Naked Heart

その時々の関心事をざっくばらんに語ります

ホームレス

2006年01月30日 04時46分57秒 | 時事・社会
ホームレス:公園への住所転居届認める 大阪地裁

 大阪市北区の公園でテント生活しているホームレスの山内勇志(ゆうじ)
さん(55)が公園を住所とする転居届を区長が受理しなかったのは違法と
して、処分取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁は27日、公園での住民
登録を認め、処分を取り消した。西川知一郎裁判長は「テントの所在地は
生活の本拠としての実体を備えており、住民基本台帳法の住所と認めら
れる」と判断、「占有権がないことを理由に受理しないのは許されない」と
結論付けた。
 原告側代理人弁護士によると、公共用地の公園での住民登録を認めた
司法判断は初めてで、行政のホームレス対策に影響を与えそうだ。大阪
市は大阪城公園(中央区)など2公園で生活するホームレス22人のテント
を30日に強制撤去する計画だが、「不法占拠と住民登録は別問題」として
予定通り撤去する方針。
 山内さんは98~99年ごろから北区の扇町公園で生活を始め、00年ごろ
テントを設置した。知人宅に住民登録していたが、警察に違法性を指摘
されたのを機に、生活保護など住民サービスを受けやすくするため、04年、
公園を住所とする転居届を北区役所に提出した。区長は「私的な工作物
設置は公園の適正な利用を妨げる」と受理せず、市長も審査請求を棄却
したため、昨年提訴した。
 判決は、住民基本台帳法の「住所」について「生活の本拠を指し、客観
的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かによって決めるべきもの」
と指摘。そのうえで、山内さんが不受理までの約4年間、同公園のテント
群にあるテントを寝泊まりの場所として占有し、食事の場所や居間として
利用、日雇い労働などが終われば戻るという日常生活を送っていたと
認定。さらに、「テントは四隅に杭が打ち込まれ、地面に固定された構造
物で、生活の実体を具備している」と述べ、同法上の住所と認めた。
 市側は「扇町公園のテント撤去に向けた努力をしており、占有権限の
ないテントはいずれ撤去され、定着性は極めて不安定」と主張。しかし、
判決は「占有権限があるかどうかは生活の本拠たる実体の具備とは本来
無関係」と退けた。【前田幹夫】

 村田匠・大阪市北区長の話 判決内容を十分検討したうえで適切に
対処したい。

 ◇法的にはあり得る
 ▽小早川光郎・東京大教授(行政法)の話 権限なしに人の家に住み
着いても安定した暮らしができていれば住所となることを考えても、今回の
判決は法的にはあり得る判断だ。しかし、公園に住み続けることは、利用
者や付近住民にとって迷惑かもしれず、どの程度まで居住を認めるかは、
住所としての法的評価とは別に行政が判断すべきことだ。

 ◇勝訴判決に原告「驚いている」
 原告の山内勇志さん(55)や支援者らは判決後に会見し「画期的な判決」
と評価した。山内さんは「勝てると思っていなかったので驚いている。生活
保護を請求しようと思う」と笑顔を見せ、「(大阪市が)大阪城公園の仲間
らを追い出そうとしているが、判決が暴力的な追い出しの歯止めになって
ほしい」と30日の強制撤去中止を訴えた。
 また、代理人の永嶋靖久弁護士は「ホームレスの多くは住民登録をあき
らめ、基本的な行政サービスから排除されている。市は控訴せず判決を
受け止めてほしい」と語った。【前田幹夫】

 ◇東京都、判決に戸惑いぎみ
 4500人のホームレスを抱える東京都は判決に戸惑いぎみだ。福祉保健
局の担当者は「そもそも、住民登録を求める理由がはっきりしない。住民票
は就職や部屋の賃貸契約などの際に必要だが、社会生活を営もうとする
なら公園に住む必要もなくなるのでは」と首をひねる。
 都は、都内5ヵ所の公園に住むホームレスを対象に、借り上げアパートに
格安の家賃で入居させ、就労を支援する移行事業を進めており、すでに
1000人余りが公園を離れた。担当者は「公園などを占有する生活は都民
とのあつれきも大きく、望ましい状態ではない。今回の判決で、公園に居住
する正当性が認められたわけではないので、引き続き生活基盤を立て直す
支援を続けていく」と話した。【猪飼順】

                  (毎日新聞 2006年1月27日 19時20分)


素晴らしい判決だけど、法解釈としてはどうなのかな?という懸念を持って
いましたが、「権限なしに人の家に住み 着いても安定した暮らしができて
いれば住所となる」のであれば、問題無しですね。
大阪市は「生活の実態を判断する基準が不明確だ」と困惑しているそう
ですが、調査の結果「生活実態が無い」と判断すれば登録を取り消すと
いう作業を、行政は実際にしているはずですけれども・・・。
もちろん、公園の所有者は立ち退き請求をする権利がありますし、条例等
で定められた公園の「適正使用」から外れていれば処罰もありうるわけで、
今後も公園に住み続ける権利を得たわけではありません。というか、いつ
までも住み続けたいと思っている「ホームレス」の人って、いないでしょう。
「追い出して路頭に迷わせようというのではなく、自立支援センター等への
移転を求めているのだから、反対するのは権利の濫用だ」といった批判は
絶えませんが、そもそも行政がすべきことは「ホームレス」が生まれない
ような対策であって、なってしまった後で「お上のお慈悲」みたいな支援を
されたって、当人はプライドを傷つけられて反発するだけでしょう。周辺の
住民とのトラブルはよくありますから「誰にも迷惑を掛けてない」とは言え
ないでしょうが、彼らは自力で生活しているわけで、「自立支援」なんての
も傲慢なネーミングだと思います。
職安に行ってみると、地方だからかも知れませんが、国の「雇用対策事業」
なんかも、時給いくらで3ヵ月間だけのバイトとかだったりするわけで、全然
対策になっていない単なるバラまきです。政府や日銀は盛んに「景気回復」
と言ってますが、そんなに仕事があるわけじゃなく、あっても就職できない
人はいつまでもできなかったりするわけで、「自己責任」と言うだけだったら
政府なんて無くてもいいでしょう。(公務員は仕事が無くなって困るか・・・)
仕事が無く保証人もいなければ、家は借りれない。家が無いと住民登録
できないから、健康保険にも入れないし、生活保護も受けられない。そこの
ところを放置しているから、こんな判決を出さざるを得ないわけで、これを
批判する人はまず行政の不作為を批判すべきでしょう。
今はみんな「他人事」と思っているのかも知れませんが、このまま「改革」
路線で行って格差拡大が進めば、「ホームレス」予備軍は増える一方です。
保険・年金未納者もかなりいますし、将来財政破綻する恐れもまだ消えて
いませんから、元気なうちはいいけど病気になったり年を取ったらどうなる
か・・・という人だって少なくないはずです。
それに、仮に自分は「ホームレス」にならずに済むとしても、「ホームレス」
に冷たい社会が自分に対してだけはいつまでも優しいとは限りません。
「情けは人の為ならず」って良い言葉があるはずの国なのにね。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この判決 (ひとり)
2006-01-30 18:08:41
温情があだになった感じですね。強制的に排除するのは簡単ですが配慮した挙句の判決。

今後、自治体は「生活実態」を作らないためにも強制撤去をするかもしれません。



この訴えを起した人は判決後に、これで生活保護を申請できると語っています。

国の指針としては65歳までは働ける限りは働いてもらうとなっています。重篤な疾病があれば別ですが.........



日雇い作業に行く元気があるなら認められない可能性が高いです。

せめて勝訴したときのコメントは「これで安心して働くことが出来ます」と言って欲しかったですね。

この人の訴えは生活保護を受けるためだったのかとガッカリです。
返信する
権利は権利ですから (みな)
2006-01-31 20:58:58
本意ではないにしても、そう受け止められてしまったら確かに意味はないですね。

ただ、生活困窮者は生活保護を受ける権利はあります。働いていようと、健康で五体満足だろうと、基準を満たせば。「住所不定だから」認めない、というのはある意味、行政の怠慢です。仕事を探すにも、当面の生活が成り立たないといけないわけで、まずは生活保護を受ける、ということ自体は批判されることではないと、私は思います。
返信する

コメントを投稿