製 作:亀山千広
監督脚本:君塚良一
音 楽:松本晃彦
出 演:柳葉敏郎
田中麗奈
哀川翔
「妖怪大戦争」を見に行ったら満員で、「容疑者 室井慎次」に急遽変更。やはり夏休み最終日に子供映画は無理だったか。
「踊る大捜査線」スピンオフ企画第二弾。第一弾の「交渉人 真下正義」がノンストップサスペンスだったとすると、こちらは重厚法廷ミステリーの様相。それもそのはず、主演は眉間の皺がトレードマークの警視庁刑事部捜査一課管理官・警視正の室井慎次ですから。キャリア警察官といえど、東北大学出身という学閥的に不利な中で、現場で頑張る青島刑事との約束を果たすべく上を目指す、正義感の固まりのような実直で寡黙な男・室井。
そんな彼が拘置所に居るという衝撃的な場面から始まる映画は、全体に硬質で重厚。「踊る~」と言えば笑いの場面が必ずあるものですが、それも湾岸書の署長達スリーアミーゴスが室井に面会に来る箇所だけ。真実を知る、そのために捜査を続けようとする室井に圧力がかかる。出世を狙う警視庁と警察庁上層部の対立に弁護士が絡みそれぞれの思惑が錯綜し、事件は複雑なものに思われるのだが・・・。
スリーアミーゴスの場面、思わず笑ってしまったのですが、その後袴田課長が室井さんに「和久さんも心配してたよ」と一言。その言葉の重みに涙が出ました。ああ、生きてるんだなあ和久さんは元気に。その後室井が「・・・青島は?」と訊くと、袴田課長は「なにやってんだ、我らの室井さんが」と言っていたと教えます。会えなくても、助けになれなくても、それぞれの場所で頑張っている二人の絆が見えていいなあと思います。もちろん湾岸書の面々との絆も!神田署長が沖田に「室井さんのこと、よろしくお願いします」と頭を下げたのは感動しました。この作品、室井さんのツライ過去が明らかにされたり、今までベールに包まれていた室井慎次という人間の本質に迫る、っていう感じの作りなのですが、それも「踊る~」の中でこれだけ「室井慎次」というキャラクターが深みを帯び、魅力的だからこそ独立した作品にしても十分見応えあるんですよね。柳葉敏郎のしかめっつらなしに、「踊る~」は語れないですもんね。「スーツとコート姿しか見せたことのない室井の鎧を一枚ずつはがしていきたい」という亀山プロデューサーの言葉通り、作中で室井はネクタイを外し、無精ヒゲで現れる。逮捕されるという状況の中での出来事なわけですが、それが室井の本質を探る入り口になっているのです。ストイックな立ち回りしか見せなかった男の内面を知る、というそれだけでも、十分色気を感じます。それで、この作品を通して、言葉少なで愚直なこの男には、たくさんの信頼出来る仲間達が居るのだ、ということがよくわかりました。最初は反目していた新城さえも、室井の生き方を「彼のような人間が警察には必要なんだ」と言わしめる。出世だけが大事なんじゃない、最初に警察を志した人間が誰しも持っていたはずの「正義」へのまっすぐな気持ちを持ったままの室井という男は、たぶんみんなにとって羨ましい存在なのではないでしょうか。キャリアの新城も沖田も、それを肯定はしても自分の生き方にはあてはめられない。だからこそ、室井にはそのままで居て欲しいと思っているから助けようとするのではないかと。新宿北署の工藤刑事たち現場の刑事にしても、たぶん毎日毎日たくさんの事件と関わることで麻痺していく正義への感情を、室井に接することで揺さぶり起こされるのでしょうね。そんな室井の存在が、警察や弁護士たち「正義の番人」でなければいけない人達に何か言葉にならない問いを投げ掛けているようです。正義を貫こうとして圧力をかけられ挫折した津田弁護士、ストーカー被害で警察に心ない言葉を浴びせられ心に傷を負った小原弁護士など、正義ってなんだろう?と後ろ向きになってしまった人々にも、室井の生き方が影響を与えて行きます。一度は正義を貫くために警察を辞職することも考えた彼ですが、新城の骨折りで広島県警刑事部に異動することが決まりました。彼がこれからもどんなふうに、青島刑事との約束を果たしていくのか、視聴者としても見てみたいと思います。亀山プロデューサーの続編あり?な意味深な「なぜ室井を広島へ行かせているのか」発言など、気になります。これからももし「踊る~」ワールドが見られるなら、嬉しいですけどね。
監督脚本:君塚良一
音 楽:松本晃彦
出 演:柳葉敏郎
田中麗奈
哀川翔
「妖怪大戦争」を見に行ったら満員で、「容疑者 室井慎次」に急遽変更。やはり夏休み最終日に子供映画は無理だったか。
「踊る大捜査線」スピンオフ企画第二弾。第一弾の「交渉人 真下正義」がノンストップサスペンスだったとすると、こちらは重厚法廷ミステリーの様相。それもそのはず、主演は眉間の皺がトレードマークの警視庁刑事部捜査一課管理官・警視正の室井慎次ですから。キャリア警察官といえど、東北大学出身という学閥的に不利な中で、現場で頑張る青島刑事との約束を果たすべく上を目指す、正義感の固まりのような実直で寡黙な男・室井。
そんな彼が拘置所に居るという衝撃的な場面から始まる映画は、全体に硬質で重厚。「踊る~」と言えば笑いの場面が必ずあるものですが、それも湾岸書の署長達スリーアミーゴスが室井に面会に来る箇所だけ。真実を知る、そのために捜査を続けようとする室井に圧力がかかる。出世を狙う警視庁と警察庁上層部の対立に弁護士が絡みそれぞれの思惑が錯綜し、事件は複雑なものに思われるのだが・・・。
スリーアミーゴスの場面、思わず笑ってしまったのですが、その後袴田課長が室井さんに「和久さんも心配してたよ」と一言。その言葉の重みに涙が出ました。ああ、生きてるんだなあ和久さんは元気に。その後室井が「・・・青島は?」と訊くと、袴田課長は「なにやってんだ、我らの室井さんが」と言っていたと教えます。会えなくても、助けになれなくても、それぞれの場所で頑張っている二人の絆が見えていいなあと思います。もちろん湾岸書の面々との絆も!神田署長が沖田に「室井さんのこと、よろしくお願いします」と頭を下げたのは感動しました。この作品、室井さんのツライ過去が明らかにされたり、今までベールに包まれていた室井慎次という人間の本質に迫る、っていう感じの作りなのですが、それも「踊る~」の中でこれだけ「室井慎次」というキャラクターが深みを帯び、魅力的だからこそ独立した作品にしても十分見応えあるんですよね。柳葉敏郎のしかめっつらなしに、「踊る~」は語れないですもんね。「スーツとコート姿しか見せたことのない室井の鎧を一枚ずつはがしていきたい」という亀山プロデューサーの言葉通り、作中で室井はネクタイを外し、無精ヒゲで現れる。逮捕されるという状況の中での出来事なわけですが、それが室井の本質を探る入り口になっているのです。ストイックな立ち回りしか見せなかった男の内面を知る、というそれだけでも、十分色気を感じます。それで、この作品を通して、言葉少なで愚直なこの男には、たくさんの信頼出来る仲間達が居るのだ、ということがよくわかりました。最初は反目していた新城さえも、室井の生き方を「彼のような人間が警察には必要なんだ」と言わしめる。出世だけが大事なんじゃない、最初に警察を志した人間が誰しも持っていたはずの「正義」へのまっすぐな気持ちを持ったままの室井という男は、たぶんみんなにとって羨ましい存在なのではないでしょうか。キャリアの新城も沖田も、それを肯定はしても自分の生き方にはあてはめられない。だからこそ、室井にはそのままで居て欲しいと思っているから助けようとするのではないかと。新宿北署の工藤刑事たち現場の刑事にしても、たぶん毎日毎日たくさんの事件と関わることで麻痺していく正義への感情を、室井に接することで揺さぶり起こされるのでしょうね。そんな室井の存在が、警察や弁護士たち「正義の番人」でなければいけない人達に何か言葉にならない問いを投げ掛けているようです。正義を貫こうとして圧力をかけられ挫折した津田弁護士、ストーカー被害で警察に心ない言葉を浴びせられ心に傷を負った小原弁護士など、正義ってなんだろう?と後ろ向きになってしまった人々にも、室井の生き方が影響を与えて行きます。一度は正義を貫くために警察を辞職することも考えた彼ですが、新城の骨折りで広島県警刑事部に異動することが決まりました。彼がこれからもどんなふうに、青島刑事との約束を果たしていくのか、視聴者としても見てみたいと思います。亀山プロデューサーの続編あり?な意味深な「なぜ室井を広島へ行かせているのか」発言など、気になります。これからももし「踊る~」ワールドが見られるなら、嬉しいですけどね。