「硫黄島 玉砕戦 ~生還者 61年目の証言~」
8月7日(月)午後10時~10時54分 総合テレビ
(再放送:8月25日(金)深夜〔時間未定〕)
日本にとって硫黄島の戦いといえば、本土爆撃を阻止する最後の砦として、栗林中将以下2万人の日本軍守備隊がこの島を死守するため戦い、殆どが戦死するという凄絶な戦闘が行われた場所として記憶にあります。
C・イーストウッドがこの秋~冬に公開する硫黄島の戦いをテーマにした二本の映画を撮りました。一本目はアメリカ視点、二本目は日本視点という違う視点から見た一つの戦争。
硫黄島の戦いは、アメリカにとっても多大なる死傷者を出した記憶に残る戦いなのです。
米軍の記録や日本軍はわずか1000人しか生存者が居なかったという事実から、どれほどの悲惨な戦いだったのか微かに伺い知ることは出来ます。しかし、生存者はその殆どが戦争の記憶を語ろうとはしませんでした。しかし「わしらが何も語らなかったら、死んでいった者たちは何のために戦ったのかわからなくなる」と、戦後61年目にして、語り始めました。「年をとったせいか、最近の事は覚えていられないが、あの戦いは昨日の事のように思い出す」という辛く、苦しい、救いのない戦闘の様子をもう一度口にすることがどれ程大変かと思います。それでも、自分たちが生きている内に、死んでいった者たちのことを語らなければならない、という責任を感じていらっしゃるのがひしひしと伝わりました。
私の家の近所に、キスカ島の生き残りの方がいらっしゃいました。同じように、年をとって、語れるようになったのかと思います。父親にいくらか戦争の記憶を話して、昨年亡くなられました。
最近の若い人は、戦争をすっかり忘れたように振る舞っている人が多いですよね。体験していなくても、人を思いやる心があれば、同じように感じることは出来なくても、辛さ・苦しさなどを心の痛みとして受け取ることは出来ると思います。そんな共感する気持ちが持てない現代社会って、なんか哀しいなあと思います。
アメリカの14歳の少年が、原爆の短編映画を撮り、話題になっています。彼の撮影の動機は、「たとえ戦争のためでも、核兵器を使ってはいけない」というもの。日米関係なく、人が死ぬことがいけないということは、世界共通当たり前のことです。そう思えない人がたくさん居る現実を変えようと、行動することの大切さをこの少年から学びました。日本人からも、こんな素敵な子供がどんどん出てくれるようになれば良いと思います。
イーストウッドが監督するのだから、一応の信頼を持って映画を見ることは出来るかと思いますが、やはりハリウッド製作のアメリカ映画ということで、日本人は日本人側の真実を、きちんと知ってから映画を見ないといけないと思います。彼の作品が世界に、戦争の残酷さと空虚さを伝えてくれれば良いと思います。
一昨年、サイパン・テニアンの戦跡を巡りました。未だにアジアにはたくさんの戦争の遺物が、亡くなった無念の兵士たちの思いとともに眠っています。それに思いを致しながら、8月は過ごしたいですね。
「父親たちの星条旗」(2006年10月公開予定)
Flags of Our Fathers
監督: クリント・イーストウッド
キャスト: ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、
アダム・ビーチ、ジェイミー・ベル、バリー・ペッパー
ストーリー: 第二次世界大戦末期、硫黄島で国旗を掲げた6人の兵士たち。クリント・イーストウッド監督作。製作にスティーブン・スピルバーグが名を連ねる。
「硫黄島からの手紙」(07年正月公開予定)
Letters from Iwo Jima
監督: クリント・イーストウッド
キャスト: 渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童
『父親たちの星条旗』を、今度は日本側の視点から切り取った姉妹作。監督クリント・イーストウッド×製作スピルバーグ。
映画界最高の才能が、“太平洋戦争”を、2本の映画を通じて、武力のみならず文化の衝突として描き出す。戦争の無益にさに気づきつつも、愛する家族のために勇敢に戦い抜いた、栗林中将と日本軍兵士たちの感動大作。
(WB公式HPより)