京都社会保障推進協議会ブログ

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京都府内 公立病院の動向(14)―京都市立病院の経営形態とPFI―その2

2008年11月18日 07時31分42秒 | 資料&情報
 京都市立病院の経営形態とPFIについての続きです。


 前回で、京都市医療施設審議会での「答申(素案)」の結論部分を掲載しましたが、率直に言って地方独立行政法人をめぐる問題点を吟味しないままでの審議状況だといわざるを得ません。市立病院(京北病院)の現状からの脱却を図るために、地方独立行政法人の独自性や柔軟性が魅力に感じるのだと思います。
 しかし、たとえば、「答申(素案)」の文中の『市民のニーズに対応した政策医療を安定的かつ継続的に提供するとともに、中長期的な計画性と機敏で柔軟な判断による経営を行っていくためには、制度的に計画性が担保され、かつ地方自治法、地方公務員法等の制約がない「地方独立行政法人化(非公務員型)」が、今後の京都市立病院事業に適しているといえる。』とありますが、独法化によって『政策医療を安定的かつ継続的に提供する(出来る)』根拠が真剣に検討されたとは思えません。

 京都市立病院の独立行政法人化を視野にした経営形態論議は、京都の病院にとって重大な問題です。京都大学附属病院や府立医科大学附属病院は大学の独立行政法人化により、付属病院も独法法人の病院事業所としてすでにスタートしていますが、公立病院そのものの独法化は全国で4法人のみです。
 *全国の地方独立行政法人化による病院経営は
  宮城県立こども病院(非公務員型)
  大阪府立病院機構(公務員型)
  岡山県精神科医療センター(公務員型)
  山形県・酒田市民病院機構(非公務員型)
 *他の政令指定都市で独法化を予定のところ
  神戸市(平成21年4月から独法化への移行を予定)
  福岡市(平成20年に「病院事業運営審議会」が独法化を答申)
 (以上、第6回施設審議会資料より)


 「独立行政法人」のルーツは、行政改革大綱(平成12年12月閣議決定)

 地方独立行政法人に先立ち、中央省庁改革として国立病院・療養所の独立行政法人が実施されますが、その大本の方針である「行政改革大綱」は、
1)新たな時代の要請に対応する観点から、内閣機能の強化、省庁の大くくり編成等による総合性、機動性を備えた行政の実現
2)国民の主体性と自己責任を尊重する観点から、民間能力の活用、事後監視型社会への移行等を図ることによる簡素かつ効率的な行政の実現
3)行政情報の公開と国民への説明責任の徹底を図ることによる国民に開かれた透明性の高い行政の実現
4)行政事務の電子化、窓口の利便性の向上等を図ることによる国民本位の質の高い行政サービスの実現
を目的としたものです。

 国立病院の独立行政法人化については、行政改革大綱の「行政の組織・事務の減量・効率化」の中で、

(2) 独立行政法人への移行
 減量効率化計画に基づき、1)国立公文書館等の国の事務事業の57の独立行政法人への移行(平成13年4月)を通則法及び各独立行政法人の設置法等に即して着実かつ円滑に実施するとともに、2)駐留軍等労働者の労務管理等事務の独立行政法人への移行(平成14年4月)及び統計センター(統計研修所を除く。)の独立行政法人への移行(平成15年4月)の準備を円滑に進めるほか、以下の措置を講ずる。
ア 自動車検査
  自動車検査(検査場における検査)については、平成14年9月に独立行政法人に移行する。
イ 造幣事業及び印刷事業
  減量効率化計画に基づき、平成15年度前半に予定されている独立行政法人への移行が円滑に実施できるよう、通貨の安定的かつ確実な供給、通貨に対する信認の保持など、通貨製造業務の特殊性を考慮し、その特殊性に基づく安定的な雇用関係に配慮しつつ、引き続き必要な検討を行い、所要の法律案の立案等、着実に移行のための準備を進める。
ウ 国立病院・療養所
  国立病院・療養所については、
  1) 昭和61年当初再編成計画の未実施施設(37施設)について、速やかに移譲、統合又は廃止を実施する
  2) 平成11年3月の再編成計画見直しによる追加対象施設(12施設)について、平成13年度末を目途に施設の廃止を含む対処方策を決定し、着実に実施するとともに、平成16年度に、各施設毎に業績評価ができるよう区分経理する単一の独立行政法人に移行することとし、そのための個別法案を平成14年の通常国会に提出する。
エ 国立大学及び大学共同利用機関等
  国立大学及び大学共同利用機関等の独立行政法人化については、平成15年までに結論を得ることとされていることを踏まえ、大学等の自主性を尊重しつつ、大学改革等の一環として検討するため、平成13年度中に有識者等による専門的な調査検討の結果を整理する。
オ その他
  食糧事務(食糧検査は民営化)、動物医薬品検査所、船舶検査、航空機検査及び無線等検査については、減量効率化計画における各事務及び事業の考え方を踏まえ引き続き検討を進める。その他の事務及び事業についても引き続き検討を進める。
(以上、行政改革大綱より)

 
 「大綱」が明らかにしているとおり、独立行政法人化の目的は「行政の組織・事務の減量・効率化」です。
 そして、行政改革の柱の一つである「地方分権の推進」の項で、「国における独立行政法人化の実施状況等を踏まえて、独立行政法人制度についての地方への導入を検討する。」とし、地方独立行政法問題の検討に入っていきます。


 行政改革大綱(平成12年12月1日閣議決定)



 地方独立行政法人の具体化に向けて、2つの研究会報告書が出されます。

 「地方独立行政法人制度の導入に関する研究会」の報告書(02年8月)は、政府がすすめてきた規制緩和・行政改革路線を「地方」に導入するための、法的な検証を行ったものです。その中では「地方独立行政法人制度を導入する意義」として、「行政改革会議最終報告(平成9年12月3日)においては、国民のニーズに即応した効率的な行政サービスの提供等を実現するという行政改革の基本理念を実現するため、① 政策の企画立案機能と実施機能の分離② 事務・事業の内容・性質に応じた最も適切な組織・運営の形態の追求③ 実施部門のうち一定のものにつき、事務・事業の垂直的減量を推進④ 効率性の向上、質の向上及び透明性の確保を図ることを目的として、独立行政法人を設立することとされている。一方、地方公共団体が提供する行政サービスについても、国において独立行政法人により提供されている行政サービスと同様のものを提供している機関が現に存在し、これらについて、効率的な行政サービスの提供等を実現するため、上記①~④に掲げる要請が存することは基本的に同様である。」「また、地方公共団体においては、従来は、行政機関自らが提供すべきサービスと民間が提供すべきサービスとの中間形態が必要となった場合に、自ら法人格を創出して事務を行わせるスキームが基本的にはなかったものの、公益法人、第三セクター等の活用により補ってきた面もある。このような実態の中で、地方独立行政法人制度を導入することは、地方公共団体が行政サービスを提供するに当たって、機動的、戦略的に対応するためのツールを付与するものと位置づけることができると考えられる。」と、『事務・事業の垂直的減量を推進』も含めた意義をあげ、そのためのツールとして位置づけています。


 地方独立行政法人制度の導入に関する研究会報告書


 また「地方公営企業と独立行政法人制度に関する研究会」報告書(02年12月)は、地方公営企業を対象にした独立行政法人化の論点を整理した報告書であり、その目的を「地方公共団体においても、行政改革大綱(平成12年12月1日閣議決定)において、「国における独立行政法人化の実施状況等を踏まえて、独立行政法人制度についての地方への導入を検討する」こととされており、総務省自治行政局に設置された「地方独立行政法人制度の導入に関する研究会」において、地方独立行政法人制度導入にあたっての様々な課題が検討され、平成14年8月に報告書が公表されたところである。同報告書では、主に一般行政部門に地方独立行政法人制度を導入することを前提に検討されている。しかしながら、一般行政部門とは異なる特性を有する地方公営企業分野に、一般行政分野と同様の地方独立行政
法人制度をそのまま導入することには問題があると考えられるため、総務省自治財政局において、平成14年5月に本研究会が設置されたところである。」としています。
 また、その目的として「地方公営企業分野を対象とした地方独立行政法人制度の制度設計を行うにあたっては、次のようなことを基本とすべきであると考えられ
る。
① 現行の地方公営企業制度は、公共的サービスを経済性に基づき効率的に提供する手法として定着しており、地方独立行政法人制度を採用するかどうかは、地方公共団体が、地方公営企業制度と地方独立行政法人制度の利点を比較して判断すべき事柄である。したがって、公営企業型地方独立行政法人の制度化は、地方公共団体に対して機動的戦略的に活用しうる新たな事業手法の選択肢を付与するものとして行う。
② 国の独立行政法人や通常の地方独立行政法人あるいは現行の地方公営企業制度を参考としながら、地方公共団体の組織と別組織ならではの利点を活かし、サービス提供手法の自由度をできるだけ高めながら効率的に事業を執行しうる新しい仕組みとして制度設計を行う。このようなことにより、適切な運用が確保される場合には、現行の地方公営企業制度に比べ、サービスの質の向上や料金の引き下げ、地方公共団体の負担の減少が期待しうる。」としています。
 「料金の引き下げ」が可能かどうかは不明?ですが、「公共団体の負担の減少」つまり独立採算制のいっそうの強化は確実になると思います。


 地方公営企業と独立行政法人制度に関する研究会報告書


(次回につづく)