石井信平の 『オラが春』

古都鎌倉でコトにつけて記す酒・女・ブンガクのあれこれ。
「28歳、年の差結婚」が生み出す悲喜劇を軽いノリで語る。

来日ドクチャンが語った「美人妻」との甘い新婚生活

2010-10-19 11:32:25 | 人物
 「ベトちゃん・ドクちゃん」は、米軍がまいた枯れ葉剤により「特別な子供」として1981年に生まれた。結合双生児の分離手術は88年に行われ、二人は別々な人生を歩み始めた。

 そのドクさん(26当時)が去年12月に挙式した妻テュエンさん(24当時)を同伴して2月24日に来日、大阪、長崎などを訪ね3月8日まで滞在した。二人は2年前にホーチミン市でボランティア活動中に出会い、恋に落ちた。

 妻「最初は、私の家族に結婚を反対されました」

 夫「僕は何度も彼女の家を訪ね、掃除や家事の手伝いを一生懸命しました。障害者でもふつうに暮らせることを伝えたいためです」

 妻「彼と一緒にいることが私の幸せなのだと、行動で示しました。2年間つきあって、彼と暮らすことに何の心配もありません」

 ドクさんは病院の事務員として働いている。

 「義母に苦労をかけたので、独立が僕の夢でした」

 一本ずつの脚を分け合った兄のベトさんは重い脳障害で寝たきりだ。

 「60人いる平和村という障害者施設には、僕よりも重症の人がいます。僕は日本の方々にも注目され、医療を受け、仕事ができ、結婚までして幸運な男だと思っています」

 二人は今、妻の家族と同居している。今ほしいものは何ですか?

 「家がほしい、そして子供が2人ほしいです。」

 かつて「特別な子供」として生まれた青年の、あまりにも「ふつうな」コメントが胸を打つ。

 日本では少子化とセックスレスが社会問題になっています。

 「こんなに立派に発展している社会で、全く理解できません」と彼は言う。もし障害児が生まれたら、という不安はありませんか?

 「生まれる子供のことは全く心配していません。たとえ障害児が生まれても精いっぱい愛します」

 結婚して一番変化したことは何ですか?

 夫「いろんな人の協力が必要だったのが、今は妻と二人で独立して暮らせるようになったことです」

 妻「彼をサポートする喜びが、自分をずっと大人にしてくれました」

 75年に戦争が終わって6年経っても胎児を障害児にする枯れ葉剤の恐ろしさ。生まれて、出会い、いたわりあう二人を前に、英国バンド「ジャミロクワイ」のHalf The Manを思い出した。“かつて僕は半人前だった。今、君と出会って一人前になった”。


石井信平

「週刊朝日」2007年3月23日号 掲載


最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (naomi)
2010-10-20 18:02:21
かつてベトナムを旅行した友人の話。
街角でその美人妻をバイクの後ろに乗せたドクチャンを見かけたそうな。
んで目があったそうな。
とっさに「ペコ」っと会釈してしまったら、
ドクチャンも会釈を返してくれたそうです。

我々日本人にはドクチャンは忘れられないよね。きっとドクチャンも。

ドクチャンの「精一杯愛します」の言葉を、世界のみんなに聞かせたいぜ!
私には、超大好きなデザートをほおばってるような気持ちになりました!

半人前が、だれかと出会って一人前になる。
ジワ~ジワ~
返信する
naomiさま (側近より)
2010-11-04 01:30:37
デザートをほおばっているような気持になった言葉が、「精いっぱい愛します」

まさしくスィートの一言に尽きますね。
返信する

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。