以前、『日本人学生の英語のプレゼンテーションに関して』で書いたように、今学期
『Craftsmanship in Japanese Society』(邦題:日本の工芸技術と社会)
という英語の授業をした。テーマは、書道、彫刻、陶磁器、彫金、絵画、料理、落語、など、計11回の講義であった。
Chapter1: Ink brush, Inkstick, Inkstone, Paper and Calligraphy
Chapter2: Sculpture, Furniture, Folk Craft, Netsuke and Za (Artisan Guilds)
Chapter3: Porcelain, Lacquer Ware, Makie and Korean Craftsmanship
Chapter4: Mining, Metallurgy, Sword, Armor and Samurai
Chapter5: Painting, Ukiyo-e, and Modern Visual Arts (Manga, Animation)
Chapter6: Engineering (Civil Engineering, Architecture, Robot) and Modern Industry
Chapter7: Cooking, Liquor, Textile and Festival
Chapter8: Performing Arts, Narrative Arts and Lifestyle
Chapter9: Japan's Problems (Views and Opinions of Foreigners)
Chapter10: People 1 (Before Meiji)
Chapter11: People 2 (After Meiji)
先日(1/12日)最後の講義をしたが、授業後に学生にどのテーマが良かったか/悪かったか、というアンケートと、授業の仕方についての要望を聞いた。その結果が私にとっては多少意外だったのでそれについて述べたい。
まず、良かったという意見が多かったテーマは、Chapter5: 絵画 と Chapter9: 日本の問題、の2つであった。ほぼ全員がこの2つのテーマが良かったと述べていた。確かに日本の絵画の歴史は彩り鮮やかであるし、名作も多いので、関心が高いのも肯づける。さらに近代の絵画では竹久夢二、棟方志功、山下清など普通の美術史では B級とみなされている人達も取り上げて説明した。最後には、現代の漫画やアニメなどサブカルチャーのテーマにも触れたので、一層好まれたテーマであっただろうと思う。
一方、Chapter3:陶磁器、漆器、蒔絵 が最も好まれなかったテーマであったのには驚いた。私には、これらの小物を丁寧に仕上げる職人技が日本の一つの特徴であり、また日本の近代の工業技術の礎えともなっていると考えているからである。さらに日本の骨董・美術品のオークションなどでは金粉が眩しいほどに振りまかれている蒔絵は日本人・外国人を問わず常に注目の的であるように私には思える。しかし、今回のアンケートはそういった日本美術の評価に対する私の固定観念を破壊はしないものの、大きく揺るがす結果であった。
さて、私が本稿で述べたいのは、 Chapter9: 日本の問題(Japan's Problems, Views and Opinions of Foreigners)のパネルディスカッションについての学生の評価である。このテーマに対しては、わずか一名を除き、全員が良かったと評価していた。
まず、そのパネルディスカッションの進行を説明すると、あらかじめ指名した学生(7人)が指定図書("Dogs and Demons: Tales from the Dark Side of Japan", by Alex Kerr)を読む宿題が課せられる。そして、あらかじめ与えた『質問・議論リスト』について本の中から情報を引き出して自分なりの答えを考えてくる。同じく聴衆の学生も質問・議論リストに対して自分なりの意見を考えて、当日パネリストに質問する、という責務を与えた。
以下に質問・議論リストを挙げるが、これを見ても分かるとおり、現代日本のかかえる諸問題の本質的課題を議論するためのテーマを取り上げている。これらのテーマの内、幾つかのテーマに対する私の意見は過去のブログに書いた通りである。
【参照ブログ】
連載記事:『道具に技巧をビルトインする発想』(2/3)
『失敗した壮大な社会実験(その2)』
Chapter9:日本の問題に関する『質問・議論リスト』
【質問】
Q1. Do the Japanese love nature?
Q2. Is the Japanese governance auto piloting?
Q3. Why do the Japanese spend so much money on constructions?
Q4. Is Japan an advanced country in terms of technology?
Q5. Is Wa (和, concord, harmony) the Japan's ideal?
Q6. Do the Japanese prefer maintaining the tradition and old houses?
Q7. Are the Japanese really rich?
Q8. Are the modern Japanese keen of appreciating the beauty?
Q9. What influence does Bushido have on the modern Japanese society?
【議論】
Q10. Environmental and scenery problems in Japan.
Q11. Accountability of the Japanese bureaucracy.
Q12. Japanese groupism, rigidity, xenophobia
Q13. Japanese university system and students
Q14. Japanese influence on the modern culture of the world
Q15. Japanese national debt, crisis of nation's bankruptcy
さて、当日の様子やアンケート結果から触発された大学教育に関する私の意見については、次回述べたい。
(続く。。。)
『Craftsmanship in Japanese Society』(邦題:日本の工芸技術と社会)
という英語の授業をした。テーマは、書道、彫刻、陶磁器、彫金、絵画、料理、落語、など、計11回の講義であった。
Chapter1: Ink brush, Inkstick, Inkstone, Paper and Calligraphy
Chapter2: Sculpture, Furniture, Folk Craft, Netsuke and Za (Artisan Guilds)
Chapter3: Porcelain, Lacquer Ware, Makie and Korean Craftsmanship
Chapter4: Mining, Metallurgy, Sword, Armor and Samurai
Chapter5: Painting, Ukiyo-e, and Modern Visual Arts (Manga, Animation)
Chapter6: Engineering (Civil Engineering, Architecture, Robot) and Modern Industry
Chapter7: Cooking, Liquor, Textile and Festival
Chapter8: Performing Arts, Narrative Arts and Lifestyle
Chapter9: Japan's Problems (Views and Opinions of Foreigners)
Chapter10: People 1 (Before Meiji)
Chapter11: People 2 (After Meiji)
先日(1/12日)最後の講義をしたが、授業後に学生にどのテーマが良かったか/悪かったか、というアンケートと、授業の仕方についての要望を聞いた。その結果が私にとっては多少意外だったのでそれについて述べたい。
まず、良かったという意見が多かったテーマは、Chapter5: 絵画 と Chapter9: 日本の問題、の2つであった。ほぼ全員がこの2つのテーマが良かったと述べていた。確かに日本の絵画の歴史は彩り鮮やかであるし、名作も多いので、関心が高いのも肯づける。さらに近代の絵画では竹久夢二、棟方志功、山下清など普通の美術史では B級とみなされている人達も取り上げて説明した。最後には、現代の漫画やアニメなどサブカルチャーのテーマにも触れたので、一層好まれたテーマであっただろうと思う。
一方、Chapter3:陶磁器、漆器、蒔絵 が最も好まれなかったテーマであったのには驚いた。私には、これらの小物を丁寧に仕上げる職人技が日本の一つの特徴であり、また日本の近代の工業技術の礎えともなっていると考えているからである。さらに日本の骨董・美術品のオークションなどでは金粉が眩しいほどに振りまかれている蒔絵は日本人・外国人を問わず常に注目の的であるように私には思える。しかし、今回のアンケートはそういった日本美術の評価に対する私の固定観念を破壊はしないものの、大きく揺るがす結果であった。
さて、私が本稿で述べたいのは、 Chapter9: 日本の問題(Japan's Problems, Views and Opinions of Foreigners)のパネルディスカッションについての学生の評価である。このテーマに対しては、わずか一名を除き、全員が良かったと評価していた。
まず、そのパネルディスカッションの進行を説明すると、あらかじめ指名した学生(7人)が指定図書("Dogs and Demons: Tales from the Dark Side of Japan", by Alex Kerr)を読む宿題が課せられる。そして、あらかじめ与えた『質問・議論リスト』について本の中から情報を引き出して自分なりの答えを考えてくる。同じく聴衆の学生も質問・議論リストに対して自分なりの意見を考えて、当日パネリストに質問する、という責務を与えた。
以下に質問・議論リストを挙げるが、これを見ても分かるとおり、現代日本のかかえる諸問題の本質的課題を議論するためのテーマを取り上げている。これらのテーマの内、幾つかのテーマに対する私の意見は過去のブログに書いた通りである。
【参照ブログ】
連載記事:『道具に技巧をビルトインする発想』(2/3)
『失敗した壮大な社会実験(その2)』
Chapter9:日本の問題に関する『質問・議論リスト』
【質問】
Q1. Do the Japanese love nature?
Q2. Is the Japanese governance auto piloting?
Q3. Why do the Japanese spend so much money on constructions?
Q4. Is Japan an advanced country in terms of technology?
Q5. Is Wa (和, concord, harmony) the Japan's ideal?
Q6. Do the Japanese prefer maintaining the tradition and old houses?
Q7. Are the Japanese really rich?
Q8. Are the modern Japanese keen of appreciating the beauty?
Q9. What influence does Bushido have on the modern Japanese society?
【議論】
Q10. Environmental and scenery problems in Japan.
Q11. Accountability of the Japanese bureaucracy.
Q12. Japanese groupism, rigidity, xenophobia
Q13. Japanese university system and students
Q14. Japanese influence on the modern culture of the world
Q15. Japanese national debt, crisis of nation's bankruptcy
さて、当日の様子やアンケート結果から触発された大学教育に関する私の意見については、次回述べたい。
(続く。。。)