原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【2015答案力養成答練】添削実感(民訴1)

2015-06-17 | 講義関連(講義関連・講義補足など)

【第1問】

 

<小問1>

 

・前段につき,本件では「遺言無効の訴えにより現在の紛争を抜本的に解決可能」としてよいでしょうが,具体的な事案で常にそう言えるわけではないことは,必ず確認してください。この点は,講義で力を入れてお話しした点です。

 

・後段については,即時確定の利益がないことをいかに説得的に論ずるかが重要。まず,民法985Ⅰは遺言は遺言者志望の時から効力を生ずると定め,また,民法1022,1023はいつでも撤回可能であると定めます。これら民法の条文を引用して,即時確定の利益がないことを論証します。民法の条文の引用こそ大事。これができている答案とそうでない答案とに分かれていました。

 

<小問2&小問3>

 

・小問2につき,参考答案は訴えの利益を肯定する立場で書かれていますが,判例は否定説に立っていますので,ここはしっかりと確認しましょう。何か特段の理由がなければ,結論は判例に即して決定するのが望ましいです。もっとも,ここは肯定説も十分に立つので,どちらの結論かで評価を分けることはしていません(私は)。

 

・小問2,小問3ともに,あてはめ勝負です。大阪空港事件の規範は皆さん出ている。その先,その要件の検討をいかに具体的にできたか否かで分かれていました。

 

【第2問】

 

<小問1>

 

・弁論主義の根拠として,事件の早期解決を挙げた答案がありましたが,不適切です。弁論主義を採用したから事件解決が早くなるというものではないでしょう。あくまでも私的自治です。

 

・「スピード違反」を間接事実とした答案があり,確かにそういう考え方も存するので誤りとまでは言えませんが,一般的見解とは言えず,おススメしません。間接事実は主要事実の存在を推認させる事実で,例えば,「100万円の弁済」が主要事実だとすると,「100万円の出金歴」が間接事実になります。「出金」→(推認)→「弁済」なわけです。では,「スピード違反」→(推認)→「過失」となるかというと,そうではなく,「スピード違反」=「過失」なわけです。だから,一般的には,「スピード違反」は,規範的評価(過失)を基礎づける「具体的事実」と言われています。

 

<小問2>

 

・論述の流れとしては,まず,間接事実であることの認定をして,その上で,では第2テーゼの対象は何か,主要事実に限定されるのか,間接事実も含むのか,という議論の順序になります。間接事実であることの認定が欠落している答案が多かったです。

 


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