メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

悪は根絶できるのか@モーガンフリーマン時空を超えて

2019-03-03 15:34:21 | テレビ・動画配信
人間は、歴史が始まって以来、自らの内なる暗黒面と戦ってきました

ごく普通に見える人たちまでが
時には残虐な行為や暴力に駆り立てられます それはなぜなのでしょうか?

研究者たちは、人間の心に潜む「悪魔」の正体を突き止め
邪悪な衝動を消し去り、人間性を善なる方向に導く手段を探しています

悪を根絶することは可能なのでしょうか

自分を邪悪な存在だと思う人は滅多にいませんが
悪と完全に無縁な人がいないのも事実です それはなぜでしょうか?

長い間、それは「悪魔」という外部の存在がなせる業だとされてきました
しかし、今では悪魔とは単なる象徴にすぎないと多くの人が考えています
心理学者や神経科学者は、悪魔とは私たちの心が生み出すものだと証明してきました

では、心の中にある悪魔の隠れ家を見つけ出し、滅ぼすことはできるのでしょうか?


私は9歳の時、シカゴに引っ越しました
新参者として、私はいじめの標的になってしまいました




ある日、我慢の限界に達して反撃に出ました(相手を突き飛ばす
地面に転がったいじめっ子を見ても喜びは感じられませんでした(手を差し出して起こす

私はこう思いました
何故この子はこんなに意地が悪いのだろう
この世には生まれながらの悪人が存在するのだろうか?


オランダ神経科学研究所の実験
机に乗せた手をバンと叩く男




「カット 次は指をさらにきつく曲げて もっと痛そうなところを見せたいんだ」

神経科学者のクリスチャンは、人間の残虐さが何に由来するのかを知りたいと思っています




そのために人間同士の「共感」、つまり他者の考えや感情を特定し
それに反応する能力を研究しています

人が共感を覚えたとき、脳はどのように活動するのか
それを調べるため、実験用の短い動画を撮影しているところです

クリスチャン:
必要なのは、2、3秒の痛みが何度も繰り返される映像です
時間的な正確さが求められるため、自分たちで作るしかありません
出演者は大学院などの学生で、実験の意義を理解しているので、痛みを我慢してくれています

完成した自主制作の「拷問映画」を実験に利用する時が来ました
機能的MRIを使って、被験者が「共感」を覚えた時に
脳のどの部分が活動するかを調べます




手をつねったりする映像

まず、他者が痛みを感じる映像を見せた時に
被験者の脳内で何が起きているかを確認します

その後、被験者自身が直接痛みを感じた時に、何が起きるかを調べます
被験者をものさしのような物で叩く




そして脳の画像を比較します




我々が研究している「情動的共感」の活動が見られる部分は
脳の表面ではなく内部にあります
こめかみの上あたりと、二つの半球の真ん中にある部位です

赤く見えるところは被験者本人が叩かれた時、活発に反応した部分です
情動に関わる二つの部位は、その時被験者が「不快感」を覚えたことを示しています
「痛い」「こんなの嫌だ」と言っているわけです

そして下の段は、他人が痛がる映像を見た時の脳の状態です
情動に関わる部位は全て活性化しています
まるで被験者自身が直接痛みを感じているかのようです

他人の苦痛を目にすると、人はそれを心の中で共有します
他人の苦痛が外側にあるものではなく、内側に入り込み自分自身の痛みとなるのです
他人が自分の一部になると言ってもいいでしょう

キーザースは、何百人もの被験者を調べた結果
他人に共感する力は、ほとんどすべての人に生まれつき備わっていると結論づけました

ただしその程度には個人差があり、著しく高い人もいれば低い人もいます

映画を観ると、多くの人は登場人物に感情移入します
しかし、共感する能力が低い人は、それを冷めた目で眺めています
脳の働き方が異なると、物事の見え方や聞こえ方も違うのです

脳内を流れる情報は、運河を進むボートのようです
運河が狭かったり、ふさがったりしているとボートは進めなくなってしまいます

こちら側が視覚に関わる脳の領域で、他者に起きたことが分かる
向こう側が情動に関わる領域で、苦痛を感じる部分だとしましょう

人によって共感する能力には差があります
それは視覚的な情報を扱う領域と情動に関わる領域をつないでいる
運河のサイズが人によって違うからです


サイコパスも他者に共感!?
では、殺人などの邪悪な行動を平気で行うことができる
「サイコパス」と呼ばれる人々はどうなのでしょうか?

サイコパスは、他人に共感する能力に欠け
そのため人に苦痛を与えたり、殺したりすることができるものだと
一般的には思われています しかしキーザースの意見は違います

キーザース:
この研究で最も衝撃を受けたのは、サイコパスを被験者にした時の事です

サイコパスは、共感する能力が欠如しているだろうと予想していたのですが
そんな単純な話ではありませんでした

彼らは、共感する能力が欠如しているわけではなく
意図的にその能力を使わないようにしていたのです


だから状況によっては、その能力を使いこなすことができます
お金をだまし取ろうとする時など、見事に相手に共感し
その心に入り込むことができるんです


つまり、悪を根絶するには、共感する能力だけでは不十分だということです

人が破壊的な行動をとらないよう行動の指針となる道徳的なシステムが必要になってきます





「道徳」は赤ちゃんの時からある?!
イエール大学のカレンとポールは
そのような「道徳」は人間の心に生まれながらに備わっていると考えています




カレン:
20年以上、赤ちゃんを対象にした研究をしてきましたが
研究を重ねるほど、結果は複雑さを増していきます

赤ちゃんの頭の中では、本当に色々なことが起きているんです
私たちが思っている以上に、赤ちゃんは豊かで複雑な
精神生活を営んでいることが分かってきました





ポール:
赤ちゃんを研究対象にすることで、いわば汚れる前の人間を見ることができます

様々な文化やセックスなどに影響される前の最も純粋な状態
つまり、人間の本質を調べることができるわけです

人間は優しいのか 残酷なのか 善悪の判断はつくのか
そういった問いにヒントを与えてくれます

その結果、人間は極めて初期の段階から「道徳的本能」のようなものを
備えていることが分かりました

しかし、赤ちゃんに対してどのように道徳的な質問をするのでしょうか?

カレン:
赤ちゃんでも分かる人形劇を利用しました
この劇では、人形の一つが箱を開けようと一生懸命頑張っています(可愛い




でもうまく開けられません
そこへ別の人形がやってきて、箱を開けるのを一緒に手伝ってあげます

その後、また人形が箱を開けようとすると
今度は別の人形がやってきて、フタに乗っかり箱を閉めてしまいます
(すごい真剣に見てる赤ちゃん

その後、赤ちゃんがどっちの人形に好意を持ったのか調べます

カレン:どっちが好き?




すると、かなり高い確率で赤ちゃんは箱を開けるのを手伝ったほうに手を伸ばしました
まだ生後5、6ヶ月の子どもがです

親切な人形を選ぶ確率は80~95%に達しました
人間は生まれつき優しさに惹かれ
反社会的な振る舞いを避ける傾向があるからだと彼等は考えています


しかしそれが正しいとすれば、なぜ世の中に悪が存在するのでしょうか




この世界には良識を歪めるものがたくさんあります

例えば、他者を否定する考えを教え込むような文化の下で育てば
共感する能力は損なわれます
生まれつき人間に備わっている倫理観は非常に脆いものなのです

一度邪悪に染まったらそこから抜け出すことはできないのでしょうか?
そもそも、悪への衝動を抑えることは不可能なのでしょうか?



脳を鍛えることで内なる悪を抑え込める?!
ある科学者は、脳を鍛えることで己の内なる悪を抑え込むことができると考えています

人は誰しも、精神の奥深くに獣を飼っています
自分が生き残ることしか頭にない獣です

ほとんどの人は檻の中で飼い慣らしていますが
中には獣の欲望に屈してしまう人もいます
それがおぞましい結果を招くことも

しかし邪悪な行動をした人たちに選択の余地があったのでしょうか?
(裁判みたいになってきたな

神経科学者のデヴィッド・イーグルマンは
人間の精神を長年研究した結果、恐ろしい結論に到達しました
ほんの些細の不運で、人は誰しも怪物に成り得るという結論です





イーグルマン:
知性や共感の能力 何を基準にしても人によってばらつきがあります
この世に一つとして同じ脳はないんです

脳は極めて繊細で複雑な器官です
怪我や病気で脳内の様々な物質のバランスが崩れると
体の状態や人格まで 大きく変化することがあります

もちろん、親指を怪我したくらいで人格は変わりません
でも脳に親指大のダメージを受ければ
リスクに対する観念や意思決定が変化し、時には殺人さえ犯します


1966年の銃乱射事件
チャールズ・ホイットマンという若者が
テキサス大学オースティン校のタワーに登って銃を乱射 計48人を死傷させました

事件の恐ろしさを際立たせたのは、犯人の経歴に
そんな凶行を予感させるようなものが何一つなかった点です




ホイットマンは建築を学び、妻や義母と暮らしていました
原因は一体何だったのか?

彼は遺書に「死後、自分を検死解剖してほしい」と書いていました
解剖すると、脳にクルミくらいの腫瘍があり「扁桃体」を圧迫していました
扁桃体は、恐怖や攻撃性に関わる領域です




「扁桃体」は、感情の中枢であり、原始的な欲求の源です
セルフ・コントロールの要である「前頭葉」と「側頭葉」によって抑制されています

しかし病気などで前頭葉と側頭葉が弱ると
押さえつけられていた悪魔が顔を出し
人間を邪悪な行動に駆り立てることがあります

ある種の認知症など、前頭葉と側頭葉が変化した場合
抑制が取り除かれ、反社会的な行動に出ることがあります
衝動が抑えられなくなるのです

例えば、店主の目の前で万引きをしたり、大勢の人の前で裸になったり
性的に問題のある行動をとったりしやすくなります

つまり人間の行動は、肉体の物理的な状態と密接に関わっているということです
私たちが思っているほど、行動を選択する自由はないのかもしれません


「小児性愛」で告訴された男の例
例えば、ある40歳の男性のケースを例に取りましょう

彼は本来性的にノーマルな人物でしたが
ある時から「小児性愛」の傾向が強くなり、とうとう告訴されました

判決の前夜、彼はひどい頭痛に襲われて救急治療室に運ばれました
そこで前頭葉に大きな腫瘍があることが分かり緊急手術を受けました
腫瘍が取り除かれると、彼の性的嗜好はノーマルなものに戻りました

(てことは、深層心理に「小児性愛」の趣向があって抑えているってことじゃないの?

ところが半年後、再び「小児性愛」の傾向が出てきたので、診察を受けると
前回の手術で見落とされていた腫瘍が成長していました
もう一度手術を受けた彼は、今度こそ完全にノーマルに戻りました

(性犯罪は繰り返す
 裁判前に腫瘍が見つかるなんて、そんな偶然あるだろうか?


チャールズ・ホイットマンが凶行に及んだ原因も脳の腫瘍だったのでしょうか?
彼は凶暴な衝動をコントロールできなかったのかもしれません

人間には、短期的に満たしたい衝動があり
もう一方に、そうした衝動を押さえ込む「長期的な思考」があります
その二つが常に葛藤を繰り広げているんです

(じゃあ、やっぱりこの男性は「小児性愛」の趣向があったってことでは?

例えば私がこのレンガを窓にぶつけたい衝動に駆られたとします
でも、一方では、そんなことをやって捕まったら大変だ、とも思います
その二つの思いが綱引きをするんです その戦いが苦手な人もいます


イーグルマンは「自制心」をトレーニングによって強化できると考えています

彼は、神経科学者のスティーブン・ラコンテと共同で
「前頭葉トレーニングジム」という実験を始めました




(MRIじゃなきゃダメですか? パニ障にはムリ・・・

そのジムでは、自制心を司る いわば精神の筋肉を動かすと
脳がどう反応するか、本人が見ることができます

この日は、コカインに溺れて友人や家族から盗みを働いた人物がトレーニングに参加しました
犯罪者を被験者にするのは今回が初めてです

ラコンテ:
彼にドラッグにまつわる様々な画像を見せ
それぞれについてドラッグを求める気持ちが高まるか、あるいは下がるかを調べます






ドラッグの常用者がこのような画像を見ると、基本的にはドラッグへの欲求が高まります
機能的MRIは、そんな脳の活動を感知し画面上のバーに表示します

ドラッグへの衝動が高まると、バーのメモリは赤いほうに移動します
しかし、被験者がそのような衝動を抑えようとするとメモリは青いほうに移動します
自らの衝動や自制心を目に見える形にすることで脳を鍛えるのです

イーグルマン:すごくいいね
ラコンテ:頑張ってる

イーグルマンたちは、この技術を刑務所に導入し
犯罪者の犯罪防止に役立てたいと考えています




前頭葉トレーニングジムの素晴らしいところは、自分で自分を助けられるところです
強制的に人格を変えるような大それたことはしません
短期的な衝動を抑え、長期的な思考力を自らの意思で強くできるんです


ただし、この技術は一見正常に見えながら
邪悪な行動を平気で行う「サイコパス」には通用しない可能性が高そうです

しかし、彼らが罪を犯す前に邪悪な脳の存在を突き止める技術が確立するかもしれません

サイコパスは、良心の呵責を感じることなく他者に危害を加えることができます
極めて邪悪な存在と言っていいでしょう

しかし驚いたことに、そのような人物は想像以上に多く
人口の3%にのぼると言われています
あなたもそのうちの一人かもしれません

自分の脳に問題があるかを知るにはどうすればいいのでしょうか?



サイコパス的な脳の構造形成
神経科学者のジェームス・ファロンは、長年脳の構造を研究してきました
中でも専門的に調べているのがサイコパスの脳です


(この人自身が怖いんだけど 映像の撮り方か?


ファロン:
6年前に精神医学の研究仲間2人が脳機能のイメージング画像を大量に持ち込んできました
その画像は、どれも凶悪な殺人者のものでした

全体の3/4ほど調べたところで明確なパターンがあることに気がつきました
サイコパスの殺人者は、独特な脳の構造をしています

脳の各領域
扁桃体、側頭葉前部、前頭眼窩野、前頭葉の内側部に帯状回、海馬




サイコパスは、これらの活動が低下し、連携が途切れているのです

脳の構造は、周囲の世界の見え方に影響します




普通、人はこんな風にドライブをしているような感じで世界を見ています
運転速度に注意し、他のドライバーの立場も考え、歩行者にも気を配りながら運転する
ドライバーは周りを見ているし、周りからもドライバーが見えています





それがサイコパスの場合は全く違います いわば夜中のドライブです
あなたの正体は周りからは見えません

外に目をやると歩くものが目に入りますが
彼らにとって人ではありません

サイコパスは夜の闇を利用します
他人と気持ちを通わせることのない夜の闇です
他人を単なるモノと見て、通行の邪魔になれば轢き殺すことも厭いません


サイコパス的な脳の構造形成には、少なくとも40の遺伝子が関係しているとファロンは考えています
凶暴性や自己陶酔性 殺人を犯す傾向などに影響する遺伝子です

では、そのような遺伝子を受け継ぎ
サイコパス的な脳の構造をしていたら必ず殺人を起こすのでしょうか?

ファロンは、思いもよらぬ形でその答えを得ることになりました

当時彼は「アルツハイマー病」の遺伝を心配して
家族全員の脳をスキャンし、調査していたのですが、そこで一つの異常を発見しました

ファロン:
その時、殺人犯の脳も調べていたので、そちらの画像が紛れ込んだのだと思いました
その脳の構造は、どう見ても殺人犯のものだったからです
しかし違いました それは他ならぬ私自身のものだったのです(やっぱり?
扁桃体と前頭眼窩野の周辺に活動の低下が見られました サイコパスならではの特徴です




思わず笑ってしまいました
面白いと思う気持ちや、否定したいと思う気持ちが混ざり合っていましたが
なんとか落ち着いて受け止めることができました

ファロンは、自分の遺伝子プロファイルと家族の歴史を調べ始めました
その結果、自分が十数個のハイリスクな遺伝子を受け継いでいることや
殺人を犯した先祖がいることが分かりました

(戦争も人殺しだし、先祖を遡れば1人や2人はいるんじゃないの?

彼は、家族や友人にサイコパス的な特徴が自分に見られるかどうか尋ねてみました

ファロン:
こう言われました

「何を今更 君がサイコパスだってことぐらいみんな知ってるよ
 すごく負けず嫌いで、人を思いのままにしようとする
 でも楽しいやつだし 暴力を振るうわけでもない だから特に指摘しなかっただけさ」


優れた科学者で、皆の人気者
サイコパス特有の脳を持つ危険な人物 どちらが本当のファロンなのでしょうか?

ファロン:
この事実を知った時、私は60歳でした
それまで私は自分のことをよく分かっていると思っていたし、自信を持っていました
その自分が実は思っていたような人間ではないと分かり、さすがにショックを受けました


そして彼は、根本的な疑問に向き合いました
これほど殺人者ならではの特徴を持ちながら、なぜ自分は殺人者になっていないのか?

ファロン:
遺伝子や脳の構造で、これだけ危険遺伝子があることを思えば
悲惨な結果になることをうまく逃れたと言えるでしょう
それはひとえに、両親や親類が私を幸せに育ててくれたおかげです

「生まれか育ちか」とよく言いますが
私の場合、育った環境がとても良い影響を与えてくれたんです



(後天的な理由、社会環境とか、時代背景とかも関係しているってことなら
 最新研究ではなく、昔から言われてきたことでは?


リスクの高い遺伝子や脳の構造が必ずしも殺人者を作り出すわけではありません
むしろ、幼少期における「虐待経験」のほうが影響は大きいようです
家族の愛情のおかげでファロンは殺人者になることを免れました



神経科学を利用して、人の考え方や行動を変える
全てのサイコパスが犯罪を犯すわけではありません
しかし、犯罪を犯した者にはどう対処すればいいのでしょうか?
社会から排除し、閉じ込めれば済むのか?

現在、悪を排除するための過激な方法が研究されています
頭の中にある悪を文字通り消去してしまおうと言うのです

「人は本来邪悪な生き物だ」と考える宗教もあります
正しい道を進みたいと願いながら果たせない存在
そのような罪人を科学的に善人にできるとしたら?

スイスの神経経済学者 クリスチャン・ラフは
神経科学を利用して、人の考え方や行動を変える研究をしています




ラフ:
人間の行動は動物にしては独特です
他の動物と違い、人間は己の利益だけに走りません(逆じゃない?
社会規範やルールに従い、行動をコントロールできます

その一方で、人は常にルールを破りたいという誘惑にもかられています
しかし、それを実行する人が増えたら、社会はすぐにも大混乱に陥ります

そこで、ルールを破らないようにという威嚇的な意味を持った「刑罰」の整備が求められます
ルールを破れば厳しい罰を受けると人々に教え込むわけです




ラフは、刑罰という威嚇的手段ではなく
より科学的な形で人がルールに従うシステムを考案しました





この被験者たちはビデオゲームで繋がっています
頭につけたヘッドギアは、威嚇的行為
すなわち他者の幸せを考える脳の部位に電気を流す仕掛けになっています
その部位に電気的な刺激を与えると、人はより親切な行為をすることが分かりました

ラフ:
最初は電極と頭皮が接触した部分にチクッとした痛みを感じますが
30秒ほどすれば刺激を受けている感じはなくなります

この日行ったのは「利益分配ゲーム」
自分の持つ仮想マネーを他の人に分配しますが
「仮想マネーは最後に現金になる」と伝えられているため、つい欲が出てしまいます





プレイヤーは1回のゲームごとに、他のプレイヤーの行動がフェアかどうかを判断します
白が私のキープしている分 黒が他の人に分けてあげる分です

自分でキープする分を70%にすると、他のプレイヤーは私を罰することができます
欲張るとご覧の通り全てを失います 0:100に

最初のうちは、皆利己的に振る舞います
しかし途中から、ヘッドギアを通じて電気が流れ始め
5分間刺激されると、全てのプレイヤーが進んで他の人に利益を譲るようになります

もう一度ゲームを行います
もう少し他の人にあげることにしましょう 今度はどうかな
自分の分を無事キープできました
電気的な刺激で誰もが親切になったのです

この変化は一時的なもので、刺激の効果は20分しかもちません
しかし処置を繰り返せば、永続的な効果が現れるかもしれません

(電気ショックやロボトミー手術でうつ病治療していた昔と基本変わっていないな



邪悪な行動をコントロールすることはできるのか?
この技術を応用することで、邪悪な思考を抑え込み
犯罪者を善人にすることはできるのでしょうか?

今の段階では、非常に利己的な人や暴力的な人をこの方法で矯正することは不可能です
しかし、そのような人たちの神経のシステムを明らかにし
電気刺激でどのような影響を与えられるかは、まもなく分かると思います

神経科学者のジェームス・ファロンは
薬物を使えば、このような矯正はすでに可能だと考えています

ファロン:
邪悪な行動をコントロールすることはできるのか?
コントロールの程度にもよりますが、答えはおそらくイエスです
方法は薬を鼻から吸うだけです



(おいおい、コカイン依存者に別の薬を与えようっていうの?
 ファロンさんやっぱりサイコパス???


例えば、衝動を抑えられない人がいるとしましょう
衝動のコントロールは、前頭眼窩野と呼ばれる部分
吸い込んだ薬がそこに作用し、衝動をコントロールする可能性が高まります
ただ薬を吸い込むだけの単純な方法ですが、一定の効果が期待できます

成分を変えて、それぞれの人に適した薬を調合できますから
その人専用の行動修正薬を用意することも可能です

ただし、効果が持続する時間には限界があります
少々荒っぽい話に聞こえるかもしれませんが
もし社会がそれを認するならば、今すぐにでも実行可能です



悪を裁く側の思考を探る
ある科学者は、悪を排除するためには、悪人だけでなく
彼らを裁く側の思考も探る必要があると考えています

現代では、犯罪の「動機」よりも、与えた被害の大きさによって犯罪者を罰する傾向があります
犯人の頭の中を覗くよりも、被害者の体に撃ち込まれた銃弾を数えるほうが簡単だからです

では、犯罪者の頭の中を覗きながら裁くことができるとしたらどうでしょうか?
そんな日がじきに訪れるかもしれません
ただし、その時は、裁く側の頭の中も同じように覗かれます

生物学者でありながら、法律学者でもあるジョーンズは、刑事司法の見方も独特です





この「模擬法廷」は、ジョーンズの研究の一環で
犯罪者、裁判官、陪審員の思考の流れを探るものです

ジョーンズ:
神経科学を法廷に持ち込もうとする試みは、良きにつけ悪しきにつけ増えています

例えば被告人の脳のスキャン画像を証拠として提出し
被告の脳に機能的な障害があるため責任を問うことはできません
と無罪を主張するようなケースです


ジョーンズが特に注目しているのは、犯罪者ではなく、裁く側にいる「陪審員」たちの脳です
彼は今の裁判には重大な欠陥があると考えています




ジョーンズ:
現在の裁判制度は、被告が罪を犯したかどうかだけでなく
その時の被告の精神状態まで見極めることを陪審員に求めています


ジョーンズの研究によれば、被告に罪を犯す意思がどの程度あったのかを
陪審員は正確に判断できません
感情的な要素が入り込むからです


例えば飲酒運転で事故を起こした人物が2人いるとします
1人は木に衝突
もう1人も木に衝突しますが、木の前にいた少女まで轢き殺したとします




前者は軽い刑で済みますが、後者は刑務所送りになります
それ自体は無理もないことですが、「刑期」を決める際にある種の歪みが生じます
陪審員は、少女を巻き添えにした運転手に極力厳しい刑を与える傾向があるのです

この2人の「罪を犯す意思」そのものは同じレベルだったはずです
しかし、少女を巻き添えにした運転手は「故意に殺した」かのようにみなされがちです

罪を犯す意思のレベルは、実際には同じなのに
少女を巻き添えにした場合のほうが
最初から悪意を持っていたかのように判断されてしまうのです

感情を刺激されると「裁き」は厳しくなりがちです
逆に感情的な部分が遮断されると、明らかな殺意を見逃してしまう場合もあります

私がある女性の殺害を企てたとしましょう
私は彼女に強い「ケシの実アレルギー」があると信じています




そこでサラダにケシの実をたくさん振りかけます
しかし、彼女は死にません

実は、彼女はピーナッツに対するアレルギーがあったのです
それを知らないシェフが、彼女のサラダにたまたまピーナッツを入れてしまいました
その結果、彼女は死にます

その後私の犯行計画がバレたとしても、実際に彼女が死ぬような
危害は加えていないのだから、と罪に問われないでしょう

私の明確な殺意は、別の人が彼女に死亡をもたらした
という事実によって覆い隠されてしまうわけです

「罪を犯す意思」ではなく「結果重視」で人を裁く意思決定の仕組みを
ジョーンズは神経科学的に研究しました

このような犯罪を裁く時、裁判官や陪審員の脳はどの部位がどのように活動するのでしょうか?




最初に活発な反応が見られたのは「背外側前頭前野」でした
分析と認知を司る部位です
この部位は、人を罰するか否かを決める際にかなり大きな役割を担っているようです

しかし、罰っすると一度決めたら、その度合いを決めるのは
感情を司る「扁桃体」になります
二つの大きく異なる部位が処罰を決めているわけです

片方は分析的、もう片方はとても感情的で そちらが罰の量を決めます
別々の部位ですが、連携して処罰を決定しています

裁判官や陪審員は、脳の中の分析的な部位と感情的な部位の
両方を駆使することが求められます

どちらかの機能が低下すると、誤った判断が下される可能性があります
こうした研究を通じて「判決の偏り」をなくせるかもしれません

犯罪に対する責任を判断する際、結果ではなく
その人がとった行動にもっと注目すべきだと思います


ジョーンズは、自分の研究がより公正な裁判の実現につながることを願っています
たまたま過ちを犯してしまった人ではなく
明らかな悪意を持った人だけを投獄できるような制度を確立するためです

しかし、犯罪者を裁く方法が改良されたとしても
それによって悪を根絶できるわけではありません

ある社会全体が道徳的に誤った方向に進むケースは歴史的に珍しくないからです






どうすればそのような事態を避けることができるのでしょうか?

悪意が私たち一人一人の心を歪めてしまうことは明らかです
そして時には、社会全体が悪意に染まることがあります

大量虐殺や奴隷制度を肯定する国家を、ごく普通の人々が受け入れてしまうのです
社会が邪悪に染まる原因を突き止め、それを防ぐことはできるのでしょうか?


イエール大学のカレンは、赤ん坊でさえ善悪を判断し、善を好むことを明らかにしました

しかし、別の実験では、人間性のネガティブな面を引き出しています
自分を「ある集団」と結びつけ、その集団に属さないものを「差別」する傾向は
非常に幼いうちから芽生えるというのです




赤ちゃんに選択肢として2つの食べ物を与えます
例えばクラッカーといんげんです

次に二つの人形を紹介します
人形は、それぞれがクラッカーといんげんのうち、好きなほうを選びます




「僕、このクラッカー大好き」

もう一人は好みが反対です
「僕このクラッカー嫌い」

赤ちゃんは、かなりの確率で自分が好きな食べ物を選んだ人形
つまり好みが同じ人形を選びます

赤ちゃんは、自分と意見が合う人形を好むだけでなく
意見が合わない人形が罰を受けるのを見たがりました


クラッカーが嫌いな人形は、その赤ちゃんにとって「よそ者」と認定されたのです
悲しい結果でした
1歳以下の赤ちゃんでさえ、自分と似たものを好み、異質なものを避けるんです

しかもこの傾向は、大人になっても消えません
自分と違う好みや意見を持ったものをどう受け止めるか
そういう人たちに何を求め、社会的にどう接していくべきか

同類を好むという幼い頃からの心理は、そういった判断にとても大きな影響を及ぼすはずです
私たちの脳は、自分と同じグループに属する人をより気にかける傾向があります

どんな食べ物が好きか 自分と同じ肌の色をしているか 何の宗教を信じているか
様々なことで他者に線を引き、差別し、時には取り返しのつかない事態を引き起こします






ものの見方を変える
スティーブン・ピンカーはハーバード大学の実験心理学者です




残虐行為の多くは、ある集団が別の集団を「非人間的なもの」とみなした時に生じます
相手の集団を「害虫」と変わらない存在だと思ってしまうのです

大切なのは、そんなものの見方を変えることです
人を特定の集団に分けるのではなく、人類を一つの集団として見ることができれば
道徳的な進歩が期待できます

小さな集団ではなく、より分け隔てのない大きな集団に帰属しようとする意識の変化は
徐々に進んでいるとピンカーは考えています

その結果、生じたのが「暴力の減少」です

ピンカー:
暴力は次第に減少し、今私たちは歴史上最も平和な時代に生きている
そう言ったら耳を疑う人がいるでしょう

それについては、「暴力の人類史」という本に詳しく書きました
私の主張を裏付ける膨大なデータがグラフの形で載っています

かつて「コンバットゾーン」と呼ばれる一角がありました
殺人や暴力などの犯罪が横行する地域でしたが
今は見違えるように平穏になっています

かつて、この近くでカナダやイギリス、フランスを敵に回した血みどろの戦いがありました
今アメリカがそれらの国と戦争するなんて考えられますか?(うん




数年前なら、私は宗教的な理由で火あぶりにされたり
アメリカ先住民との戦いで殺されたかもしれません


(ネイティブアメリカンを大量虐殺したのは白人だから、この例えは偏っている

人類の歴史の大半は驚くほど暴力的で残虐なものでしたが
そこから多くの進歩がありました

例えば、世界の至る所に存在した「奴隷制度」は今ではどこでも違法です


(奴隷的に働かされている後進国の貧しい人々は大勢いる

かつては日常的な出来事だった戦争も、多くの人にとっては特殊な出来事になっています


(テレビをつければ、世界のどこかで必ず戦争しているよ


ピンカーによれば、変化の大きな要因は、政府の役割強化と法の支配ですが
人類が昔より賢くなった点も見逃せないといいます

ピンカー:
頭が良くなった分 人間は善良になったのか
意外に思うかもしれませんが 答えはイエスです

20世紀の間、人類の知能指数は世界中で上がり続けました
大きな理由は「学校教育」が普及したため
そして、科学の進歩に伴う分析的なものの考え方が日常生活に浸透したためだと考えられます

(まだまだ学校教育を受けられない子どものほうが多いし、科学で大量殺戮が可能になったのに
 これまでの戦争で懲りた+今度、核戦争が起きたら人類滅亡するからっていうのが理由では?
 「ヒトが一番賢い」という驕りこそが、根本的な「悪」では?


人類の知的レベルが上がったことで、協力し合うことのメリットと
暴力を行使することのデメリットが広く理解されるようになった
そう考えてもおかしくはないでしょう

メディアと交通機関の発達は、世界を一つに繋ぐ役割を 果たしてきました


(この「経済活動」+「環境汚染」も人の脳に相当悪影響していると思う


人間の脳の仕組みを知ることも同様です
脳に対する知識を深めることで
人間性とは何なのか、悪ははなぜ生まれてくるのか理解できるようになるはずです

悪が全く存在しない世界は幻想に過ぎないでしょう
しかし、脳の仕組みがさらに解明されれば
危険人物を特定し、深刻な被害が出る前に何らかの手を打つことが可能になります

悪を根絶することは不可能でも、悪を封じ込め
多くの人への被害を最小限に抑えることはできるかもしれません


***

科学や計算でなんでも解決できると信じるのが欧米人らしいな
私は、善悪の問題もすべてスピリチュアルに捉えている

今、このアンバランスな時代、星に生まれたのも、それを学ぶため
ほかの星、時代、次元には、より高度な意識をもつ世界もある

私たちはまだまだ発展途上の動物なんだ




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