原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

いくつかの閣議決定

2011-11-04 | 日記
ニュースサイトを見ていて,今日,いくつかの閣議決定があったようなので,ちょっと書きます。

1.「一部執行猶予」を盛り込む刑法改正案

現在,「実刑」か「全部執行猶予」のどちらかであるのを,その中間ともいうべき「一部執行猶予(一定期間服役させて残る期間の執行を猶予するもの)」の導入をする改正案。個人的には非常に良い改正案であると思います。現在,実刑か猶予かで,言うなれば天と地ほどの差があるわけです。この格差は大きすぎると個人的には思います。また,もっと問題なのが,猶予中の再犯。「懲役2年,執行猶予4年」の判決を受けた者が猶予期間中に再犯をし,「懲役1年6月」の実刑を受けると,ご存知のように前の猶予は取り消されて,「2年+1年6月=3年6月」の服役をすることになります。かなり長く服役する必要があります。それは自業自得だと言えばそれまでなのですが,この「長さ」が社会復帰の妨げの一因になって,再犯率を高めているように個人的には思います。そういう意味で,この改正案に私は賛成です。

2.社会貢献活動を義務化する構成保護法改正案

仮釈放中や保護観察付き猶予判決を受けた人に対して,社会貢献活動を義務化する改正案。ボランティアの義務化の是非については意見が分かれるかと思いますが(この点だけを問題にすると大学入試小論文ですね。このテーマ,よく扱いました:笑),更生のきっかけを提供する機会ができるという意味で,よい改正案だと思います。被疑者・被告人と言われる人に多く会ってみて,犯罪に手を染めてしまったのは,もちろん彼ら・彼女らに第一義的な責任があるのだけど,彼ら・彼女らが独力では何ともできない「環境」にも大いに原因があると感じました。一言で言ってしまうと,「守るものがない」とでもいいましょうか。何か社会から必要とされる,歓迎される接点のようなものがあって,それが自制力・抑止力になれば,(再び)犯罪に手を染める人は減っていくのではないかと思うのです。私にもできるのであれば,何かそういう活動をしてみたいと思います。

3.「貸与制」移行の裁判所法改正

いわずもがな,これ賛成することはできません。「給与制」維持という意見がありますが,復興財源の確保等の事情も相まって,それは現実的な方策ではないと思います。かねてよりこのブログで私の意見を表明していますが,無給とする以上,修習は任意参加制にすべきであると思います。それなら,無給でも筋が通る。「青二才が何を言う!」と叱られそうですが,そう思います。修習で得るもの,学ぶものは多いです。実務修習先の先輩法曹,研修所の教官は,皆,熱意を持って指導してくださいます。私自身,非常にありがたいことだと思っています。ただ,多くのLS生は借金をしてLSに通い,受験期間中は全うな稼ぎなどなく,それも合格率が低迷して受験期間は長期化しているのだから,LS開設にあたって議論された時の想定よりも法曹になるまでに時間を要することになっています。特に,家庭のある受験生には死活問題です。そうした人が多く法曹になっていけるように,それが法曹界の利益である,ひいては国家的利益である,という当初の理念はどこへ行ってしまったのか。法曹になるために,リスクを負うことはそれは当然だが,過大なリスクを,それもそのリスクを受験生(法曹志望者)のみに追わせていないか。給費制ならば話は別だが,無給とするなら,修習を強制することは正当化されない。

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2 コメント

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はじめまして (kumi)
2011-11-06 18:06:09
受験期間中、先生にはスタ短の解説講義でお世話になり、またブログでも勉強させていただきました。お陰様で、今年修習生になることができました。

先生は修習自体は存続させるべきとお考えのようですが、私はそれ自体廃止すべきであると思います。司法試験で法的能力は担保されているはずで、もしそうでないなら司法試験が何のために存在するのかわからなくなってしまいます。

貸与移行はもう確実ですが、奨学金の返済などを含め先のことを考えると、悠長に1年も修習を行っていいのかというのが、率直に感じるところです。本当にやめてもらいたいところです。修習期間は1年ですが、司法試験合格から数えると1年数ヵ月も制約されることになります。

先生を含む実状を理解してくださる方に、このことの議論をしていただいたいです。実状を理解できないであろう人たちが法曹養成フォーラムなどの場で議論をし、それに振り回されることが疑問であり不満です。

最後になりますが、スタ短の先生の解説講義は秀逸でした。ブログも含め、御指導くださり本当にありがとうございました。弁護士としても講師としても、御活躍される先生といつかどこかでお会いできたら光栄です。
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Unknown (はら)
2011-11-07 19:10:13
kumiさんのおっしゃること,ごもっともであると思います。特に,65期以降は,64期までと状況も違いますから。

司法試験で,基礎法学の能力は一定以上,担保されます。一方,臨床法学の能力は,司法試験では担保されないのですね。その意味で,司法試験に合格したら即実務家になれるかというと,それは少し疑問です(修習に行けば,ご理解されると思います)。

しかし,そうであっても,1年(司法試験受験日から起算すると1年7か月,合格発表日から起算すると1年3か月)も「無給で」「先延ばし」というのは,受験生・合格者の身になって考えてみると,かなり厳しい。

これから法律家を目指す人たちのためにも,「実情」を届けなくてはいけないな,と強く思います。

こちらこそ,いつか法律家としてお会いする日を楽しみにしております!事前課題,頑張ってくださいね!
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