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映画「日本沈没」

2006-07-19 23:50:07 | 映画
2006年7月15日公開
ジャンル:パニック
製作年:2006年
製作国:日本
配給:東宝
監督:樋口真嗣
出演:草なぎ剛/柴咲コウ
/豊川悦司/大地真央/石坂浩二/及川光博


小松左京のベストセラー小説を映画化した1973年は、動員650万人、興行収入40億円を記録する大ヒットとなった。
それを今回、最新の地震学に基づいた新しい「日本沈没」としてリメイク。


最近増えてきた大きな地震。沼津での地震に巻き込まれた深海潜水艇わだつみ6500のパイロット・小野寺は、親を亡くした美咲と共に、ハイパーレスキュー隊員の玲子に助けられる。
日本海溝のプレートの大変動により、30年以内に日本全土が沈没することがわかった。動きの鈍い政治家たちを後目に、地震学者の田所により、30年ではなく1年以内に日本が沈没するという衝撃的な研究結果が出る。田所の元妻で文部科学大臣兼危機管理担当大臣の鷹森は国民を救うべく奔走するが、各地の火山噴火や地震、津波の被害は急増し、刻一刻と滅びの時が近づいていた---。


一年で日本は沈没する、なんて学説的にも無理のある設定ではありますが、各所に登場する最新の研究結果と防災対策が、一応の説得力を持たせています。六本木ヒルズもかくも簡単に崩壊してしまうのかと言う映像には、超高層タワーに住みたがる最近の傾向を戒める意味があるのかと思いますが、本当にいつやってくるか解らない大地震への備えの大切さを娯楽映画の中で訴え掛ける役割は十分に果たしていると思います。みなさん地震への日頃の備え、出来ていますか?(自分が一番出来てない・・・)
あちこち無理はあるのですが、素直に泣きどころでは泣かせて貰いました。ラブストーリーがこの作品の柱なので、レディースデーに関わらずカップル率が異常に高いのにも納得。一人でだーだー泣いててすみません。
阪神大震災で両親を失い、祖父が鳶の棟梁だったと思いこむことで自分を勇気づけてきた玲子の、自分のような不幸な子供を救いたいという気持ちでレスキュー隊員になった心の強さはすごいし、小野寺のように助かりたいと思う気持ちも当たり前のものです。子供に故郷の海を見せてやりたいと、危険なM2ミサイル設置に赴く結城(及川光博)の姿には心打たれました。ミッチーなのに格好いいお父さん!
やがて玲子の気持ちに触れ、自分だけが逃げるのではなく、彼女と彼女が守りたいものを守るために残ることを決意する小野寺の心の動きがこの映画の山場ですね。
現実に自分だったら迷いなくどうにか自分一人助かろうと考えるでしょうけれど(笑)、愛情の表現として命を懸ける姿は、感動します。
「アルマゲドン」みたいに娘のために命を懸けたブルース・ウィリスの遺影を横に、どんちゃん楽しげに結婚式をするリブ・タイラーとベン・アフレックのバカップルに殺意を抱いたのは記憶に新しいですが(せめてしんみりと幸せになってくれ!)、日本映画らしく静かに終わったのが良かったかと。
13年振りの映画出演だという大地真央の危機管理担当大臣として奔走する姿が凛々しくて格好良かった。やはりこういうとき、タカラヅカトップ女優の凛々しさ・格好良さは言うことありませんね。(「踊る大捜査線」の真矢みきしかり)。
トヨエツも久しぶりに格好いいと思いましたよ、田所博士。この間のSPドラマ「恋愛小説」で監督した「十八の夏」も良かったし。
ライオン宰相風石坂浩二ほか、随所に現代日本の風刺が効いていた点を評価。アメリカに見捨てられても大丈夫なように、アジア近隣諸国とは是非仲良くしておきましょうね!
でもってさすが樋口監督、テロップにはマニアックな出演者が。富野由悠紀、庵野安野夫妻、福井晴敏(笑)。
特撮映画の域は出ていませんが、面白い作品にはなっているのではないかと思います。
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映画「ココシリ」(2004/2006公開)

2006-07-19 23:28:41 | 映画
2006年6月3日公開
ジャンル:社会派ドラマ
製作年:2004年
製作国:中国
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:ルー・チュアン
出演:デュオ・ブジエ/チャン・レイ

ココシリ-海抜4700メートルの”最後の秘境”とも言われる山。
モンゴル語で「美しい山」、現地のチベット語で「美しい娘」を意味するそこは、息を呑む程の美しい山々と共に荒々しいまでの自然が横たわる場所でもあった。
密猟者のターゲットとされているチベットカモシカを守るため、地元の村人達が施設の山岳警備隊をつくっていると聞いた北京の記者・ガイは彼らの取材に訪れる。丁度その頃、密猟者によって警備の若者が射殺されていた。
お金も装備も何もかも足りない中、命を懸けてまでカモシカを守ろうとする警備隊と行動を共にするうち、彼らのココシリへの深い愛を感じる。密猟者のボスを追い深い深い山奥へ警備隊は入り込んで行くが、厳しい自然と密猟者達との追跡劇は-。

第17回東京国際映画祭審査員特別賞受賞。

実話に基づくストーリーを、180日オールチベットロケでスタッフみんなが高山病と闘いながら撮影された。
その救急車を待機させ、点滴を受けながら極寒の河に入った役者陣の作品への意気込みが、命がけで密猟者を追う山岳警備隊の気持ちと共鳴しあって、迫力ある映像となっています。
熱い熱い山の男たちの友情と敬愛のドラマです。こういうのは、女が見ても感動してしまうのですよね。都会っ子の記者が山の男たちと触れ合ううち、自然への敬意、仲間たちとの絆の強さを知って行く。幾人もの犠牲があり、ようやく世間に新聞記事という形で訴えでたそれが、ついに政府を動かし、保護区指定を得、正式な森林警備隊が出来たのです。今や一万頭にまで激減していたカモシカは五万頭にまで回復しつつあるといいます。そして中国各地からボランティアが自然保護のために集まるそうです。
真実のドラマほど、人を動かすものはありません。そしてその事実を伝えたい、という映画製作スタッフたちの熱い気持ちが伝わって来るような映画でした。
警備隊のリーダー、リータイを演ずるデュオ・ブジエが、男臭く、無口で、しかし仲間に慕われるカリスマ性のある人物で、何とも言えない人間味を感じさせてくれるいい男です。チベット映画界のスターらしいですが、我が日本の高倉健にも通じる何かがあるような。彼でなければ、仲間を死に追いやるほどの無茶をしてまで密猟者を追うリーダーにこれほどのカリスマ性は生まれなかったでしょう。観客がこの映画に感動できたのは、偏にリータイのココシリを愛する気持ちが解ったからだと思います。
チベットでは、死者は山の上に葬られ、それを鳥が啄みに来るという「鳥葬」のスタイルをとります。チベット僧が経を上げたら、村人達が鳥の食べやすいように遺体を小さく切ります。映画冒頭で、射殺された山岳隊の若者を鳥葬する場面に、酷く残酷なような気持ちに捕らわれました。死んだら、身体はタダの空っぽな器でしかないのか?と。しかし残酷なようで、それが最も死者と自然への畏敬の念を表しているのだと、作品の最後には思うようになりました。自然から生まれ、自然に帰る。それが人間の姿なのです。どんなに厳しい自然が襲い来ても、それを超えられるか超えられないか、それはすべて運命。その大いなる自然の遺志を曲げようと乱獲する密猟者へのリータイの憎悪は、彼らが自然を冒涜する姿に映っていたからでしょう。チベットの山での人々の生活は自然と共に生きていくしかないもの。人間は小さな小さな存在なのだということを、現代社会に生きる私たちに思い出させようとしてくれる作品です。


コメント (8)
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