1967年初版 1990年 第27刷 米川正夫/訳 松井行正/挿絵
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ツルゲーネフの自伝的小説
最初に父親が離れを訪れた時から怪しいなと思った
ヒロインがどんな女性か想像して、ドミニク・サンダはピッタリだと思った
『あすなろ物語』(1955年) - 堀川弘通監督(原作は井上靖で久我美子が出る第3部は『初恋』の翻案)
『初恋(ファースト・ラブ)』(1970年) - マクシミリアン・シェル監督 ドミニク・サンダ主演
『LOVER'S PRAYER―はつ恋』(2000年) - リヴァージ・アンセルモ監督 キルスティン・ダンスト主演
「片恋」
アーシャにしかない個性に惹きつけられたのに
結婚したら、当時の一般的女性同様に服従させることが出来ないだろうし
社交の教養がないことも天秤にしたはずで
アーシャから身を預けて来た瞬間に告白できなかったことを
彼女が兄に話したせいにしたりして
どうにもハッキリしない
結局手に入らなかったために、その後もずっと思い出に残ってるんだな
そのまま結婚していたら、なにかしら不満が募っていたかもしれないし
【内容抜粋メモ】
■初恋
ヴラジーミル・ペトローヴィッチは16歳の初恋を語る
隣りにザセーキナ公爵夫人、娘ジーノチカ(21歳)が越してくる
公爵夫人はトラブルを抱えていて、母にセルギイ公爵にとりなしてくれとしつこく頼む
ウラジミールが招待されて行くと、ジーノチカは5人の崇拝者に囲まれている
マレーフスキイ伯爵、医師のルーシン、詩人マイダーノフ、予備大尉ニルマーツキイ、軽騎兵ペロヴゾーロフ
当たりクジを引いたらジーノチカの手にキスする遊びや
ピアノを弾いたり、踊ったりして過ごし、ウラジミールもジーノチカに恋をする
父はその夜のことを詳しく聞く
ジーノチカは誰かに恋している様子
“恋せでやまぬ性なれば”
“ああ、どうしよう! 彼女は恋におちた! けれども、誰と?!”
ルーシン:どうして君のような賢い人が鼻先で起きていることに気づかないんでしょう?
父:
できるだけのものを自分で取れ
自分が自分自身のものになるということ
そこに人生の一切の妙味があるのだ
年上の母は父と言い争うようになる
母はジーノチカを“男たらし”と侮辱する
ウラジミールは尊敬する父とジーノチカが一緒に馬で散歩しているのを見る
ジーノチカは次第にウラジミールを避けるようになる
ジーノチカ:友だちになりましょう
みんなで集まった際、ジーノチカは
噴水のそばに愛する人がただずむという作り話を聞かせる
何を暗示したのかと考えて、庭を見張っていると父が来た
ウラジミール:なぜあなたは僕をおもちゃにしたのです
ジーノチカ:私、あなたを愛していますわ
母は父の不実を責め、ジーノチカとの交際をなじる
“これこそ恋、情欲 ほんとうの愛着なのだ”
ウラジミール:僕は自分の生涯の終わりまであなたを崇拝します
その後、父がジーノチカと再会し、言葉を交わすのを見る
父は彼女にムチを当てた
父は42歳で急死した
父からの手紙:わが子よ! 女の愛を恐れよ この幸福を、この毒を恐れよ
4年後、マイダーノフと再会し、ジーノチカがドーリスキイと結婚したと聞く
数週間後に訪ねると、お産で亡くなったと知る
■片恋
25歳のN 温泉場で知り合った若い未亡人から受けた痛手に苦しんでいた
L町で“コムメルシ”(大学生の組合で催す盛大な宴会)の音楽が聞こえてきて、ふらっと立ち寄り
ガーギンという青年と妹アーシャと知り合う
ガーギンと意気投合して、毎日のように会い
アーシャの異質な言動に惹かれていく
N:あれは、あの男の妹じゃない
ある日、アーシャがガーギンに泣いて訴えているところを垣間見る
アーシャ:ただあんた一人だけ好きでいたいわ
Nは頭を冷やすために1人で登山に出かける
ガーギンはアーシャの生い立ちを打ち明ける
ガーギンの実母は早く亡くなり、伯父に引き取られた
父は死の床で、妹を形見に残していくと言って亡くなる
アーシャは母の小間使いタチヤナとの子で、タチヤナが亡き後に引き取られた
20歳のガーギンは13歳のアーシャを扱いきれず、一緒に外国旅行に出た
ガーギン:いきなり生涯兄だけが好きだと誓って泣くんです
アーシャから礼拝堂で会いたいと手紙をもらう
ガーギンはアーシャの様子が心配でNに相談に来る
明日、発つが、Nはアーシャの気持ちに応えられるか問う
ガーギン:あなたはアーシャと結婚なさらないでしょう
Nもあんな気性の娘と結婚できるはずがないと決めつけるが
フラウ・ルイゼの部屋でアーシャに会い、身も心も任せきっている様子に感動する
N:どうか後生です やめてください
アーシャはそのまま出て行き、行方不明になり、ガーギンと必死に探している間に
激しい後悔、哀憐、愛情を感じるが、兄妹は発った後だった
ガーギンから探さないでくれという手紙を受け取る
アーシャからの手紙には「僕はあなたを愛している」とひと言言ってほしかったと書いてある
■あいびき 『猟人日記』から
犬を散歩させて、木陰で眠っていたら
若い百姓娘が誰かを待っているのを見る
やって来たのは小生意気な地主の従僕で
やたらと気取り散らかしている
ビクトル:
俺たちは明日発つんだぜ
お願いだから泣くのはよしてくれ
アクリーナ:お別れになにかひと言優しい言葉をかけてくれてもいいじゃないの
男が行ってしまい、激しく泣いている娘に同情して
そばに駆け寄ろうとすると、驚いて逃げていってしまった
■狼 『猟人日記』から
競争馬車に乗って、猟からの帰り道で、ひどい雷雨に遭い
厳しいことで有名な森の番人フォマー(あだ名は狼)の小屋に案内される
小屋は貧しく、12歳くらいの娘と2人暮らし
聞くと、妻は娘と赤ん坊を捨てて、旅商人と駆け落ちしたと言う
森の中で木を盗んでいた極貧の百姓を帯で縛って小屋に連れて来る
百姓:
かんべんしてくんろ 貧ゆえの盗みだ
お屋敷の番頭がいじめて丸裸にされちまったんだ
血も涙もない鬼畜生! たたき殺せ どっちみち同じこった
私も放してやるよう言い、フォマーは百姓を逃がしてやる
■音がする! 『猟人日記』から
猟の最中に弾がないことに気づき、トゥラ町まで取りに行くのに
フィロフェイという百姓の馬を3頭借りて出発する
ロシアらしい見事な景観の聖エゴリの原を行く
フィロフェイ:死ぬのがバカらしいくれえ、いい世の中でさ
そのうち、後ろから鈴を鳴らしながら空の馬車が来る音がする
フィロフェイ:音がする! この辺にゃ人の住み家はない
なんとか逃げようとするが、追いつかれ、観念する
6人の男は酒盛りの帰りで、迎え酒の金を恵んでほしいと言うので
銀貨2ルーブリ出すと、それ以上は盗らずに行ってしまう
命拾いして、先に進むと、その金で男たちが飲んでいるのを見る
弾を買って、もとの村に帰ると、同じ街道筋で商人が追いはぎにあって殺されたと知る
さっき会った男たちの“祝言の帰り”と言ったのはこの事件ではないかと疑う
■解説
イヴァン・セルゲーヴィチ・ツルゲーネフ
ロシアの有名な詩人、小説家
生家は農奴数千人を持つ大貴族だったが
ツルゲーネフは農奴制度に反対した
これがロシア社会に大きな反響を呼び
当時の皇太子アレクサンドル二世は農奴解放令を公布した
『猟人日記』は、島崎藤村『千曲川のスケッチ』、国木田独歩『武蔵野』の手本にもなった
母ヴァルヴァーラは、生まれつき醜く、孤児で、継父や伯父に冷たい仕打ちを受けていた
伯父が急死し、財産家となり、美男子セルゲーイと結婚し、ツルゲーネフを産んだ
ツルゲーネフ16歳の時、父が急死すると、母は農奴や召使いに対して女王のようにふるまった
ツルゲーネフはフランスを第二の故郷とした
フランスの歌劇歌手ヴィアルドと知り合い、夫人に愛情を捧げ、独身を守った
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ツルゲーネフの自伝的小説
最初に父親が離れを訪れた時から怪しいなと思った
ヒロインがどんな女性か想像して、ドミニク・サンダはピッタリだと思った
『あすなろ物語』(1955年) - 堀川弘通監督(原作は井上靖で久我美子が出る第3部は『初恋』の翻案)
『初恋(ファースト・ラブ)』(1970年) - マクシミリアン・シェル監督 ドミニク・サンダ主演
『LOVER'S PRAYER―はつ恋』(2000年) - リヴァージ・アンセルモ監督 キルスティン・ダンスト主演
「片恋」
アーシャにしかない個性に惹きつけられたのに
結婚したら、当時の一般的女性同様に服従させることが出来ないだろうし
社交の教養がないことも天秤にしたはずで
アーシャから身を預けて来た瞬間に告白できなかったことを
彼女が兄に話したせいにしたりして
どうにもハッキリしない
結局手に入らなかったために、その後もずっと思い出に残ってるんだな
そのまま結婚していたら、なにかしら不満が募っていたかもしれないし
【内容抜粋メモ】
■初恋
ヴラジーミル・ペトローヴィッチは16歳の初恋を語る
隣りにザセーキナ公爵夫人、娘ジーノチカ(21歳)が越してくる
公爵夫人はトラブルを抱えていて、母にセルギイ公爵にとりなしてくれとしつこく頼む
ウラジミールが招待されて行くと、ジーノチカは5人の崇拝者に囲まれている
マレーフスキイ伯爵、医師のルーシン、詩人マイダーノフ、予備大尉ニルマーツキイ、軽騎兵ペロヴゾーロフ
当たりクジを引いたらジーノチカの手にキスする遊びや
ピアノを弾いたり、踊ったりして過ごし、ウラジミールもジーノチカに恋をする
父はその夜のことを詳しく聞く
ジーノチカは誰かに恋している様子
“恋せでやまぬ性なれば”
“ああ、どうしよう! 彼女は恋におちた! けれども、誰と?!”
ルーシン:どうして君のような賢い人が鼻先で起きていることに気づかないんでしょう?
父:
できるだけのものを自分で取れ
自分が自分自身のものになるということ
そこに人生の一切の妙味があるのだ
年上の母は父と言い争うようになる
母はジーノチカを“男たらし”と侮辱する
ウラジミールは尊敬する父とジーノチカが一緒に馬で散歩しているのを見る
ジーノチカは次第にウラジミールを避けるようになる
ジーノチカ:友だちになりましょう
みんなで集まった際、ジーノチカは
噴水のそばに愛する人がただずむという作り話を聞かせる
何を暗示したのかと考えて、庭を見張っていると父が来た
ウラジミール:なぜあなたは僕をおもちゃにしたのです
ジーノチカ:私、あなたを愛していますわ
母は父の不実を責め、ジーノチカとの交際をなじる
“これこそ恋、情欲 ほんとうの愛着なのだ”
ウラジミール:僕は自分の生涯の終わりまであなたを崇拝します
その後、父がジーノチカと再会し、言葉を交わすのを見る
父は彼女にムチを当てた
父は42歳で急死した
父からの手紙:わが子よ! 女の愛を恐れよ この幸福を、この毒を恐れよ
4年後、マイダーノフと再会し、ジーノチカがドーリスキイと結婚したと聞く
数週間後に訪ねると、お産で亡くなったと知る
■片恋
25歳のN 温泉場で知り合った若い未亡人から受けた痛手に苦しんでいた
L町で“コムメルシ”(大学生の組合で催す盛大な宴会)の音楽が聞こえてきて、ふらっと立ち寄り
ガーギンという青年と妹アーシャと知り合う
ガーギンと意気投合して、毎日のように会い
アーシャの異質な言動に惹かれていく
N:あれは、あの男の妹じゃない
ある日、アーシャがガーギンに泣いて訴えているところを垣間見る
アーシャ:ただあんた一人だけ好きでいたいわ
Nは頭を冷やすために1人で登山に出かける
ガーギンはアーシャの生い立ちを打ち明ける
ガーギンの実母は早く亡くなり、伯父に引き取られた
父は死の床で、妹を形見に残していくと言って亡くなる
アーシャは母の小間使いタチヤナとの子で、タチヤナが亡き後に引き取られた
20歳のガーギンは13歳のアーシャを扱いきれず、一緒に外国旅行に出た
ガーギン:いきなり生涯兄だけが好きだと誓って泣くんです
アーシャから礼拝堂で会いたいと手紙をもらう
ガーギンはアーシャの様子が心配でNに相談に来る
明日、発つが、Nはアーシャの気持ちに応えられるか問う
ガーギン:あなたはアーシャと結婚なさらないでしょう
Nもあんな気性の娘と結婚できるはずがないと決めつけるが
フラウ・ルイゼの部屋でアーシャに会い、身も心も任せきっている様子に感動する
N:どうか後生です やめてください
アーシャはそのまま出て行き、行方不明になり、ガーギンと必死に探している間に
激しい後悔、哀憐、愛情を感じるが、兄妹は発った後だった
ガーギンから探さないでくれという手紙を受け取る
アーシャからの手紙には「僕はあなたを愛している」とひと言言ってほしかったと書いてある
■あいびき 『猟人日記』から
犬を散歩させて、木陰で眠っていたら
若い百姓娘が誰かを待っているのを見る
やって来たのは小生意気な地主の従僕で
やたらと気取り散らかしている
ビクトル:
俺たちは明日発つんだぜ
お願いだから泣くのはよしてくれ
アクリーナ:お別れになにかひと言優しい言葉をかけてくれてもいいじゃないの
男が行ってしまい、激しく泣いている娘に同情して
そばに駆け寄ろうとすると、驚いて逃げていってしまった
■狼 『猟人日記』から
競争馬車に乗って、猟からの帰り道で、ひどい雷雨に遭い
厳しいことで有名な森の番人フォマー(あだ名は狼)の小屋に案内される
小屋は貧しく、12歳くらいの娘と2人暮らし
聞くと、妻は娘と赤ん坊を捨てて、旅商人と駆け落ちしたと言う
森の中で木を盗んでいた極貧の百姓を帯で縛って小屋に連れて来る
百姓:
かんべんしてくんろ 貧ゆえの盗みだ
お屋敷の番頭がいじめて丸裸にされちまったんだ
血も涙もない鬼畜生! たたき殺せ どっちみち同じこった
私も放してやるよう言い、フォマーは百姓を逃がしてやる
■音がする! 『猟人日記』から
猟の最中に弾がないことに気づき、トゥラ町まで取りに行くのに
フィロフェイという百姓の馬を3頭借りて出発する
ロシアらしい見事な景観の聖エゴリの原を行く
フィロフェイ:死ぬのがバカらしいくれえ、いい世の中でさ
そのうち、後ろから鈴を鳴らしながら空の馬車が来る音がする
フィロフェイ:音がする! この辺にゃ人の住み家はない
なんとか逃げようとするが、追いつかれ、観念する
6人の男は酒盛りの帰りで、迎え酒の金を恵んでほしいと言うので
銀貨2ルーブリ出すと、それ以上は盗らずに行ってしまう
命拾いして、先に進むと、その金で男たちが飲んでいるのを見る
弾を買って、もとの村に帰ると、同じ街道筋で商人が追いはぎにあって殺されたと知る
さっき会った男たちの“祝言の帰り”と言ったのはこの事件ではないかと疑う
■解説
イヴァン・セルゲーヴィチ・ツルゲーネフ
ロシアの有名な詩人、小説家
生家は農奴数千人を持つ大貴族だったが
ツルゲーネフは農奴制度に反対した
これがロシア社会に大きな反響を呼び
当時の皇太子アレクサンドル二世は農奴解放令を公布した
『猟人日記』は、島崎藤村『千曲川のスケッチ』、国木田独歩『武蔵野』の手本にもなった
母ヴァルヴァーラは、生まれつき醜く、孤児で、継父や伯父に冷たい仕打ちを受けていた
伯父が急死し、財産家となり、美男子セルゲーイと結婚し、ツルゲーネフを産んだ
ツルゲーネフ16歳の時、父が急死すると、母は農奴や召使いに対して女王のようにふるまった
ツルゲーネフはフランスを第二の故郷とした
フランスの歌劇歌手ヴィアルドと知り合い、夫人に愛情を捧げ、独身を守った