ティコ・ブラーエ


パパとママの視点から
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アドルフ・ロース

2009-12-18 | パパ
今日は20世紀のモダニズム建築への道を切り開いた19世紀末のウィーンの建築家アドルフ・ロースを紹介。



当時のヨーロッパでは世界的な恐慌と忍び寄る戦争の予感が世紀末というただならぬ時間の中で増幅され、退廃的な芸術が大衆に嗜好されていました。ウィーンでも、アール・ヌーヴォーに影響を受けたウィーン分離派(分離派とはアカデミーの教条的な芸術から分離して、前衛的に活動するグループのことです。)の中心人物グスタフ・クリムトらの官能的で装飾過剰な作品がその時代を象徴しているといえます。





アドルフ・ロースは当時の退廃的な日常に何か引っかかるものを感じながら生活をしていたようです。そして、彼は、その引っかかる何か(許せないもの)を養分にして、思想を深め、自身の思いを建築へと昇華させた。では、なにが許せなかったのか?その時代に漂うロココやバロックといった様式による装飾過剰に対してである。装飾それ自体は、言葉よりもはるか昔から人間が欲し行ってきた「ものを作る行為」の中で生まれてきたものであり、否定はしていない。彼には、工業化が進む時代に住宅の中を様式で飾り立てることが、時代錯誤に映るのだ。部屋の中に便利なものが入り込んでくる工業化の時代に、様式に縛られて生きる人間の矛盾を暴き立てたのがアドルフ・ロースだった。
彼は言っている
「装飾は犯罪」だと。様式を装飾にまで一般化して捕らえたところに、彼のモダニズムへ導く普遍性があったと思います。
アドルフ・ロースの魅力は単に装飾を排除したというだけではおさまらないところにあると思う。彼の有名な作品「ミュラー邸」の外側と内側を見てみましょう。





外観は装飾を排した白いキューブに、飾りのない窓をランダムに配置したシンプルな構成になっていますが、内観はレベル差のある複数の部屋を階段でつなぎワンルーム化することで洞窟のように見える。
つまり、彼の建築の様相は、「外側」と「内側」で反転している。都市に対して、装飾によって騒ぎ立てず(周りには装飾的な建物が多いので、逆に強いメッセージ性を帯びる)、人が住まう内側には、人間を都市という社会性から開放し、個人として休息を与える温もりある場所としたのである。
都市の退廃的な空気に対して、諦めの境地に立って、自身を閉ざすことが、彼の装飾を排するファサードを発生させ、怒りを内に秘めた「語る沈黙」が豊かな内部空間を生み出したとも考えられる。

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