ティコ・ブラーエ


パパとママの視点から
子供と建築探訪
こどものおやつから考える体にやさしいレシピ

2010-01-11 | パパ
壁というものがある。物理的に空間を二つに分け隔てたり、概念的に人間の思想を分断するイデオロギーになったりする。身体と精神が同じ環境にあることを欲する人間にとって、この二つは互いが互いを生み出す関係を作り出す。
ある人間を排除したいと考えれば、そこに壁を立てるし、もともと壁が立っていれば、出会いの契機はなく、考えが行き交う場は生まれない。
しかし、壁はただ分断するためだけに聳え立っているわけではなく、人間にその向こう側にある何かを強く意識させるシンボルとなる。それは、自己を強く意識させる鏡であるともいえる。

ベルリンの壁は、まさに資本主義と社会主義という巨大な二つのイデオロギーを分断する人為的に作られた物理的な壁であり、冷戦時代を象徴する概念的な壁でもあった。そして、壁により分断された人間は、日々、壁に影響を受けながら生きていくことになる。











当時の西側の美術界では、大量生産・大量消費社会を自身の原風景として、肯定的もしくは批判的に表現するポップ・アートが全盛期であった。それは、経済的にも文化的にもアメリカが世界を席巻する時代であったともいえる。

ロイ・リキテンスタイン
 

アンディ・ウォーホル
 


旧ソ連を中心とする東側では、人民を先導し、思想による国家統一を目指す社会主義リアリズムが国家が許可する唯一の芸術表現であった。

タヒル・サラホフ 「朝の列車」


ところがソビエトでは、1960年代から、地下に潜んでいた反体制の現代美術家らは、ネオダダやポップ・アートなどの影響を受けて、政治家の肖像や共産主義プロパガンダなどを軽やかな表現で批判した。これが後に「ソッツ・アート」と呼ばれる。この芸術活動は、壁により生み出された芸術であり、壁を打ち破ることを目的とするが、壁の崩壊は同時に、自身の活動の退場を促すことになる。

イリヤ・カバコフの「自分のアパートから空へ飛び去った男」 旧ソ連の閉塞状況やそこからの脱出願望を示していると言われているそうです。


このように、2つの領域を分断した壁は、向こう側を強く意識させながら、最後には自壊することになる。そして、それとともに、壁が創造した文化まで、どこかに流れ去っていくという皮肉さを含んでいる。
流れ去った文化を救い上げることができるのは、個々の人間の記憶に残る壁の存在においてだけである。





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