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パターソン

2017年09月04日 | 映画

ジム・ジャームッシュ監督の最新作。ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手の穏やかな日常を、一週間にわたって切り取ったヒューマンドラマです。アダム・ドライバー主演、「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies)「彼女が消えた浜辺」(About Elly)のゴルシフテ・ファラハニが共演しています。

パターソン (Paterson)

新聞のレビューを読んで心惹かれ、見に行った本作。久しぶりに武蔵野館に行ったら、いつの間にか新しくきれいになっていて驚きました。本作のコーナーには、ジャームッシュ監督の過去作品の人気投票などあり、劇場スタッフの気持ちが伝わってくる温かい演出でした。

本作は詩的なセンスにあふれた、アートのような作品。タイプとしてはブルックリンが舞台の「スモーク」や「フランシス・ハ」のテイストに似ているでしょうか。大きな事件は起こりませんが、平穏な日々こそが愛おしく感じられるすてきな作品でした。

パターソンに住むパターソン(アダム・ドライバー)はバスの運転手。朝早くベッドの中で妻とたわいのない話をして仕事に向かい、車庫係のドニ―とあいさつをかわします。一日の仕事を終えると、家で妻と夕食をとり、愛犬マーヴィンと散歩。途中、行きつけのバーでビールを一杯ひっかけるのがささやかな楽しみ、という規則正しい毎日です。

パターソンは詩を書くのが趣味で、毎日秘密のノートに詩を書きためています。妻はどこかに発表するべきだと進言しますが、彼は意に介しません。そんな妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)はモノクロのジオメトリック柄が好きで、部屋をペイントし、カップケーキを作ります。そして突然カントリー歌手を目指し、ギターの練習を始めます。

物静かなパターソンとポジティブ思考のローラ。パターソンが誰に見せるわけでもない詩をひたすら書いているのに対し、ローラがいいこと考えた~♪とばかりに、ペイントやお料理、新しいことにどんどんチャレンジしているのがおもしろい。ローラの作ったカップケーキがバザーで人気を博し、その売上げで2人は久しぶりに食事と映画にでかけます。

仲が良いけれどべたべたしていなくて、それぞれの世界をもっているのがすてきでした。2人の共通点はクリエイティビティでしょうか。実際、パターソンとローラを見ていると、なぜだかむくむくと創作意欲がわきあがってくるのを感じました。何かを作りたい、残したい、というのは人間の根源的な欲求なのかもしれません。

映画そのものが、詩が韻を踏むように、同じモチーフが繰り返し登場するのも印象的でした。なぜか度々双子が登場し、詩が好きな人たちとの出会いがあります。2人の部屋は、ローラが好きなモノクロのジオメトリック柄がどんどん増えていくし、思えば繰り返される毎日もしかり。

主人公の名前がパターソンで、街の名前がパターソン。そして日本からやってきた詩の好きな男性(永瀬正敏)が持っていた本が、パターソン出身の詩人、ウィリアムズ・カルロス・ウィリアムズが書いた「パターソン」という名の詩集。

永瀬さんの登場はやや唐突に感じられましたが、出会うべくして出会ったのだ、と納得のいくラストでした。


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6 コメント

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ジャームッシュ! (ごみつ)
2017-09-05 21:46:47
こんばんは!

ジャームッシュの新作か~。主演もアダム・ドライバーで、面白そうです!

永瀬正敏は、前に「ミステリー・トレイン」に出ていたので、その関係でのキャスティングかしら?

ジャームッシュ監督は小津安二郎の大ファンなので、日本人をキャスティングしてくれるのかも・・ですね。

私も久々でジャームッシュ映画観たくなりました~。
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☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2017-09-06 09:32:56
ごみつさん、おはようございます♪
ジャームッシュ監督、実は初めてでしたがなかなか好みでした!
近いうちに、他の作品もいくつか見ようと思っています。
アダム・ドライバーはファンというわけではないですが
出演作はほとんど見ているんですよね...
選ぶ作品が、私の好みに合うのかな?
永瀬さんは、監督のお気に入りなのかも?しれませんね。^^
さりげなく見えて、細部への緻密なこだわりが感じられる作品でした☆
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発掘者 (だぶるえんだー)
2017-10-13 20:20:40
はじめまして。ごみつ通信にときどき書きこんでいるものです。
この作品には、僕もひきつけられています。歳をとると、やはり落ち着いた映画が見たくなるものでして。おお!!たったいま思い出したのですが、昔読んだ漫画作品(めずらしく脚本家が主人公でした)でジャームッシュ監督が絶賛されていましたよ。
ジャームッシュさんも成熟したのでしょう。
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☆ だぶるえんだーさま ☆ (セレンディピティ)
2017-10-13 23:55:48
だぶるえんだーさま、はじめまして!
ごみつさんのところで、よくお見かけしています。
このたびはコメントを残してくださり、ありがとうございました。

ジャームッシュ作品、実は私は初めて見たのですが
このなんともいえないゆる~い雰囲気が気に入りました。
先日「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を見ましたが
これも不思議なユーモアのある作品ですね。
でも若い頃だったら、このよさがわからなかったかもしれない...大人のための映画ですね。
万人受けはしないかもしれませんが、一部の方に絶賛されるのはわかる気がします。^^
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黄昏の彼方へ (だぶるえんだー)
2017-10-14 20:59:52
読んでくださってありがとう。
「パターソン」
来月、わが市の映画館でも上映されるのです。楽しみにしています。

ふと気がついたのですが、発表の予定がない(せいぜい親しい人に見せるくらい)なら創作してはいけない!!などという法律はないのです。自分自身のため。少数の親しい人のため。密に創作するというのも素晴らしいでしょう。今後はそういう目立たない創作者が増えるのでは。
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☆ だぶるえんだーさま ☆ (セレンディピティ)
2017-10-15 00:43:58
だぶるえんだーさま、再びありがとうございます。
「パターソン」来月公開されるのですね!
是非是非、楽しみにご覧になってください。

たしかに...
もともと日記は人に見せるものではなかったのに
こうしてブログで堂々と公開するものになってしまった。
でも人の目を意識することで気持ちを自制できて
私の場合は助かっているかな?^^
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