限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

百論簇出:(第79回目)『アムステルダムでカレル・ヴァン・ウォルフレン氏を訪問(1)』

2010-09-10 12:57:42 | 日記
先日(9月8日)からオランダのアムステルダムに着ている。目的は、日本の政治に対する、辛口の批評で有名なカレル・ヴァン・ウォルフレン氏に会うためである。

私は以前から彼の本のいくつかを読んでその鋭い指摘に共鳴する点が多かった。日本の政治・経済を軸として、日本文明全般にわたる該博な知識と、本質を見抜く眼力、それを的確に表現する筆力、いずれをとっても余人の追随を許さない。カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、日本ではその思想から『改革主義者』(revisionist)と呼ばれているが、必ずしもそのネーミングは彼の主張を包括するものではない。また、彼もそのネーミングが気に入っていないらしい。


【出典】http://www.wolferen.co

【Photographer】 Yvonne Witte ( www.yvonnewitte.nl)

しかしなぜ、唐突にカレル・ヴァン・ウォルフレン氏を訪問したか、という点であるが:
私はこの2010年の後期に英語の授業 Craftsmanship in Japanese Society(日本の工芸技術と社会)をする。
 Chapter1: Ink brush, Inkstick, Inkstone Paper and Calligraphy
 Chapter2: Sculpture, Furniture, Netsuke and Za (Artisan Guilds)
 Chapter3: Porcelain, Lacquerware, Makie and Korean Craftsmanship
 Chapter4: Mining, Metallurgy, Sword, Armor and Samurai
 Chapter5: Painting, Ukiyo-e, and Modern Visual Arts (Manga, Animation)
 Chapter6: Engineering (Architecture, Civil Engineering, Robot) and Modern Industry
 Chapter7: Cooking, Liquor, Textile and Festival
 Chapter8: Performing Arts, Folk Crafts, Narrative Arts and Lifestyle
 Chapter9: Japan's Problems (Views and Opinions of Foreigners)
 Chapter10: People 1 (Before Meiji)
 Chapter11: People 2 (After Meiji)

全体のテーマは工芸技術であるので、筆、墨、書、陶芸、彫金、民芸などの『物』についての説明が主体になる。しかし、私の問題意識にあるのが、こういったすばらしい工芸技術を日本人がなぜ今失いつつあるのか?さらに言うと、こういった美的センスを持ちながらなぜ、町や村が醜い景観をさらしているのか?という現代日本社会のありかたを議論していきたいと考えている。そのためには、日本人自体より、多少その論理に無理や誤解はあるものの、外国人の観点から日本社会を見た意見を虚心坦懐に耳を傾ける必要があると考えた。それで、授業の一回を

  Chapter 9 : Japan's Problems (Views and Opinions of Foreigners)

というテーマにした。そこに登場して頂く論客(本物ではなく本)は以下の豪華な顔ぶれをそろえている。

○Townsend Harris (1804 - 1878)
   "The Complete Journal of Townsend Harris " (1930) (Mario Emilio Cosenza, Ph.D. )

○George Sansom (1883 - 1965)
  "The Western World and Japan" (1949)
(A Study in the Interaction of European and Asiatic Cultures)

○Karel van Wolferen (1941 - )
  "The False Realities Of A Politicized Society" (1994)
  In Japanese :『人間を幸福にしない日本というシステム』
  "To the Japanese Intellectuals" (1995)
   In Japanese :『日本の知識人へ』

○Alex Kerr (1952 - )
   "Dogs and Demons" (2002)
  (Tale from the Dark Side of Modern Japan)

○Miyamoto Masao(宮本政於, 1948 - 1999)
  "Straitjacket Society" (1995)
  (An Insider's Irreverent View of Bureaucratic)

この中で、最後の宮本政於氏は日本人であるが、その鋭い指摘は、日本人の枠内に収まらないのでここに取り上げた次第。

カレル・ヴァン・ウォルフレン氏以外の本は、英語の本が存在しているのでクラスの中の留学生にとっても理解できる。しかしカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の本はどう探しても日本語のものしかない。それで、直接EMAILで問い合わせたところ、その本は日本の読者向けで、英語では出版していないが、もしアムステルダムに来るなら、時間を取って話をすることは可能であるとの、非常にポジティブな返事を頂いた。さらには、自分の家に泊まっていったらどうだ、とのありがたい申し出も頂いたので、通常の日本人感覚では、『初対面にも拘わらず厚かましい』とは、思ったものの生涯に二度とない機会かもしれないと思って、昨晩アムステルダム郊外にあるカレル・ヴァン・ウォルフレン氏のご自宅に来た、という次第だ。

続く。。。
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