自然界には 1/f 揺らぎという現象がある。例えば、扇風機の風は、常に一定の強さ、あるいは強弱の機械的なリズムを持っている。しかし、屋外の風は、そよ風にしろ、台風の風にしろ風力は常に一定ではない。風だけでなく、自然界の振動は、厳密な周期で繰り返す機械的な規則性を嫌う。ここで 1/f と名称は、専門的になるが、『パワー(スペクトル密度)が周波数 f に反比例する』、つまり 1/f に比例することに由来する。(Wikipedia)
【参照】Wikipedia 『1/fゆらぎ』
人間も自然界の生物の一種であるので、このような 1/f ゆらぎ(リズム)を『自然』と感じ、安らぎを覚える。この1/f ゆらぎは単に振動だけではなく、人間の感覚全て(視覚や聴覚)に共通であるように私には思える。
ところで、私の博士論文は人間の『音声(母音)の発生原理』の究明であった。この研究をしている時に不思議な現象を発見した。そもそも人の音(母音)というのは、喉にある声帯を空気が通るときに作られる。声帯は、薄い膜で、空気が通る隙間はわずか1ミリしかない。冬に、隙間風がヒューという音を立てるのと同様の原理で、声帯の狭い隙間を空気が通ると空気の渦ができ、それが声となる。
成人男性の『え』の音をグラフにして示す。(縦軸は音圧、横軸は時間)
この図で、下矢印で示した時刻から次の矢印の時刻までが一波長となる。成人男性の場合、一秒間にこのような波形が125回発生する。(声帯の振動数 = 基本周波数)
【参照】『Q 050:男性の声,女性の声,子供の声は,聞けば区別がつくのですが,具体的にはどこが異なっているのでしょうか?』
さて、この図を詳細にみると分かるが、一波長ごとわずかではあるが、波形が異なっている。つまり、本来の人間の声は機械的に作られたものではないので、ゆらぎがあるのは当然だともいえる。ここで、ゆらぎの無い声というのはどういうものなのか、考えてみてほしい。私は、この問いに対して、実験してみた。実際に音声の一波長分だけを取り出して、コピーを繰り返して音声ファイルを作って、鳴らしてみた。そうすると、聞こえてきたのは、元の『え』の音ではなく、なんとブザーのような『ブー』という音だったのである!つまり、ゆらぎの無い音声は人間の耳は、声と認知しないのだ。他の音声(『あ』『お』)でも実験してみたが、結果は同じだった。このことから私は、人間の感覚は自然なゆらぎをが必要である、と考えるようになった。
この考えを確認する出来事があった。
数年まえのこと、ドイツに旅行したが、その時南ドイツの都市、アウグスブルクを訪問した。アウグスブルクは近世において、大富豪のフッガー家が根拠地としたように、南部ドイツの中心都市であった。交易の中心都市として莫大な富を蓄えた象徴が市庁舎の3階の『黄金の広間』(Goldener Saal)に見ることができる。この広間は広さ、高さとも他では見られないほど壮大であるだけでなく、天井には黄金をふんだんに使った浮彫があり豪華の一言につきる。惜しくも、この広間は第二次世界大戦に連合軍の爆撃で破壊されたが、最近(1996年)元通り再建された。
観光案内書には、その豪華さは必見、とあったので非常に期待していた。しかし、この部屋に入った途端に、私は異様な感じがした。黄金の眩さに圧倒されたのではなく、木の部材が異様に直線的で、かつ、精密機械のように一分の隙間もゆがみもなく組み合わせられていたからだ。確かに、部材や色合いや金箔など、元通りに再現されたかもしれないが、元の部材にあったに違いない、ゆらぎが見当たらないのだ。元の部材は職人がのこぎりや鉋をかけたので、完全な直線でもなければ、平面でもなかったはずだ。このゆらぎが、見る人に完成度の高さを印象づけると共に、安らぎを与えた。しかし、再建されたものは、部材が電気のこぎりや電気鉋で切出されたため、全くゆらぎがない。
私は、思わずため息をついた。『なんと、もったいない!多大な手間と金をかけて再建されたにも拘らず、近代的な精密さのために無機質になり、人に感動を与えないものが出来上がってしまった!』
どうすれば良かったのだろうか?
『黄金の広間』の豪華な天井の装飾を見ながら暫く考えているとあるアイデアが浮かんできた。現在の職人は電動こぎりや電動鉋を使って作業しているが、、それをコンピュータ制御すればよいではないか!電動部分にコンピュータ制御を加えて、『1/fゆらぎ』をわざと、のこぎりや鉋に与えればよいではないか。直線に切らずにわざと凸凹をつけるのだ。それも、あたか職人が作業したかのような『自然な凸凹』をつけるのだ。
私の目には、そういった機械で部材が加工され、組み立てられた、情感豊かな『黄金の広間』がありありと見えたきた。
私のアイデアの『1/f 揺らぎ』をもった道具は大工道具に限らず、墓石を加工するときの石屋の道具にも適用できるし、塀や内装の壁塗りにも適用できる。これらを一括して『1/f 揺らぎをもつ電動制御の工具』として特許申請できると私には思えるのだが。。。
【参照】Wikipedia 『1/fゆらぎ』
人間も自然界の生物の一種であるので、このような 1/f ゆらぎ(リズム)を『自然』と感じ、安らぎを覚える。この1/f ゆらぎは単に振動だけではなく、人間の感覚全て(視覚や聴覚)に共通であるように私には思える。
ところで、私の博士論文は人間の『音声(母音)の発生原理』の究明であった。この研究をしている時に不思議な現象を発見した。そもそも人の音(母音)というのは、喉にある声帯を空気が通るときに作られる。声帯は、薄い膜で、空気が通る隙間はわずか1ミリしかない。冬に、隙間風がヒューという音を立てるのと同様の原理で、声帯の狭い隙間を空気が通ると空気の渦ができ、それが声となる。
成人男性の『え』の音をグラフにして示す。(縦軸は音圧、横軸は時間)
この図で、下矢印で示した時刻から次の矢印の時刻までが一波長となる。成人男性の場合、一秒間にこのような波形が125回発生する。(声帯の振動数 = 基本周波数)
【参照】『Q 050:男性の声,女性の声,子供の声は,聞けば区別がつくのですが,具体的にはどこが異なっているのでしょうか?』
さて、この図を詳細にみると分かるが、一波長ごとわずかではあるが、波形が異なっている。つまり、本来の人間の声は機械的に作られたものではないので、ゆらぎがあるのは当然だともいえる。ここで、ゆらぎの無い声というのはどういうものなのか、考えてみてほしい。私は、この問いに対して、実験してみた。実際に音声の一波長分だけを取り出して、コピーを繰り返して音声ファイルを作って、鳴らしてみた。そうすると、聞こえてきたのは、元の『え』の音ではなく、なんとブザーのような『ブー』という音だったのである!つまり、ゆらぎの無い音声は人間の耳は、声と認知しないのだ。他の音声(『あ』『お』)でも実験してみたが、結果は同じだった。このことから私は、人間の感覚は自然なゆらぎをが必要である、と考えるようになった。
この考えを確認する出来事があった。
数年まえのこと、ドイツに旅行したが、その時南ドイツの都市、アウグスブルクを訪問した。アウグスブルクは近世において、大富豪のフッガー家が根拠地としたように、南部ドイツの中心都市であった。交易の中心都市として莫大な富を蓄えた象徴が市庁舎の3階の『黄金の広間』(Goldener Saal)に見ることができる。この広間は広さ、高さとも他では見られないほど壮大であるだけでなく、天井には黄金をふんだんに使った浮彫があり豪華の一言につきる。惜しくも、この広間は第二次世界大戦に連合軍の爆撃で破壊されたが、最近(1996年)元通り再建された。
観光案内書には、その豪華さは必見、とあったので非常に期待していた。しかし、この部屋に入った途端に、私は異様な感じがした。黄金の眩さに圧倒されたのではなく、木の部材が異様に直線的で、かつ、精密機械のように一分の隙間もゆがみもなく組み合わせられていたからだ。確かに、部材や色合いや金箔など、元通りに再現されたかもしれないが、元の部材にあったに違いない、ゆらぎが見当たらないのだ。元の部材は職人がのこぎりや鉋をかけたので、完全な直線でもなければ、平面でもなかったはずだ。このゆらぎが、見る人に完成度の高さを印象づけると共に、安らぎを与えた。しかし、再建されたものは、部材が電気のこぎりや電気鉋で切出されたため、全くゆらぎがない。
私は、思わずため息をついた。『なんと、もったいない!多大な手間と金をかけて再建されたにも拘らず、近代的な精密さのために無機質になり、人に感動を与えないものが出来上がってしまった!』
どうすれば良かったのだろうか?
『黄金の広間』の豪華な天井の装飾を見ながら暫く考えているとあるアイデアが浮かんできた。現在の職人は電動こぎりや電動鉋を使って作業しているが、、それをコンピュータ制御すればよいではないか!電動部分にコンピュータ制御を加えて、『1/fゆらぎ』をわざと、のこぎりや鉋に与えればよいではないか。直線に切らずにわざと凸凹をつけるのだ。それも、あたか職人が作業したかのような『自然な凸凹』をつけるのだ。
私の目には、そういった機械で部材が加工され、組み立てられた、情感豊かな『黄金の広間』がありありと見えたきた。
私のアイデアの『1/f 揺らぎ』をもった道具は大工道具に限らず、墓石を加工するときの石屋の道具にも適用できるし、塀や内装の壁塗りにも適用できる。これらを一括して『1/f 揺らぎをもつ電動制御の工具』として特許申請できると私には思えるのだが。。。