teeter-totter

志野の映画やTVや本や旅行や美味しいモノに関する与太話。
日常つぶやきはtwitterです。ブックマークから。

映画「上海の伯爵夫人」

2007-01-06 23:47:55 | 映画
ジャンル:ヒューマン
製作年:2005年
製作国:イギリス=アメリカ=ドイツ=中国
配給:ワイズポリシー、東宝東和
監督:ジェイムズ・アイヴォリー
脚本:カズオ・イシグロ
出演:レイフ・ファインズ/ナターシャ・リチャードソン
真田広之/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/リン・レッドレイヴ


「日の名残」のアイヴォリーとカズオ・イシグロがオリジナル脚本で組んだ今回の作品は、魔都と呼ばれた1930年代の上海が舞台。

当時列強諸国や日本が租界をもうけ、東西が混在する独特の空気を醸し出していました。激動の時代を駆け抜ける人々が生きる街としての活気と、阿片や犯罪の多発する街という退廃の空気が、上海という街の魅力でもあった時代。
革命で国を追われた白系ロシア貴族の未亡人ソフィアは、気位の高い家族を養うために、家族から蔑まれながらクラブでステッキ・ガールをして生活費を稼ぐ毎日だった。その店にたまたま仲良くなった日本人青年・マツダとやって来たジャクソンは、国際舞台で活躍した米の外交官だったが、家族を事故で亡くし、自身も失明するという、失意の日々を過ごしていた。盲人のジャクソンを狙う男たちからソフィアが助けたことをきっかけに、二人は知り合い、ジャクソンの失意の日々の中での唯一の夢ー自分の理想のクラブをつくることーにソフィアが必要だと感じる。競馬で儲けたジャクソンは、ソフィアと念願の店を出し、小さな箱庭のような世界を作るが、箱庭の外の世界では、焦臭い出来事が頻発し、やがて上海の街にも日本軍の軍靴の音が近づいていたー。


香港映画「花の影」(1996)中国映画「上海ルージュ」(1990)などの老上海のイメージを彷彿とさせる作品。
しかし少し違うのは、異国・上海に集う亡命ロシア貴族や、失意の米外交官、野心持つ日本人という、中心になる人物が全員外国人である点。
当時の上海の独特の雰囲気がこの主要人物たちを一つの街で出会わせたのだろうと思わせる。

ジャクソンがマツダに語る夢のクラブは、戦争という焦臭い方向へ進む世界を止めようとしながら出来なかった外交官であった自分に背を向けるかのような小さな世界を形づくることで、ジャクソンはその夢語りに付き合うマツダの素性にさえ頓着しない。しかしマツダは、おそらくは日本軍部の諜報員かあるいは民間の権力者か。本来相容れないであろう二人が、夢のクラブを一緒に語り、マツダはジャクソンに協力する。ジャクソンの小さな世界の構築に力を貸したマツダは、しかし彼の世界の破壊者でもあった。その彼が言う「あなたは他の世界をつくるべきなのではないか?あの白い伯爵夫人と・・・」
戦火迫る上海の街で、家族に捨てられ愛し子を探し求めるソフィアと作る世界こそ、ジャクソンの求める世界なのではないかと。
最後には道を分かった二人だが、夢のクラブを語ったあの日の友情は本物だった。
マツダに言われ、ソフィアを探して戦火をくぐり抜け、新天地へ向かう船の中で、ジャクソンはソフィアの娘カティアに「連れていってあげると言った蘇州への船旅とは違うものになってすまない」。しかしカティアの目には、平和だったあの日夢見た、母ソフィアと大好きなジャクソンと行くはずだった船旅そのものが映っているのだった・・・。

カズオ・イシグロ脚本なのでもっと文芸作品的なものを想像していましたが、最後はハッピーエンドを思わせるメロドラマでした。
でも、新天地マカオで幸せになって欲しいソフィアとジャクソンの二人です。
悩める男性を演じさせたら右に出るものはいない(?)レイフ・ファインズと、すっかり国際俳優の趣の真田広之の共演は感動的でした。彼の英語は素晴らしいですね。そしてなんとも言えない憎い役回りです。
亡命貴族たちのイヤになるくらいの気位の高さなど、当時往々にしてあっただろうエピソードが、興味深いところでした。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする