原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【2015答案力養成答練】憲法2(添削実感)

2015-04-29 | 講義関連(講義関連・講義補足など)
司法試験委員会に倣って書くことにしました。講義で既に述べている点は割愛します。なお,LIVE受講生以外は,答練が終わってから読んでください。

【総論】

・権利保障→制約→審査基準定立→あてはめ,という基本的な枠組みは総じてよくできていた。

・ナンバリングは,「第1」→「1」→「(1)」→「ア」→「(ア)」が正しい。誤っている答案が多かった。

・空行を作っている答案が多々あった。特定答案にされるおそれがあるから,空行を作ってはいけない。

・総じて,あてはめが不十分であった。例えば,目的手段審査で目的の必要不可欠性/重要性を検討するにあたっては,なぜ必要不可欠/重要といえるのか,説明しなくてはいけない。

【第1問】

・目的手段審査で考察する答案があった。間違いとは言えないが,目的手段審査は,一般的には法令違憲の検討に用いる基準である。本問は,泉佐野の基準が参考にされるべき事案であるから,やはり泉佐野を意識した基準を立てたい。なお,泉佐野の基準はかなり厳格な基準と言える。そのように厳格な基準を導くにあたっては,集会の自由の重要性を十分に述べておかなくてはいけない。

・明確性の原則について論じる答案があった。間違いではないが,平成23年採点実感には,「法文の「明確性」を観念的・一般的に論じる答案が,かなり見受けられた。本件の法律の規定は,個人情報保護法や個人情報保護条例に一般に見られる規定である。常識に照らし合わせて自らの理論・主張を省みるという勉強態度も,実務家を目指す者の試験である以上,必要と思われる。」とある。本件でも,「一般的に見られる規定」の域を出ないから,論じる必要性は低い。一般論として,明確性なり過度広汎なりを論ずるのは,徳島公安条例や広島暴走族など刑罰を伴う場合か。

【第2問】

・規制目的二分論を所与のものとして論ずる答案が目立った。経済的自由と言ったら二分論と教えている基礎・入門講座があると思われ,その弊害と言える。はっきり言って,そのような教え方は有害であり,司法試験では失点を導く。平成26年出題趣旨には,こうある。よく噛みしめてほしい。「問題となっている条例の規制目的は複合的である。したがって,その違憲性(合憲性)判断の根幹は,規制目的をいわゆる消極目的と見るのか,それとも積極的と見るのかという点にあるのではない。規制目的が複合的である場合に,その違憲性(合憲性)をどのように判断するのかという点にある。したがって,単純に,原告側主張で消極目的の条例とし,被告側主張で積極目的の条例として論じることは,問題の核心を見誤っている。その意味において,本年の問題では,単純に規制目的二分論を用いて答えを導き出すことはできない。近時,登記手続代理業務を司法書士以外の者に禁止している司法書士法の合憲性をめぐる判決(最三判平成12年2月8日刑集54巻2号1頁)や,農業災害補償法が定める農業共済組合への「当然加入制」の合憲性をめぐる判決(最三判平成17年4月26日判例時報1898号54頁)のように,判例も規制目的二分論に言及することなく判断している。また,酒類販売業免許制をめぐる判決(最三判平成4年12月15日民集46巻9号2829頁)では,租税の適正かつ確実な賦課徴収という第三の目的の存在が示されてもいる。これらの判例も踏まえつつ,複合的な規制目的をめぐり,条例の違憲性(合憲性)を,どのような判断枠組みの下で,どのように判断するのかが問われている。」

・本件の目的を,「生活環境の保全」「公衆衛生の向上」とする答案があった。確かに,条例全体の目的はそうかもしれない。しかし,問題となっているのは,条例8Ⅰである。そして,条例8Ⅰの目的については,問題文に明記されている。①データ収集,②手数料の徴収である。見落としてはいけない。

・本件の目的を,①データ収集,②手数料の徴収と正しく理解していても,これを無理やり消極目的あるいは積極目的を認定する答案があった。既に述べた弊害の露呈した答案である。消極目的とも積極目的とも言えないであろう。試験に出るのは,まさにこういう事例である。


・法令違憲を論ずるに,司法事実を検討している答案があった。この点は,平成23年採点実感も指摘しているところである。曰く,次の通りである。「法令違憲を論ずるに際して,立法事実に照らして法令の規定がどうか,ということではなく,Xの個別事情をもって論ずる答案が目に付いた。これは,法令違憲と処分違憲とを混同しているものと考えられるが,両者を論じる際の考慮事由の差違をきちんと押さえる必要がある。」

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