原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

短答の「壁」

2010-09-07 | 勉強法全般
今日は、「狙われる新判例」の第1講。がっつり憲法のお話をして参りました。予定よりもやや長く憲法を扱ってしまいましたが、実戦的なお話をすることができたかな、と思っております。

講義の後、喫煙所にて、スタ短特訓の受講生の方と少し立ち話。スタ短特訓の成績表(得点分布表)をちらっと見せてもらったのですが、中には78/80点という方もいるのですね。びっくりです(出来過ぎです)。完全な感覚論ですが、この時期にあの問題(本試験よりはやや易しい。しかしそこまで易しいわけではない)で7割取れていれたら、本番はかなりの確率で8割を超えていくのではないか、そんなふうに思います。勉強の進捗状況にもよりますし、まずもって、「この先しっかりと勉強していく」ことが大前提の話ではありますが。

短答には、5割(175点)、6割(210点)、7割(245点)、8割(280点)の壁があります。私はどんな感じで点数が伸びていったか、書きます。皆さん、自信が持てるはずです(笑)ノンフィクションでいきます。

まず、5割の壁からスタートしました。LS3年の夏に受けたTKCの模試、160点台でした(涙)この時、本格的な試験対策をしておらず(そういう時代だったんです←言い訳)、条文知識さえあやふやだったので、まぁ、こういう結果になりました。

LS3年の10月から、スタ短へ。第1クールは、5割~6割を彷徨っていました。まだ知識が定着していなくて、点数は伸びなかったですね。

年明け、第2クールになると6割とちょっとで安定。やっと条文知識がそろってきたかな、という印象。

全国模試&新司総択は7割(245点くらい)。条文知識に加えて、判例知識も揃ってきた、という印象。で、その年の本試験は確か、247点。やっぱり7割。…が、体調不良による「ほぼ」途中棄権。

2年目突入。2年目も10月のスタ短・第1クールから。第1クールは7割前後でしたが、年明けの第2クールになると8割台で安定。時に9割も。もう、この頃は十分な「反復による知識の定着」ができており、かつ、「バラバラの点の知識」だけではなく、「基本理論の骨太な理解」ができつつあった(と勝手に思っている)ので、8割を切る気がしなかった。全国模試も新司総択も8割超え。本試験、297点(84.8%。刑事97点の大ブレイク)。…が、論文民事の大惨事・大炎上。

3年目。もう、短答対策は一切しない、どうしたって短答は落ちない自信あり。もっとも、あまりに対策をしなかったので、本番は268点(76.5%)。

という軌跡をたどってわかったこと。

短答は、原則として実力プラスマイナス5%の点数が出ます。8割の実力の人であれば、262点~298点。8割の実力の人で、本番、「短答の神」が降臨すると「夢の300点の世界」の住人になれます。

択一六法なり、判例六法なりを読み込んで「点の知識の集合」がきっちりできれば、7割の壁(245点の壁)までは破れます。その先は、「基本理論の骨太な理解」が必要で、これができれば8割の壁(280点の壁)を突破です。このレベルに至ると、論文でもしっかりと自らの法的思考を示せるようになり、合格の確実度もぐっと上がります(ただ、私のように大事故をやらかして散っていくこともある)。現時点では(現状の新司法試験の状況では、という意味)、7割の実力(点の知識の確実な集合)でも合格圏内滑り込みはできるかと思いますが、目指すべきは、8割の骨太な実力です。それには、薄いものでもよいので、基本書を通読することが必要です。

なお、9割の実力(315点の実力)の人も世の中には若干存在するのでしょうが、私はその世界に到達しなかったので、どうすればそうなれるかはわかりません。まぁ、合格だけを考えるならそこまでは不要でしょう。300点台を叩きだせば気分はいいのでしょうが(私もどうせなら300点台に乗せたかった、とは思いますが…)、あくまで気分の問題です。300点の世界に到達できなかった奴の負け惜しみです(笑)来春、「9割の実力者」になった方は、ぜひその方法をご教授ください(笑)

イメージは、こんな感じです。超上位合格を狙う方を除いて、「8割の実力者」となり確実な合格を目指してください。

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4 コメント

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短答苦手意識 (manman)
2010-09-09 23:22:57
原先生

こんにちは。
横浜で特訓講座を5月から受講しています。本年は、刑事系の短答で失敗(というより実力)して、2点差で短答落ちでした。
昨年からの答練も含め、短答刑事系がどうしても時間が足らなくなり、点数も伸びません。
結局は実力不足なのでしょうが、このような私にも時間との闘いに負けない対策が果たしてあるのでしょうか。法務省発表では、来年は短答刑事系の問題数が40~50問となっているため、余計に心配しております。
レベルの低い質問で恐縮です。
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manmanさん (はら)
2010-09-11 04:42:08
ご受講ありがとうございます!

短答・刑事の時間が足りない、というのはよく受ける相談です。

短答の刑事の出題パターンは、概ね以下の3通りです。

①条文知識

②判例の結論を問う問題

③論理問題(見解にあてはめる問題)

それぞれのコツは以下の通りです。

①これは他の科目と同じ。最もスピーディーに解ける。ただ、刑事はこのタイプが他の科目に比べて少ない。

②ここが時間を使う原因になりやすい。特に刑法に関してですが、まず事案概要が他の科目よりも長い。また、(一般的に言って)普段の勉強の時、「多くの判例」につき、「結論を意識して読む」ということをしないのです。で、考えてしまう。それが時間の浪費になりやすいのです。学説知識があると、さらに混乱してします。

対処法としては、多くの判例につき、「事案の概要」「結論」を意識して読む、そして、そのストックをしておくことです。素材としては、受験界ではマイナーな位置付けですが、「基本判例5・刑法総論」「同・6刑法各論」(法学書院)が優れていると思います。ここを考えることなく、さっと判断できるようになれば、時間の短縮になります。

次に、③です。これは刑事系の特有の問題パターンです。対処法としては、「代表的な学説」と「各説ごとに結論の分かれる事例」をあらかじめストックしておくことです。中止犯の減免根拠につきいかなる見解があったか、結論の分かれる事例はどういうものがあったか、というのをストックしておきます。そうすると速くなります。それができるようにするには、基本書を読み込むこと、あるいは、実はこの部分は予備校本でのストックが適しているかと思います。

総じて刑事系の短答対策のポイントは、「判例と学説の峻別」にあります。「自説として押さえている学説からの帰結」と「うっすらと頭にある判例の知識」で迷ってしまうのですよね。ここをしっかりと区別できるようになるとスピードアップします。
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短答刑事系 (manman)
2010-09-11 08:16:06
原先生

お答えありがとうございます。
私は、百選(特に総論)はあまり馴染めないため、それに代わるものを求めておりました。
ご教示頂いた「基本判例 刑法」ですが、少々古くなっているようですが、2006年以降の判例は他のもので補うこととすればいいかと思うので、早速始めてみます。

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Unknown (はら)
2010-09-11 13:03:40
私も刑法の百選はなじめませんでした。事案の概要の書き方が好きではなかったですね。

新しい判例は、山口「新判例から見た刑法」(有斐閣)で補うといいのではないかと思います。
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