読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

島田荘司 著「写楽 閉じた国の幻」

2010-08-15 | さ行
遂に「写楽の正体」を捉えた「東洲斎写楽の謎」歴史ミステリー。
寛政六年(1794年)の5月から出現しわずか十ヶ月間活躍し140数点の作品を残し突然の消息不明。
写楽を知る同時代の絵師歌麿、北斎など、板元達の不可解な沈黙。
錯綜する写楽諸説、証明できない矛盾。史実に不明部分の著者の想像を付け加えて、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。
日本美術史上今だ解明されていない謎とされている「写楽は誰なのか?」について、最も有力で魅力的な答が描かれている。
主人公の浮世絵美術館の元研究学芸員佐藤が東大工学部の女性片桐教授や出版社の常世田の助けを借りて写楽の正体を追及する物語です。
物語は謎解きの現代編と写楽の浮世絵を出版した蔦屋重三郎が主人公とする,写楽を世に送り出す浮世絵工房蔦屋の江戸編とが交互に描かれ進みます。
写楽の正体である人物の過去の仮説は、教授との会話の中で紹介、検証されていくので知らない読者にも解り易い。自らも推理する楽しみも得られた。
鍵になる寛政6年5月の年代が、当時の種々の資料で特定されていく過程は面白く、 写楽のあまりにも意外な真相に
「コロンブスの卵」のごとく感心した。
意外と「東洲斎写楽」の名前にこそ暗号になりヒントに繋がっているように思う。
700ページ近くの大作写楽の謎解きはなったが
現代の主人公佐藤のその後や女教授の正体は不明のまま終り続編の可能性の後書きもあり今後が楽しみだ。
『鎖国のような不合理、文明のめざましい進展に、みすみす遅れようとするようなお上の無能への蔦屋の反逆心・・・それが強いエネルギーになった。
・・・閉じていたこそ・・・このごく自然で美しい出来事が、解答不能の歴史的謎になったんです。』(670P)

2010年6月新潮社刊

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