日米関係の闇に挑む本格的警察インテリジェンス小説。法務官僚の神谷道雄が殺された。警察庁警備局の隼瀬順平は神谷殺害事件の専任捜査を極秘に命じられる。神谷が日米合同委員会に関わっていたこと、コードネームらしい“キンモクセイ”という謎の言葉を残していた事実を探り当てる。しかし警視庁は捜査本部を縮小、公安部も手を引くことが決定される。やがて協力者である後輩の岸本行雄の自殺体が発見される。隼瀨はキャリア仲間の土曜会メンバーの木菟田(外務省),燕谷(厚労省),鷲尾(防衛省),鵠沼(経産省)とで情報交換をし,さらに同僚の水木と極秘に捜査継続。捜査本部の解散は.日米関係の圧力か,と考えているウチに,岸本の自殺は殺人の可能性も出てきて隼瀬自身が岸本殺害の容疑者として逮捕されそうになる。記者の武藤の計らいで野党代議士の力を借りることに。・・・・
「米地位協定ってのは、要するに、在日米軍は日本国内で好き勝手やっていいですよっていう協定だ。こんなもん結んでいるのは世界中で日本だけだ。」「共謀罪を含む改正組織犯罪処罰法が施行されたときに、こんなことを言ったやつがいる。俺たち公安はこれでようやく特高に戻れたってな・・・。」国家の秘密というが、国家って何だ? 国民を守るための器が国家なんじゃないのか?
日本の法律が及ばない米軍基地。基地を通じて自由に出入りするCIA達。普段は見えてこない日米関係の闇が怖い。政府の上に米軍があるかのような状態が戦後ずっと継続している現実に吃驚した。
キンモクセイ・・・「禁止の禁、沈黙の黙、制圧の制・・幻の監視システム。」
「マスコミの役割報道・教育・娯楽・警鐘つまり権力の監視」(P279)
2018年12月朝日新聞出版刊