メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『嫌われ松子の一生』

2007-02-18 23:18:19 | 映画
『嫌われ松子の一生』

スカパラから谷中っちが出演しているということで観なきゃと思いつつ、
どこかで予告を観た時に、なんだかカメオ出演ばかり多い色モノB級映画か?
などと思ってしまっていたせいか、今ごろになってしまった/苦笑
実際、観てみたら、とっても素晴らしい映画じゃないか。

劇画ちっくな色づかいでミュージカルな演出もまじえることで重くなりがちな
不幸な女の一生を物語り的に魅せている。まさに、
「Life is a fairy-tale.」(人生はおとぎ話のようなものだ/ホテル・ニューハンプシャー

先日、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞して、感慨深げなスピーチをした
中谷美紀も当然の評価。いろんな衣装をとっかえひっかえ、ときに歌い、踊り、
傷だらけのボロボロになって、最期は太っちょのオバサン浮浪者もどきにまで
なりきっている。

物語の柱となる娘と父の関係。その父親役の柄本明がまた素晴らしい。
暴力をふるう作家の卵役のクドカンもかなりインパクト大で頑張ってるしw
裏切られても、裏切られても、また男に頼って自分を投げ捨てて尽くしまくる
「独り=不幸」だと思っているがゆえに、殴られ蹴られても
「ひとりよりずっとマシ」とつぶやく松子。
結局、荒川土手で死体となって発見されたけれども、けして絶望の果ての孤独死
なんかじゃなく、むしろこれからの希望を持っていたところに救いがある。
こうゆう激しい生き方でしか幸せや、生きてる実感を持てなかった
これが彼女の生き方だったとすれば、バイタリティと究極のユーモアを持った女性の
よくいえば波乱万丈で面白い一生だったとも言える。
ラスト、やっと不幸から解放されて鳥か蝶のようになって自分の一生を振り返るかの
ような浮遊感漂うシーンが泣けた。
一人の女性の一生をテレビの昭和史を絡めて進めているのも面白い。

さて。肝心の谷中敦の演技力は。演技じゃないんじゃないの?みたいなw
ま、素材を買われたってゆうのも俳優の重要な才能のうちですから。
こんな風俗営業者フツーにいそうだもの/爆
今作を観たからには、『河童』も観ないとねえ。

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おおいぬのふぐり

2007-02-18 16:51:49 | 日記
先日、実家に帰省した際、母とみーちゃんの散歩をしていたら
土手を降りた畑の道にもう、おおいぬのふぐりがつぼみをつけているのを
見つけた。

春先にこの花が咲いているのを見るたび、わたしは小学生だった頃を思い出す。
アパートから自転車で10分くらいのところにある親友の家まで、
学校から戻るとすぐ、それこそ毎日欠かさず遊びに行っていた。
着くといつも家の前で「○○ちゃん、あーそぼ!」て節をつけた歌みたいに呼ぶんだよね。

そのコの家には白いスピッツの血がちょっと入ったわんこがいて、名前はシーザー
近所の母犬ハナちゃんから産まれた5~6匹(出産直後も可愛かったなあ!
のうち茶色い「チャロ」、黒い「クロ」ももらわれていって、白いコを友だちがもらった。
そのシーちゃんを連れて毎日散歩させながら、草花の生い茂る空き地で
日が暮れるまでよく遊んだ。

かくれんぼや鬼ごっこでつい熱くなって、トタンで手を深く切ってしまって、
看護婦気取りの友だちが消毒して絆創膏を貼ってくれたり、
近くの廃材所に止めてある大型クレーンに乗ってドキドキしたり、
拾ったマンガ雑誌を大事に空き地に埋めたら、数日後ボロボロになって土に還ってたりw

トタンや板で秘密基地を作っていたら、突然夕立ちがきて
大雨を基地の中でやりすごして得意気になったり。
地に線をひいて家のつもりになって、泥ダンゴを作って、ままごとをしたり。
空き地に置かれたダンボール箱の中に子猫が捨てられていて、家に持って帰って
「飼えないから返してきなさい!」と怒られて、泣いて、友だちと交代で食べ物を
運んでいたんだけど、いつしかいなくなっていたこともあったっけ。

空き地や土手にはおおいぬのふぐりが一面に咲いて、まるで青いじゅうたんみたいに
陽が当たってあったかくて、疲れたらそのまま寝転んでしゃべったり。


小さい頃、こうして自然と触れ合ってのびのびと身体を動かして遊んだ体験は
いまでもわたしのカラダとココロの一部となって、いろんな場面で助けになっている
気がしている。

その後、親友とは中学も同じ部活だったけど、中学の友だちと付き合うようになってからは
すっかり疎遠になってしまった。
優しかったお父さんが早くに亡くなって、結婚して旦那さんとお子さんと一緒に
たしかいまでもお母さんとあの家にいるんじゃないかなあ。
シーちゃんもかなり長生きしたけど、もうとっくに亡くなってしまったと
風の便りに聞いた。
空き地や野原の中を通ってた小道も、いまではオリンピック道路で広いコンクリートに
変わってしまって、昔の面影はまったくない。

でもすべての思い出は、このおおいぬのふぐりの中に詰まっている。
毎年、春にこの花を見るたび思い出は昨日のことみたいによみがえってくる。


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心の中のベストフィルム~『銀河鉄道の夜』(1985)

2007-02-18 14:05:02 | 映画
『銀河鉄道の夜』(1985)
原作:宮沢賢治 原案:ますむら・ひろし
監督:杉井ギサブロー 音楽:細野晴臣
声の出演:田中真弓、坂本千夏 ほか

わたしの中では本作がアニメーション映画の最後傑作だと思っている。
それこそセリフが全部そらで言えるほど何十回も観た。
初めて観たとき、耳の奥が痛くなるくらい泣いたのを覚えている。
テレビで何度もOAされたけど、いつも同じところがカットされていたから
こうして完全版がDVD化されて観れるのは感激(欲しいなあ!

原案のますむら・ひろしは「アタゴオル」でも有名。
舞台をカラフルなヨーロッパ風の街並みに移して、なんともステキに擬人化されたネコを
主人公にすることで、本作の独特なファンタジーの魅力を表現している。
永遠の未完成の名作を細部にわたって映像化するのは至難の業だったに違いない。

本作の魅力を支えるもうひとつが細野晴臣のサントラ。このアルバムだけでも
立派なアートで、いまだにテレビでも耳にするから嬉しい。

あらすじ
父親が遠方の漁に出たきり戻らず、母親が病気のために、学校のあとは活版所で働いて
生計を支えている少年・ジョバンニ。
ある星まつりの夜に銀河鉄道に乗って、唯一の親友・カンパネルラとフシギな旅をするうち、
ほんとうのしあわせとは何かを考える。

この活版所のシーンではひと昔前の印刷工程の様子が垣間見れて貴重(こんな感じ
人の手で1文字1文字を並べて木箱に組んで刷ってたってすごい手間だったろうなあ!

氷山にぶつかって沈んだタイタニック号の話もある。
燈台守「なにが幸福か分からないです。ほんとうにどんなつらいことでも
    それがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りも
    みんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから」
家庭教師「ああ、そうです。ただいちばんのさいわいにいたるためにいろいろの
     かなしみもみんなおぼしめしです」

賢治はとても敬虔な仏教徒で徹底した自己犠牲の精神が根底にあったと同時に
現代にも通じる科学者の目も持っていたことは本作にもよくあらわれている。

今作をキッカケに宮澤賢治の世界にどっぷりとハマった。
その後、授業でも取り上げられて嬉しかったことを思い出す。
方言があったかくて、たくさんの擬態音の表現がユニークで、
わたしがその文体にどれだけ影響を受けたかは、このブログの副題を見ても分かるだろう/笑

楽しみにしてた特典は、劇場予告編と、当時の書き込みがしてある台本やセル画など。
チャプターが電車の路線図なのも雰囲気が出ててイイ。

以前、知人といっしょに岩手・花巻市にある宮澤賢治記念館にも出かけた。
黒板に書かれた「下ノ畑ニ居リマス」の文字はいまでは学生たちが交代に書いているそうだ。
駅前に特殊塗料で描かれた銀河鉄道の壁画が完成したって記事を読んで見に行ったんだけど、時間が決まってて、凍えそうに寒い中、待合室らしき場所もない場所で待ったあげく
とうとう実際に見ることができなかったんだよね
東北の寒さって格別だったな。
たしか当時話題になった2階建て新幹線MAXに乗ろうとしたら、
トンネル内で屋根の一部が吹き飛んだとかで運行中止していて乗れなかったしw

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