆かったり。きっと怒るべきでない相手に腹を立てたりするのだろう。傷つけてはいけないひとを傷つけるのだろう。意味もなく、しょんぼり死にたい気持ちにも、なるのだろう。

自信のない未熟な若者はときに、まっすぐで誠実であるほど、自分の能力を実際以上に見積もっているみたいな頑張り方をする。だからもちろん失敗をする。でも誠実でいい失敗のしかただ、とひそかにわたしは思っている。
公の発言と私の発言がいつも混ざっていて、はらはらさせられることもある。わたしが上司だったら、たまったものではないだろう。

しかし目をこらすと、その欠点のかずかずの、その先に、豊かな運命がみえてくる。長所より短所のほうに将来性があるなんて、奇妙な話だが、わたしがその若者から感じているものが、まさにそんなふうなものなのだ。いや欠点というものが、そもそもそういうものなのかもしれない。
青あざ、赤あざ、つくりながら、いろんな涙をながしながら、すごく大きな綺麗な花が、のびのびと空いっぱいに広がるようすが、みえてくる。

おだやかな日射しを浴びて、欠点で育てられた花が、ふわふわ笑っている姿がうかぶ。
日に灼けた写真みたいに、光をいっぱいにふくんで、未来から笑いかけてくれる。