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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

西條 奈加著「御師(おんし) 弥五郎―お伊勢参り道中記」

2011-02-12 | さ行
弥五郎はお伊勢参りの案内役、「御師」の手代見習今で云うなら伊勢神宮の神官を兼ねたツアーコンダクター見習い3年目。
そのくせ「御師は盗人」といってはばからない武家で過ごしたこともある変わり者。
ある日、弥五郎は日本橋の材木商・巽屋清兵衛が賊に襲われているところを助ける。
それが縁で、何か訳ありの清兵衛の用心棒を兼ねてお伊勢参りに付き合う羽目に。
旅の道連れは蛙屋徳右門夫婦や妙に婀娜っぽいお妾さん、友人の口やかましい下っ引きの亀太など、たいそう賑やかな面々。
道中の名物を食べつつ景色もまた格別。だが、行く先々でなぜか清兵衛を襲う侍が次々と表れたり、一行の中にも何やら秘密を抱えた輩も居て、そして13年ぶりに伊勢の実家(内宮に仕える5大神官である八嶋太夫)に帰る弥五郎自身にも訪れたくない理由があるのだが。・・・
巽屋が抱える裏事情の謎を中心に、御師という珍しい職業の事や伊勢信仰・伊勢参りの様子や「おかげまいりの群集」などを扱っていて勉強になるのだが残念ながらリアル感がないのが不満、あの「エェじゃないか、えぇじゃないか」の喧騒が浮かんでこない。
人情味あふれるストーリーで軽快な文章も読みやすくよく調べられていると思うのだが・・・。

2010年11月祥伝社刊
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笹本 稜平著「白日夢 素行捜査官2.」

2011-02-02 | さ行
素行捜査官シリーズ続編第2作。
警務部人事一課監察係の本郷岳志と北本一弘は、山形へ元刑事坂辻の遺骨を引き取りに向かう。
自殺した坂辻は元潜入捜査員で、その後離れた場所で放置された坂辻の車のトランクから多量の覚醒剤が見つかった。
単独犯なのか? 坂辻の背後関係を調査した本郷たちは、警察組織のなかに坂辻元刑事を追いつめた黒い人脈が存在する痕跡をみつける。裏切り者は誰だったのか。
「警察組織の腐りきった体質は外からじゃ治せない。なかにいるおれたちじゃないとできない仕事だ。」と
上司の主席監察官入江透警視正と私立探偵佐緒里の協力も得て本当の悪い奴等を追い詰める。
二転三転する真相追求。
事のあら筋書きは最初に明かされていて用意に想像できるのだがそれでもなお読者を引き込むのは警察組織の人間関係や裏事情が絡んだ組織の闇を暴露しお仕置きをする展開が面白いのだろう。
第三作目もこのメンバーでの活躍と岳志と佐緒里の恋の行方を読んでみたい。
『ただ飯食って長生きして、世の中に何も残さずに死んでいくだけなら、最初から生まれてこなかったほうがいいんじゃないかと思うんです。せっかくこの世に生を受けた。
その人生にささやかでも意味が与えられるなら、それに命を懸けたって惜しくはない・・・。』(292P)
『自分の気持に忠実になって損得を忘れてできるようなことを。大事なのは後悔しない人生を選択することなのよ』(364P)

2010年10月光文社刊
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雫井脩介著『つばさものがたり』

2010-12-10 | さ行
主人公、君川小麦は26歳のパティシエール。
東京での修業を終え、故郷の北伊豆で両親の夢だったケーキショップを開くため帰ってきます。
幼いころから小麦は君川家の希望の星でした。
兄の代二郎とその妻・道恵の間にはには叶夢(かなむ)という6歳の息子がいますがこの子は少し変っていて、少し引っ込み思案な性格で、レイモンドという天使の友達がいるらしいのです。
ケーキショップ開店のため小麦が見つけた店舗物件に対し、叶夢は「ここは、はやらないよとレイがいってるよ」と口にし、小麦たちを戸惑わせますが、結果は叶夢の言うとおり、店の経営は立ちゆかなくなってしまいます。
同時に小麦は、家族に秘密にしている治癒したはずの乳がんが再発という大きな困難を抱えていました。
それでも小麦は抗癌治療を受けながら、そして君川家の人々の協力と励ましを受け様々な困難を乗り越えながら、ケーキショップの再起を目指します。
題名のつばさは天使の背中に生えている羽のこと、レイモンドは天使と妖精のハーフで普通の天使よりも羽が小さい為よく飛べないらしい。・・・叶夢だけに見えるらしい。このへんはファンタジーぽい感じの小説です。
著者がこの本に込めた「夢に頑張っている人への応援小説です」というように、読んで自分も頑張ろうという気になるしラストはやはり泣かされました。
読後感が明るく爽やかな気持ちになれ一気読み出来ました。
2010年8月 小学館刊
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白石かおる 著「僕と『彼女』の首なし死体」

2010-12-09 | さ行
2009年 第29回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作
主人公は天下の総合商社四菱入社二年目の白石かおる(著者と同名)。
冬の朝生首を渋谷ハチ公前に置きに行く猟奇的シーンから話は始まります。
やがて彼の借りている家には胴体部分が冷凍庫に保存されている明かされます。
どうして何故、誰が殺ろしたのか?といった疑問興味がミステリーとなって読み進めますが・・・
地震発生のシーンがあり停電で混乱する大都会東京の様子が出てきて停電で自分の留守部屋の冷蔵庫の中味が溶け出す心配になります。
彼の性格は一見、軟弱でぼんやりとしているのが、いざとなると、抜群の仕事センスと行動力を発揮する。
それでいて、それに奢ることも、それを誇ることもせず、頭脳明晰、運動神経も抜群で常に漠然と世間を眺めて達観しています。薄情のようでいて優しく、人を見捨てることが出来ない性格です。
会社の上司には20代後半の女性で容姿端麗、仕事もできるが主人公には厳しいの秘書室長や同じ大学から入社した周囲との摩擦を恐れない白石をやんわりとたしなめる気のいい同僚がいたり、会社内での複雑な人間関係もあきらかになります。
しかし、センセーショナルなのは冒頭部分のみで、あとはだらだらと緊張感もなく物語が進み真相が明かになり終了。
ちょっと尻すぼみの期待外れの読後感です。

2009年5月 角川書店刊
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杉井 光著「終わる世界のアルバム 」

2010-12-04 | さ行
黒点病と名付けられた病気が世界中に蔓延し、人が突然消えてしまい、そうすると消えた人のことが生きている人の記憶からも失われてしまう様になった。
そしてバタバタと、なんの前触れもなく突然消えてしまう人が増え家族さえ誰も覚えていない。人間が消滅し、その痕跡も、周囲の人々の記憶からも消え去ってしまう現象が頻発している世界の終末ストリー。
そんな世界で主人公のぼくこと15歳のマコは例外的に消えた人間の記憶を保持することができた。
デジカメだと消えた人間と同時に写された人物も消えてしまうがと銀塩フィルムカメラだと消えない。
卒業写真の為にクラスメイトを撮り続けるマコ。
写真に「死者の記憶を刻んでしまうこと」そんな写真に名前を書いてアルバムのファィルに押し込む。
いつの間にかクラスメイトが減っていき、葬式や遺書は存在せず、ビートルズが二人しかいないのが当たり前だった世界。
マコは父母も消えてしまい、隣家のクラスメイト莉子とその母の恭子さんに養ってもらいながら、時々教室から減っていく机を見に中学に通い、夕方の記念公園で海賊放送のラジオを聞く。
周辺が立ち入り禁止区域だらけになり、人も減った東京だから誰にも邪魔されないはずだった。
そんな時マコは気がつく。人が消えていくばかりの世界の中、いなかったはずの女の子水島奈月がいつのまにかクラスの一員として溶け込んでいることに。
名前だけしか覚えていない少女は、特に知り合いでもないはずなのに、なぜか気になってしまう。
『忘れないことも選べるーその可能性を抱えているだけで・・・ぼくは磨り減っていくんだ。』(208P)という
主人公マコ。
人は何を持って世界にその存在跡を残すのだろう。名前だったり、功績だったり、姿かたちだったり、思い出だったり、
でもそれは、誰かが覚えていてくれなければ、何もないのと同じだ。
残った爪あとも、いつか風化して消え去ってしまう。
そんな世界で消えてしまったものを忘れられない少年。そしてその少年にすら忘れられてしまった少女。
全て失われていく世界で、それでも失いたくないものがそこにはあるだろうかと問題を投げかける。
忘れることが出来るから哀しみから抜け出せまた生きていけることもあるのだろうとおもう。
2010年10月 アスキー・メディアワークス刊




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上甲 宣之 著「脱出迷路」

2010-11-12 | さ行
夢の国を舞台にしたホラーで、「ここは首刈ヶ丘・夢屋敷ー夢の世界で死ぬる者、目覚めの後に命が尽きる」
夢で死ぬと現実でも死が待ち構えていると言う夢ものホラー小説。
赤いトンネルを抜け、“首夢”の世界に迷いこんだ女子高生・凪浜そよか。
「おまえは呪われた。おまえが死ぬまで残り寿命…」連続して与えられる不可解なミッション指令。
失敗すれば死が訪れる、容赦ない残酷なゲームに参加させられる。
迫るタイムリミット、クリアできなかった者が次々と死んでいくのを目の当たりにしながらも、そこで出会った仲間とともに、敢然と立ち向かうそよか。果たして、逃げ切れるのか
そして、いったい誰が、なんのためにこんな呪いを・・・。
終わりが見えないノンストップ・サスペンス!
携帯電話と黒電話、ポラロイドカメラやフラッシュなど小物を使って展開は早い
描写はグロテスクなホラー、まるでゲームの世界です。

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末浦広海著「捜査官」

2010-10-30 | さ行
2008年「訣別の森」で江戸川乱歩賞受賞。受賞後第一作作品。
青森県警の似顔絵が得意な捜査官・杉沢洋二は、かって世話になり事故死した成瀬の子息成瀬公大が警察庁警備局の警視正として青森に乗り込んで来た。
青森県で行なわれる国際会議の警備担当として指揮を執るためだ。
核廃棄物最終処分場建設反対派が起こすテロを警戒中起きた連続殺人事件、手口が二十三年前のある事件と同じ・・・。
県警、テロを取り締まる公安との軋轢、核廃棄物処理施設の警備をする警備保障会社と天下り、そして反対派に潜り込ませた“エス”の存在など
・・・・さまざまに絡み合う思惑と過去の事件結び問題を解くきっかけになったのは、・・・・。
文中ところどころに描かれる登場人物の似顔絵がヒントになるのだろうというのは予想が付いた。
横山秀夫著の「顔」でも警察官が描く似顔絵が取り上げられていたがこの本でも重要な役割を持たせている。
中東のテロ組織との関連や原発の必要性や核廃棄物最終処分場をめぐる問題などグローバルな関連性や関係を背景にした社会派推理小説になりえたのに町を二分する賛成反対住民の描き方が中途半端に終り突っ込み不足だった。
視点を他に求めたのが残念だったがそれなりに面白く読めた。

2009年9月講談社刊
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真保裕一著 『灰色の北壁』

2010-10-26 | さ行
山岳ミステリー小説中篇3作。第25回新田次郎文学賞受賞作。
標高7000mの北壁で、彼が見たものは何か?世界のアルピニストに残された課題であった前人未到の「ホワイトタワー」ヒマラヤ、カスール・ベーラ。御田村良弘は北壁登攀を無酸素単独で征服した。
19年後、離婚した御田村の妻と再婚した男、刈谷修が北壁を単独無酸素で制覇した。
しかし、山岳ジャーナリストの「私」は刈谷の写した山頂からの証拠写真に疑問符をつけたノンフィクションを発表する。汚名の晴れぬまま刈谷はカンチェンジェンガに挑んだが落石事故で死亡する。
疑問の謎解きが意外だった・・・表題作「灰色の北壁」

北アルプス、剣岳。ロープで繋がったふたりだけのパーティー。
ひとりが白い急壁面で滑落し宙吊りとなって意識を失う。
無線連絡を受けたのは事故現場に一番近い北峰ロッジの管理人で「黒部のヒグマ」と呼ばれた元県警山岳警備隊員。今は民間人であるが危険を賭して、一人救助に向かう。彼も過去に運命的な山岳ドラマの経験者だった。
過去と現在が交差し、巧みな事実に感動・・「黒部の羆」

息子の譲が冬の北笠山で遭難死した。世間やマスコミはそれを冷たく扱った。
妻も先に死に、人生に希望を見つけることができなくなった52歳。
ただ一つやらなくてはならないことがあった。
山の経験のない自分が冬の北笠山の遭難現場を訪ねることだ。
家をかたずけ身辺整理をして・・・。
死を覚悟した登山と悟ったかつて譲の婚約者だった多映子は慎作の異変に気づき、譲の従兄弟の雅司とともに、
慎作の捜索をする。 ・・・「雪の慰霊碑」

人間に潜む野心、功名心、敵愾心、欲望、嫉妬、憎悪、山屋の心理面を中心にじっくり描きいずれも凝った趣向が施された山にまつわるミステリーどれも読みごたえの有る作品でした。
『世間には責任を取ろうとせず、重い荷を放棄して楽な場所を歩きたがる者ばかりが幅を利かせている。』(P230)
2005年5月講談社刊 講談社文庫
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小路幸也著「さくらの丘で」

2010-10-15 | さ行
大好きだった祖母宇賀原ミツの遺書には祖母が少女時代を送った土地「“さくらの丘”を孫の「満ちる」たちに遺す」と書かれていた。
一緒に渡されたのは古びた鍵がひとつ。
祖母の幼なじみ二人も、亡くなったときそれぞれの孫たちに同じメッセージ伝えていた。
なぜ、祖母たちは孫にその共同所有の土地を遺したのか。
鍵は何を開けるものなのか。
満ちるは他の二人の孫達に連絡を取り楓叔父さんと共に祖母たちの秘密をさぐりに4人で、祖母たちの思い出が詰まった地を訪れることに。
三人の仲良しだった祖母たち当時終戦直後の少女時の青春が刻まれた西洋館、そこを訪れた館を残された孫娘3人が見た光景は・・・・
終戦直後、館の管理を任されたのは3人の娘だった。そして彼女たちが守り抜いたある秘密は何だったのか?。
祖母たちと孫達、二つ世代の時代が交互に語られ交差する感動の物語。
館に残された秘密の扉に隠された二世代経なければ語れない悲しい話。
ミステリータッチで描かれた感動のお話しでした。

2010年9月 祥伝社刊
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真保裕一著「デパートへ行こう!」 

2010-09-27 | さ行
著者が「デパートは家族との思い出とつながっているんですという」デパートが舞台(鈴膳という老舗デパートの、東京日本橋本店)です。
世界同時不況により、デパート業界はどこも著しく業績を落とし、鈴膳デパートは起死回生の一手として「創業百年祭」を実施中の最終日の前夜。
そのデパートの一日の営業が終わろうとするころ、曰くありげな人々が、次々と鈴膳本店へと足を踏み入れていきます。
そして、午後9時、客がいなくなった全館の照明が落とされ、巨大デパートが一夜の眠りにつくはずなのですが、誰もいないはずの真っ暗なデパートに、
所持金143円しかもっていない職を失った怪しげな46歳の男、一泡吹かせてやろうと目論む特選和食器コーナーの29歳の女性従業員、
下心一杯の美術宝飾部門のゼネラルマネージャー、家出してきた若い10代の男女、
ヤクザの追っ手を振り切って逃げ込んだ手を血で真っ赤に濡らした元刑事、
60代後半のベテラン警備員と職務に忠実だが心に傷を背負っている若い警備員などが。
照明の消えた深夜の閉鎖空間デパートのあちらこちらで、思惑をもった人たちの蠢く人の気配!
そして、そんな中に己と会社の行く末を見据えようとする創業者のひ孫であり、47歳で社長に就任した悩める社長が店内に残っていて。
・・・不穏な空気が流れ、ついに事件が発生!
さあ、深夜のデパートに居合わせた人々の運命やいかにと展開も筋書きも読めそうなミステリーだが最後は、無難に感動物語にマトメテイル。
善人ばかりの登場人物と人間関係、大事件のはずがご都合主義の大甘の朝を迎えます。

2009年8月講談社刊
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酒見賢一著「後宮小説 」

2010-09-15 | さ行
後宮(こうきゅう)とは、王や皇帝などの后妃が住まう場所。
著者の酒見は1989年 にこの小説で第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞しデビュー。
17世紀、素乾国で皇帝腹宗の崩御に伴い即位する新皇帝の後宮整備が行われることになった。
宮女募集が行われた緒蛇県で、14歳の少女「銀河」がこれに応募し、後宮の教育機関である女大学に学ぶこととなった。
銀河を含む一行は都城である北師への旅が始まる。
その道中で義賊である平勝と厄駘(のちの渾沌・幻影達)に出会う。
北師に到着し、宮女としての教育を受けることになるが、天真爛漫で儒学の考えのない銀河は、仲間や師となる瀬戸角人と出会い、
その中で房中術に基づいた奇抜な後宮哲学を学ぶ。
そのころ、宮廷では新皇帝に即位した双槐樹に対し、異母弟である平菊を即位させようという琴皇太后一派による皇帝暗殺計画が進められていた。
そんな状況の中、銀河は双槐樹と瀬戸角人の遠謀によって正妃として立后される。
宮廷内の陰謀が渦巻く中、銀河が北師に向かう道中で出会った平勝と厄駘が、退屈しのぎという理由で挙兵を行った。
この反乱軍を利用して、平菊擁立を目指す琴皇太后は瀬戸角人の弟子である菊凶と通じ、反乱軍を宮廷に導こうとする。
渾沌(厄駘より改名)はこの琴皇太后の陰謀を退け、幻影達(元の平勝)は北師攻撃を実行。
反乱軍を過大に評価した宮廷内では、もはや武力で反乱軍に対抗する術もなく、数百人の宮女達が住まう後宮もその略奪対象として攻撃を受けることになると大慌て。
後宮を守るべく、銀河は宮女や宦官と協力し、幻影達の軍勢に対抗するが・・・。
著者は中国史から題材をとることが多い作家。
史実を元にしながらも、それに捕らわれず自由な発想で斬新な解釈をしてのちに映画にもなった
『墨攻』孔子を扱った超長編『陋巷に在り』など多数の作品を書くことになった記念すべき作品。
中国風の架空の国である素乾国を舞台とした中国版シンデレラ物語、奇想天外なファンタジー小説。
1989年12月新潮社刊 1993年新潮文庫刊
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西條奈加著『善人長屋』

2010-09-04 | さ行
本当の名前は千七長屋というのだが最近誰もそう呼ばないで人呼んで「善人長屋」。困った人は見過ごせない、人助けが生き甲斐のお人好し錠前屋の加助がたどり着いたのが「善人長屋」。表稼業の温厚篤実で気持ちのいい善人ばかりが住むという評判とは裏腹に、実は表店は質屋の差配も店子も裏稼業の凄腕たちばかり、その世界では一目置かれた悪党揃いなのだ。ちょっとした手違いでその長屋に住む事となった善人の加助。裏事情の正体をそうとは知らずに加助が持ち込む人助けという名の悶着、厄介ごとで、次から次への大騒動。しぶしぶ店子たちは闇の稼業で鳴らした腕を使って何とかしてしまう。こそ泥、スリ盗人、詐欺師、美人局、長屋の悪党たちが巨悪を討つ!加助が住み着くようになった謂れの表題作「 善人長屋」、「 泥棒簪」「 抜けずの刀」「 嘘つき紅」「源平蛍」「犀の子守歌」「冬の蝉.」「夜叉坊主の代之吉」「野州の蔵」の9編の連作短編集。
どこかで読んだ「あやめ横丁」(殺め人が住む)とちょと似てるが大悪処を懲らしめる展開は仕事人風で痛快だ。その中の中心が長屋の質屋の十七歳の娘「お縫」というのがいい。
。『悪い運にはどこかに必ず、良い巡り合わせもついてくる。それをすくうことができるか否かは、その人次第だ。』(238P)
『悪いことは良くない。・・・この世はもっと混沌としていて、善悪の区別もまた、まっすぐな一本線で分けられるものではなく、ちょうど溶け合った蝋のように判別のつき辛いものだ。
世間には、法に触れない悪事もたんとある。もっとも恐ろしいのは、決して縄をかけることのできない、人の悪意だ。・・・人を傷つけ、殺すことさえ厭わない畜生に変えてしまう。』(216P)


2010年6月新潮社刊
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島田荘司 著「写楽 閉じた国の幻」

2010-08-15 | さ行
遂に「写楽の正体」を捉えた「東洲斎写楽の謎」歴史ミステリー。
寛政六年(1794年)の5月から出現しわずか十ヶ月間活躍し140数点の作品を残し突然の消息不明。
写楽を知る同時代の絵師歌麿、北斎など、板元達の不可解な沈黙。
錯綜する写楽諸説、証明できない矛盾。史実に不明部分の著者の想像を付け加えて、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。
日本美術史上今だ解明されていない謎とされている「写楽は誰なのか?」について、最も有力で魅力的な答が描かれている。
主人公の浮世絵美術館の元研究学芸員佐藤が東大工学部の女性片桐教授や出版社の常世田の助けを借りて写楽の正体を追及する物語です。
物語は謎解きの現代編と写楽の浮世絵を出版した蔦屋重三郎が主人公とする,写楽を世に送り出す浮世絵工房蔦屋の江戸編とが交互に描かれ進みます。
写楽の正体である人物の過去の仮説は、教授との会話の中で紹介、検証されていくので知らない読者にも解り易い。自らも推理する楽しみも得られた。
鍵になる寛政6年5月の年代が、当時の種々の資料で特定されていく過程は面白く、 写楽のあまりにも意外な真相に
「コロンブスの卵」のごとく感心した。
意外と「東洲斎写楽」の名前にこそ暗号になりヒントに繋がっているように思う。
700ページ近くの大作写楽の謎解きはなったが
現代の主人公佐藤のその後や女教授の正体は不明のまま終り続編の可能性の後書きもあり今後が楽しみだ。
『鎖国のような不合理、文明のめざましい進展に、みすみす遅れようとするようなお上の無能への蔦屋の反逆心・・・それが強いエネルギーになった。
・・・閉じていたこそ・・・このごく自然で美しい出来事が、解答不能の歴史的謎になったんです。』(670P)

2010年6月新潮社刊
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笹本稜平著「挑発ー越境捜査2ー」

2010-07-27 | さ行
警視庁vs神奈川県警、警視庁捜査一課の継続捜査専門の刑事鷺沼友哉が主人公のシリーズ第2弾。
7年前ある電子部品会社の社長を殺した容疑で勾留中の容疑者が自殺を図った。
この事件の真相を追う鷺沼は、殺人容疑で勾留中に死亡した飛田の従弟、川端の話を訊くためにパチンコ・パチスロ業界のドン、社長の飛田を訪ねる。
従弟とは30年近く会っていないと言う飛田だが、飛田の秘書深見亜津子は「7年前、飛田は川端に会っています」と告げる。
ひとつの殺人事件を端緒に、次々と湧く黒い謎。
鷺沼と神奈川県警の宮野が再び手を組み真相を探るが、そこに立ちはだかるのは警察組織。
組織と犯罪に闘いを挑む刑事たちの熱い姿を描く警察小説。  
前作同様の宮野とのコンビに経済ヤクザの福富が絡み裏ROM疑惑に、脱税疑惑,パチンコ業界と警察の癒着問題を背景に展開されるが敵がハッキリしているし、
緊張感は前作のようには感じられなかった。
重要人物の深見の心理にもっとページを割くべきだし借金の原因が書かれていないのが不満、川端の死の真相も書かれていない。
闇の裏金をせしめる部分は前回同様、納得性が感じられない。
宮野との絡みシーンは面白い。
2009年2月双葉社刊
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朱川 湊人著「太陽の村」

2010-07-24 | さ行
父親の定年を祝うハワイ旅行に出かけた坂木一家は、帰りの飛行機で事故に遭う。
目が覚めて意識を取り戻した主人公・龍馬の流れついた小島は、ド田舎の村で宝命年間の時代とか。電気・ガス・水道なし。
自分一人がタイムスリップして過去の世界に来てしまったようだ。
金太郎、桃太郎に仮面の男やニンジャ。年貢、人身御供に仇討ち?
どうする167cm、124kgのメタボな俺? オタクで引きこもりのフリーター坂木龍馬は、やがて働かざるもの喰うべからずで
過酷な田おこしの農作業や素朴な村民との触れあいにより、現代とは正反対の生活に喜びを見出していく。
「都市と田舎」、「過去と未来」、「バーチャルとリアル」、「文明と未開」の狭間に揺れる青年のカルチャーショックと葛藤と成長。
そして意外な結末に遭遇した究極の選択は果して・・・。
SFなのかミステリーなのか、謎の不思議さとサスペンス興味に何とか読み終えれたが軽いノリのセリフと噛合わない疑問符の多い展開の
シチュエーションに突っ込みどころ多数で、何とか後半の説明に納得だが騙された気分。

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