10日に投開票された岩国市長選挙は、新人の福田良彦 前衆院議員が井原勝介 前
市長を破るという結果に終わりました。
投票率は周辺町村合併に伴う前回選挙を11.17ポイントも上回る76.26%でした。
その前回も争点は艦載機移転だったこと、今回の両氏の票差が僅か1,782票だった
ことを考慮すれば、市民の関心の高さと真っ二つに割れた民意を窺い知ることができ
ます。福田氏の主張も見方によってはそうですが、選挙結果も単純に「移転容認」と
は言い切れません。
検索したら北海道新聞の社説を見つけましたが、彼の地においてもかなり的を射た
論評でしたので、引用しておきます。
岩国市長選 民意をどう読み取るか (北海道新聞社説 2月11日)
市民には苦渋の選択だったに違いない。
米空母艦載機移転の是非が争点となった山口県岩国市の出直し市長選は、移転
容認派の前衆院議員福田良彦氏が大激戦を制して初当選した。
しかし、この選挙結果から、市民が納得ずくで移転を認めたと判断することはでき
まい。
敗れた前市長の井原勝介氏は、騒音被害や米兵によるトラブルへの不安が増す
と、移転に反対してきた。井原氏の主張を支持する民意は一昨年、住民投票と市長
選の二度にわたって圧倒的な数字で示されていた。
今回も共同通信の出口調査では、移転に「反対」が41%にのぼり、明確な「賛成」
は17%にすぎない。
問題は37%を占めた「やむを得ない」という声だ。政府のアメとムチの政策がじわ
りと市民を締め上げていることの効果と見なければなるまい。
全国の地方自治体の例に漏れず、岩国市も台所事情は厳しい。市の借金である
市債は一千億円を超え、財政再建は急務の課題だ。
そこに追い打ちをかけたのが政府の補助金カットだった。移転に反対しているから
と、市庁舎建設の本年度分の支給が止められてしまった。米軍再編計画を受け入れ
た自治体に配分される交付金も出ない。
自民、公明両党が支援する福田氏は国政とのパイプ役を強調し、財政の立て直し
を前面に掲げる戦略をとった。
告示前は井原氏優位といわれた情勢が逆転したのは、移転問題にとりあえずは
目をつぶってでも地元経済をなんとかしてほしいという市民の切実な思いの表れ
だろう。
移転拒否か、カネか。市民にそんなつらい選択を強いた政府の政策に、あらため
て憤りを覚える。
今回の市長選は、地方自治のあり方を問うものでもあった。
「防衛政策に自治体が法律上の手続きを使って異議をさしはさむべきではない」
大阪府の橋下徹知事は岩国の住民投票をそう批判した。だが、防衛政策が国
の専管事項だからといって、地方の声を無視する国の勝手が許されるわけでは
ない。
政府にも橋下氏と同じような理屈をいう政治家や官僚がいる。何か勘違いして
いるようだ。米軍再編計画を地元の頭越しに決め、しかも住民の自由な意思表明
を否定して、いったいどこに地方自治があるというのか。
最後に福田氏に注文がある。
「移転に協力するが、騒音や治安問題など住民の不安解消にまず取り組む」
「国の言いなりにはならない」
福田氏のこの言葉を信じて投じられた一票は多かったことだろう。政府に言う
べきは言って、しっかりと約束を果たしてもらいたい。
若干補足しておきます。
沖縄県の県知事は、反基地の象徴だった大田昌秀氏から保守系の稲嶺惠一氏、
仲井眞弘多 現知事と変わり、名護市長も移設容認派であるにも関わらず、普天間
基地移設はいまだ実現せず、計画修正を求めている名護市は岩国市同様、国の
補助金をカットされています。
自治体の首長は、東京都知事や大阪府知事のような例外を除いて、住民の意向
を無視できないものであり、知事が変われば事が進むというような簡単な話では
ありません。福田氏が公約を忠実に守るなら、協議は難航するでしょう。
その時に果たして国がすんなり補助金を出すのか、気になるところです。もし出さ
なければ、「背に腹は代えられない」と苦渋の選択をした市民は反発するでしょう。
井原 前市長が首を賭けた予算案を修正し、国の補助金を盛り込んだ市議会も、
修正を余儀なくされれば非難轟々でしょう。
今回、周辺の旧郡部で支持されなかったことが井原氏落選の大きな要因とも言わ
れていますが、仮に移転が進展して補助金を貰っても、周辺部がその恩恵に与れ
るかどうかも疑問です。
まあ、バラ色の夢を振り撒いたのは、福田氏自身でもあるのですが。
市長を破るという結果に終わりました。
投票率は周辺町村合併に伴う前回選挙を11.17ポイントも上回る76.26%でした。
その前回も争点は艦載機移転だったこと、今回の両氏の票差が僅か1,782票だった
ことを考慮すれば、市民の関心の高さと真っ二つに割れた民意を窺い知ることができ
ます。福田氏の主張も見方によってはそうですが、選挙結果も単純に「移転容認」と
は言い切れません。
検索したら北海道新聞の社説を見つけましたが、彼の地においてもかなり的を射た
論評でしたので、引用しておきます。
岩国市長選 民意をどう読み取るか (北海道新聞社説 2月11日)
市民には苦渋の選択だったに違いない。
米空母艦載機移転の是非が争点となった山口県岩国市の出直し市長選は、移転
容認派の前衆院議員福田良彦氏が大激戦を制して初当選した。
しかし、この選挙結果から、市民が納得ずくで移転を認めたと判断することはでき
まい。
敗れた前市長の井原勝介氏は、騒音被害や米兵によるトラブルへの不安が増す
と、移転に反対してきた。井原氏の主張を支持する民意は一昨年、住民投票と市長
選の二度にわたって圧倒的な数字で示されていた。
今回も共同通信の出口調査では、移転に「反対」が41%にのぼり、明確な「賛成」
は17%にすぎない。
問題は37%を占めた「やむを得ない」という声だ。政府のアメとムチの政策がじわ
りと市民を締め上げていることの効果と見なければなるまい。
全国の地方自治体の例に漏れず、岩国市も台所事情は厳しい。市の借金である
市債は一千億円を超え、財政再建は急務の課題だ。
そこに追い打ちをかけたのが政府の補助金カットだった。移転に反対しているから
と、市庁舎建設の本年度分の支給が止められてしまった。米軍再編計画を受け入れ
た自治体に配分される交付金も出ない。
自民、公明両党が支援する福田氏は国政とのパイプ役を強調し、財政の立て直し
を前面に掲げる戦略をとった。
告示前は井原氏優位といわれた情勢が逆転したのは、移転問題にとりあえずは
目をつぶってでも地元経済をなんとかしてほしいという市民の切実な思いの表れ
だろう。
移転拒否か、カネか。市民にそんなつらい選択を強いた政府の政策に、あらため
て憤りを覚える。
今回の市長選は、地方自治のあり方を問うものでもあった。
「防衛政策に自治体が法律上の手続きを使って異議をさしはさむべきではない」
大阪府の橋下徹知事は岩国の住民投票をそう批判した。だが、防衛政策が国
の専管事項だからといって、地方の声を無視する国の勝手が許されるわけでは
ない。
政府にも橋下氏と同じような理屈をいう政治家や官僚がいる。何か勘違いして
いるようだ。米軍再編計画を地元の頭越しに決め、しかも住民の自由な意思表明
を否定して、いったいどこに地方自治があるというのか。
最後に福田氏に注文がある。
「移転に協力するが、騒音や治安問題など住民の不安解消にまず取り組む」
「国の言いなりにはならない」
福田氏のこの言葉を信じて投じられた一票は多かったことだろう。政府に言う
べきは言って、しっかりと約束を果たしてもらいたい。
若干補足しておきます。
沖縄県の県知事は、反基地の象徴だった大田昌秀氏から保守系の稲嶺惠一氏、
仲井眞弘多 現知事と変わり、名護市長も移設容認派であるにも関わらず、普天間
基地移設はいまだ実現せず、計画修正を求めている名護市は岩国市同様、国の
補助金をカットされています。
自治体の首長は、東京都知事や大阪府知事のような例外を除いて、住民の意向
を無視できないものであり、知事が変われば事が進むというような簡単な話では
ありません。福田氏が公約を忠実に守るなら、協議は難航するでしょう。
その時に果たして国がすんなり補助金を出すのか、気になるところです。もし出さ
なければ、「背に腹は代えられない」と苦渋の選択をした市民は反発するでしょう。
井原 前市長が首を賭けた予算案を修正し、国の補助金を盛り込んだ市議会も、
修正を余儀なくされれば非難轟々でしょう。
今回、周辺の旧郡部で支持されなかったことが井原氏落選の大きな要因とも言わ
れていますが、仮に移転が進展して補助金を貰っても、周辺部がその恩恵に与れ
るかどうかも疑問です。
まあ、バラ色の夢を振り撒いたのは、福田氏自身でもあるのですが。
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