MAYURI SHOJI
体当たりリポーターの取材日記
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庄司麻由里のカッパすいすい

ブログ プロフィール インタビュー
Weblog?/?2020年04月27日 14時11分38秒
岡江久美子さんの想い出

岡江久美子さんの想い出
庄司麻由里《はなまるアナ》

1996年の秋に、TBSで「はなまるマーケット」と言う番組が始まりました。
新番組二日目を担当することになった私に与えられたテーマは「ママチャリ」で、30分の特集でした。ワイドショー全盛期だったあのとき、「いきなりママチャリで30分とは、ちょっとのんきな番組だな」と思ったのを覚えています。
しかしそれまでも、情報番組を数多くこなしていた私は、今までと同じように、4日間取材ロケをし、ディレクターと打ち合わせをして、準備万端で本番を迎えたつもりでした。
司会は初めてという岡江久美子さん、薬丸裕英さんと、本番前に簡単にご挨拶をして、「どのような司会をなさるのかな?きっと、やんちゃな薬丸さんを、しっとりとした岡江さんが落ち着いてたしなめたりして、進行していくのかな?」などと想像しながら、いざ本番!

順調に生放送が始まり、VTRの内容を受けてスタジオで、当時まだ珍しかった電動自転車を前に「いかに素晴らしい性能か」「いかに便利か」を、ここからしばらく説明しようとしたその時です。
岡江さんがこう言ったのです。

「あ、その自転車知ってる!電池が切れるとペダルが重たくなっちゃって使いにくいんだよね~!いらないかな~!!」

・・・その時の私の驚愕をどう表したらいいでしょう。
「えーーーっ!?
使いにくいって~~!?いらないって~~~!?
スタジオには自転車メーカーの人も来ているし、生放送なのに、どうしよう・・・」
狼狽した私があわてて、スタジオに持ち込んだもう一台の自転車を押し出し「では、こちらはいかがですか?有名ブランドの超高級自転車なんですよ!お値段は28万円!すごいでしょ~」と、話題を変えたとたん、今度は薬丸さんが「どうしてそんなに高いんですか?特殊な金属でも使っているんですか?それともただのブランド料?」と矢継ぎ早の質問攻め。そのような質問をされるとは思ってもいなかった私は答えることができず、「さぁ・・・??ねぇ・・・??」と、ひきつった笑顔でごまかすといった、なんとも情けないことになってしまいました。

放送終了後、私はちょっとプリプリしていました。
「ふたりとも、ひどいよ~!
段取りも違うし、台本にない質問ばっかりしてさ・・・。」
だって、それまでの情報番組では、リポーターの話に司会者は「まぁ!いいですね~」「ほしいですね~」「おいしいですね~」と、褒め合うのが当たり前でしたから・・・・。

ところが、スタッフルームに戻った私は、ある光景を目にしたのです。それは広いスタッフルーム中の何十台という電話が鳴り響き、全スタッフが対応している姿でした。
その電話は視聴者からで、内容は
「岡江さん最高!私もかねがね電動自転車は電池が切れるとペダルが重たくなって使いにくいと思っていました、よくぞズバッと言ってくれた、スッキリした!」とか
「私も薬丸さんと同じところに疑問を持ちました。あの高級自転車のどこが28万円する理由なのか知りたい」といった、「岡江さん薬丸さんのコメントは正直で楽しい」という絶賛の声ばかりでした。
それを見て、石川眞実プロデューサーはにんまり。
「これでいい、うちの番組はこれでいきます。岡江さん薬丸さんの二人は視聴者と同じ立場で、いいと思ったらいい、悪いと思ったら悪いと、正直な感想を言ってください。また原則、事前に打ち合わせはせずに、疑問に思ったらなんでもその場で質問してください。」と。
そして私を振り返り、「はなまるアナは、二人から何を聞かれても答えられるように。また、二人が疑問を持った時は、視聴者が疑問を持った時だから、すぐその場で答えること。『それは後程説明します』は禁句。そのためには本番で構成を変えてもいいから」と・・・・。

この石川プロデューサーからの至上命令により、私はロケの間、カメラが回っていない時も取材先の人たちを質問攻めにするようになりました。
本番の前日はスタッフルームで、えんえん夜中まで専門書と首ったけ。学生の時の試験勉強よろしく、「岡江さんはここに興味を持つかもしれない、薬丸さんは値段にシビアだからこれ調べておこう」とヤマまでかけて、もう必死・・・!
そして本番の朝は、ほとんど徹夜で、それこそ頭を振ったら全部忘れてしまうのではないかと思うほど緊張して、アナ台に立ったものです。

ところが、岡江さんは私たちの想像を遙かに超える発想力で、とんでもない質問やコメントをしてくるんです。
お風呂のカビを取る掃除方法を説明中
「あれ?かびって漢字でどう書くんだったっけ?」には、答えることができましたが、時には答えられない質問も・・・。

「卵」がテーマの時には「ねぇねぇ、にわとりって卵を産むとき痛いの?」・・・!?

はなまるカフェにゲスト出演されたある女優さんが「ハワイに行って、イルカと話ができたんです」とお話しされたときは「へーっ!?ハワイのイルカって、やっぱり英語で話すの?」・・・!?

トイレの匂いは男性の飛び散りのせい、と説明して、私が「男性も座ってしてほしいですよね」と言ったら「そうじゃないならジョウロみたいなのを付けるというのはどうかしら?」・・・!?

大腸の内視鏡検査の体験リポートをしたときは「庄司さん、ヌードなんて目じゃないね!内臓まで見せちゃうんだから!!」と、讃えて(?)くれました。

こんなこともありました。
「はなまるマーケット」の本が出版されその中に、はなまるアナのプロフィールのページがあったのですが、私は生年月日を載せていませんでした。その日の生放送のオープニングで岡江さんは
「あれ?なんで庄司さんだけ生年月日が載っていないのかしら?あの人きっと100年くらい生きているんじゃない?妖怪なのかも!!」・・・!

その日私は担当ではなく、家でテレビを見ていたのですが、ひっくり返りました!大笑いして、そして自分の年齢を隠す愚かさに気がつきました。
岡江さんの正直な何気ない一言が、時として大切な物事の本質を気づかせてくれたのです。

番組が始まって10年くらい経ったころでしょうか?
新型電動自転車を取材したとき、開発担当者の方からこんなお話を伺いました。
「実はこの新型の電動自転車は、岡江さんのひとことがきっかけで開発が始まったんですよ。以前、はなまるさんで電動自転車を取り上げたとき、岡江さんが『これ電池が切れるとペダルが重たくなって不便』っておっしゃったでしょ。それで気がついたんです。そうだったのかって。だから今度の機種は、電池が切れてもペダルが重たくならないんですよ!」

天真爛漫で、「疑問が浮かぶと、頭で考える前につい口に出ちゃうのよね」とおっしゃっていた岡江さん。だけどそれがちっとも人を傷つけるものではなくて、誰もが好きにならずにはいられなかった岡江さん。

17年半続いた番組が終わると決まった頃、飲み会から帰るとき、同じ方向だからと二人で乗ったタクシーの中で、少し酔った岡江さんが「私はいいんだけど、はなまるアナの人達の仕事が無くなってしまうのが心配なの・・・。なんとか次の番組でも仕事を続けられないかしらね・・・」と呟いて、私は胸が熱くなりました。

岡江さん、どうして逝ってしまわれたの・・・?

 

 


comment ( 7 ) | Trackback ( 0 )

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コメント
 
 
 
Unknown (sakura)
2020-05-02 14:08:26
はなまるマーケットの大ファンでした。そして庄司さんと同い年の私、庄司さんのコーナーも大好きで当時からブログも読ませて頂いています。岡江さんの訃報。大変驚きました。そしてはなまるアナの方たちは計り知れないだろうとすぐに皆さんのブログを探しました。
素晴らしい岡江さんとの思い出。プライベートで見せる人柄の素晴らしさに胸を打たれました。機会があったらまた書いてくださいね。これからも庄司さんのご活躍を楽しみにしています。 
 
 
 
sakuraさん、ありがとうございます。 (庄司麻由里)
2020-05-13 12:25:56
sakura様

コメントありがとうございます。
そんな風に言ってくださって感謝いたします。
これからも、岡江さんのこと、「はなまるマーケット」のことを、覚えていてくださいませ・・・・。
お願いいたします。
 
 
 
想い出話、ありがとうございます (あっこ)
2020-05-19 13:12:46
岡江久美子さんの心温まる想い出話を、ありがとうございます。不謹慎ですが、思わず笑ってしまいました。同時に、三十数年前、東京に行った時、大和田獏さんをお見かけし、ふつうの人なんだと失礼にも思ったことを、思い出しました。きっとご夫婦とも、ふつうの感覚を大事にされていたと思います。岡江さんのやさしさにも、胸をうたれました。本当にすてきなお話をありがとうございました。麻由里さん、コロナとの闘いはまだまだ続きますが、どうか、お身体に気を付けてくださいね。
 
 
 
追伸 (あっこ)
2020-05-19 14:06:03
何回も、申し訳ございません。
今、こんな時だからこそ、「はなまるマーケット」のような番組が必要なのだと思います。この新型コロナウイルスは、まだまだ実態が解明されておらず、専門家の方達も大変だと思います。ただ、私は、自分勝手かもしれませんが、現時点で、家庭でこんな事に気をつければいいとか、こういうものを使えばいいとか、私たちの生活にあった情報がほしいのです。「はなまるマーケット」は、私たちの感覚にあった番組だったと思います。岡江久美子さんのようにふつうの感覚を大事にされていた司会者と、麻由里さんのように一生懸命調べて、わかりやすく説明してくださる方たちが、今のテレビ番組に少ないように思います。政府に、「岡江久美子さんを見習って」と、言いたいです。
ぐーたら主婦が生意気なこと書きまして、申し訳ありません。岡江久美子に、元気に戻ってきてほしかったです。
 
 
 
たびたび、すみません (あっこ)
2020-05-19 14:46:05
岡江久美子さんを、呼び捨てにしていまい、申し訳ありません。
 
 
 
あっこさん、ありがとうございます (庄司麻由里)
2020-05-21 12:09:33
あっこ様

コメントありがとうございます。
そんな風に言っていただいて、ありがとうございます。
はい、「はなまるマーケット」が始まるとき
はなまるアナのオーディションがあったのですが、
そのときの応募条件のひとつに「女性は、主婦であること」と言うのがありました。
生活者として、そして主婦感覚を何より大切にした番組だったと思います。
ですから、視聴者の皆さんの支持をいただけたのではないでしょうか・・・?
 
 
 
写真の掛け声 (らじおじさん)
2020-07-31 17:35:23
「1つだけ、年上戦隊 まゆりんさん」=庄司さん。

「おかえの笑顔=おかえのえがお」で、
美帆さんから も
ずっと、慕われてください。
 
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