「ま」さんは食いしん坊である。
醤油と七味のせんべいを食べて
みたらしとごまあんの串団子を食べて
焼き草もちを食べて
そば団子を食べて
そばを食べて
てんぷらを食べて
コーヒーを飲んで
サクランボのゼリーを食べて
近所の神社の縁日に立ち寄って
トルネードポテトを食べて
もうホントにお腹いっぱいのハズなんだけど、
初めて新幹線を見た少年のように 目をきらきらさせて
『あそことここのお好み焼きを食べ比べしたい!』と言い出した。
3時ころにせんべいを食べて お好み食べたいと言ったのは8時ころの話。
「ま」さんは 食べたいと思ったものは 必ず食べる。
阻止しようとすると 『あとで隠れて食べるよりいいでしょ』と 上目づかいに見られたりするので
私としては なかなか手に負えない部分もある。(つか、私とて量のコントロールは苦手だ。)
そして、お祭りという一種独特の雰囲気の中で 私の満腹中枢も半ばイカレていた。
つまり、うかれていた。
手分けしてお好み焼きを買い求めると ずっしりとした重みに 二人は真剣勝負を覚悟した。
いよいよ
小麦粉とキャベツとソースの塊との対決がスタートした。
これがなかなか手強い。
いつまでも第一線で踏ん張り続ける三沢光晴氏と張り合うレベルだ。
半熟の目玉焼きを冠した むちむちとした生地にはてんこ盛りのキャベツが絡み
ちょっとした山脈を形成している。
どろどろの熱いお好みソース、コクを出すぶちゃぶちゃのマヨネーズ、
祭りのクライマックスを飾るににふさわしいボリュームである。
・・・・
もう既に、お好み焼きを受け取ったときから予想はついていたが
私は早い段階でギブアップをした。
役立たずもいいところだ。
「ま」さんは戦い続ける。
正直、美味とは言えない二つのお好み焼きを
堅実な戦法で 確実にひと口ひと口片づけて行く。
クラッシャーがビルを解体していくのによく似てる。
すべてのお好み焼きを平らげた時
「ま」さんはテロ攻撃を未然に防いだCTUのメンバーのような表情をした。
なすべき仕事を終えた男は 充実感で光り輝いていた。
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