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クリムト展 ウィーンと日本1900

2019年05月10日 | アート

京都・奈良旅行記をようやく仕上げたので、今度は大型連休のことをぼちぼちと...。連休中は近くでのんびりとすごしていました。まずは、東京都美術館で開催中の「クリムト展 ウィーンと日本1900」を見に行きました。

今年は没後100年のクリムト・イヤーで、現在、クリムトとウィーン世紀末美術を題材にした展覧会が、国立新美術館と目黒区美術館でも開催されています。本展は、日本初公開を含むクリムトの絵画25点以上が展示され、過去最大規模の展覧会です。耽美で官能的なクリムトの世界を堪能しました。

ポスターのビジュアルは、クリムトの代表作で旧約聖書に題材を求めた「ユディト I」(1901)の一部です。実物の作品は、将軍の首を抱えたユディトの裸の半身が、恍惚の表情とともに描かれています。クリムト自身がデザインした黄金の額に縁どられ、神々しいほどの輝きを放っていました。

ヘレーネ・クリムトの肖像 1898

クリムトが金箔を使う前の初期の作品から。描かれているのはクリムトの弟の娘ヘレーネで、6歳の時の肖像画です。あどけない横顔には少女の神秘性も感じられ、心に残った作品です。「レオン」のマチルダを思い出しました。

女友だち I(姉妹たち) 1907

日本美術からも影響を受けたクリムト。極端に細長い絵は掛け軸を模しているのでしょうか。二人の女性は美人画のようで、下の方には平面的な市松模様も見えます。

赤子(ゆりかご) 1917

日本の着物を感じさせる色とりどりの布地の重なりの上に、赤ちゃんの顔がのぞいています。

ベートーヴェン・フリーズ(原寸大複製) 1984(オリジナルは1901-02)

クリムトら前衛的な芸術家たちは、保守的な芸術家組合に対抗して、”ウィーン分離派” を結成しました。本展では、クリムトがウィーン分離派展に出品した、3面からなる壁画「ベートーヴェン・フリーズ」の実物大の複製を見ることができました。

テーマはベートーヴェンの交響曲第9番。上は最後を締めくくる1面で「歓喜の歌」を表現しています。

アッター湖畔のカンマ―白 III 1909/10

オーストリアの避暑地にあるアッター湖の風景です。点描で描かれた緑と建物、湖は、夏のきらきらとした光をとらえていて、まるで印象派絵画のよう。はかなくも美しいです。

オイゲニア・プリマフェージの肖像 1913/14

パトロンだった銀行家の妻を描いた肖像画。華やかな色使いに豊かさが感じられ、魅力的な作品です。右上には鳳凰が描かれていて、東洋の影響が見られます。

女の三世代 1905

ローマ国立近代美術館所蔵で、日本初公開となる作品。”生命の円環” をテーマに、人間の一生の幼年期、青年期、老年期の三段階を寓意的に表しているそうです。私は、ナオミ・ワッツの「愛する人」(Mother and Child)を思い出しました。

***

最後に下世話な話を少々。クリムトは生涯結婚していませんが、愛人が14人?もいて、子どももたくさんいたそうです。一番驚いたのは作曲家マーラーの妻も(マーラーとの結婚前に)クリムトの恋人だったことがあるとか。でもそうした奔放な恋愛の数々が、作品を生み出すエネルギーとなっていたのでしょうね。

そしてクリムトの芸術家としての出発点は、弟らとともに工芸学校で学んだ彫金でした。本展では、クリムト兄弟による初期の頃の彫金作品も見ることができました。のちに油彩画の中に金箔を取り入れたのも、クリムトにとっては自然な芸術表現だったのでしょうね。


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12 コメント

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fin de siecle (ごみつ)
2019-05-11 01:18:10
こんばんは!

わ~ん、私もこのクリムト展だけは絶対に行きたいんですよね~。
何とか時間をつくって行ってきます!
GWは混んでませんでしたか~!?


昔、祖母が端切れを使って「かい巻き」(ご存知なかったググってみて)を作ってくれたのですが、色んな柄がまぜこぜになってて、「赤子」の絵はそれを思い出しました。(;^ω^)

クリムトだけの展覧会は行った事がないのでとても楽しみです。
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☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2019-05-12 00:27:02
ごみつさん、こんばんは。
クリムト展、よかったです♪
7月10日までやっているので、お時間ができたら
是非ご覧になってみてください☆
私が行った時は入場制限していて、会場に入るのに10分待ちましたが
それゆえそこまで混んでいなくて、どの作品もじっくり見ることができました。

ごみつさんのお祖母さまが作られた「かい巻き」すてきですね。
お話をうかがうと、なるほど「赤子」みたい!
カラフルな布地がパッチワークのようにつながっていて愛らしい作品でした☆

本展はクリムトだけではないのですが
同時代を生きたクリムトの弟や、ウィーン分離派の画家たちの作品を見ることで
クリムトが生きた時代を感じ取ることができましたよ。
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特徴的 (ノルウェーまだ~む)
2019-05-12 00:40:26
セレンさん☆
クリムトは唯一無二の特徴的な絵画を制作する画家ですよね~
金箔を使ったのもそうですが、どの画家とも似ていない女性の繊細な表情を見事に描いていますね☆
ポスターの様な図案はなるほど日本画から影響を受けたかんじが確かにしますっ

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☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2019-05-12 10:10:09
まだ~むさん、こんにちは。
クリムトの作品の特徴といえば、金箔と官能ですが
その二つの謎が解けて納得しました。
どきっとするような女性の表情に、感性を刺激されました☆

別の展覧会で、クリムトが日本の春画からも影響を受けたと知りましたが
本展でも日本画の影響がわかるようにひとつのセクションとなっていて興味深かったです☆
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Unknown (kinkacho)
2019-05-13 22:23:54
こんにちは。
クリムトの退廃的で、耽美な画風は実物をゆっくり鑑賞したいですよね。
ウィーンで地下鉄やら路面電車を使って、現物を追っかけたのですが、慌ただしくて印象が薄い...残念!
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☆ kinkachoさま ☆ (セレンディピティ)
2019-05-13 23:40:12
kinkachoさん、こんばんは♪
旅先ではすごいアートをたくさん見るので
どうしてもひとつひとつの印象は薄まってしまいますよね。
今回はクリムトにフォーカスした展覧会で
耽美な世界をじっくり見ることができました。
初期の頃の作品や風景画などもあって興味深かったです☆
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Unknown (asa)
2019-05-14 11:29:16
セレンさんこんにちは
クリムト展が始まってから毎日通勤で使用する上野駅は美術館へ向かうらしい人で多くなったように感じます。近いのだから行きたいと思いつつ行けていません。。
クリムトを見るとミュシャを思い出してしまう私、、、単純かもしれませんが同じオーストリア出身という事がリンクしてしまっているのかもしれませんね(苦笑)。どちらもとても好きですが、セレンさんの挙げられているヘレーネの肖像、素朴ですがとても引き込まれる雰囲気があってとっても素敵ですね。
このGWは3年ぶりとなる瀬戸内トリエンナーレに出掛けました。9年目にして初めて連休ど真ん中に訪れたのですが、これまで見ていた島とは違う島かと思うほどの人人人でした。それでもこの時期ならではの色彩豊かな植物に彩られた島々をアートと共に愛でられてとても素敵な時間でした。
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☆ asaさま ☆ (セレンディピティ)
2019-05-14 20:46:18
asaさん、こんばんは。
asaさんは上野にお勤めとおっしゃってましたね。
小さなお子さんがいらっしゃると、なかなかお仕事帰りに美術館へ
というわけにはいかないかもしれませんが、チャンスがありましたら...。
クリムトもミュシャも、どちらも女性の美しさを見出した芸術家ですね。
ヘレーネの肖像、私もとっても気に入りました☆
asaさんは、GWは瀬戸内トリエンナーレに行かれたのですね♪
私が直島を訪れたのはかれこれ8年前になりますが
年々、アートの島として人気が高まっているようですね。
いつかトリエンナーレにも行ってみたいです☆
すてきな時間をすごされましたね。
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クリムト  (もののはじめのiina)
2019-07-03 11:48:57
西洋の画家の色遣いは、なんとも多いですね。

ポスターの図柄配置などは、現代に使っても斬新でした。

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☆ もののはじめのiinaさま ☆ (セレンディピティ)
2019-07-03 16:20:32
iinaさん、こんにちは♪
コメントをありがとうございます。

クリムト展、よかったですね。
金箔を使ったクリムトならではの官能的な作品のほか
家族を描いた作品や、風景画、彫金の作品など
クリムトの幅広い魅力を堪能することができました。
複製のベートーヴェン・フリーズも大迫力でした。
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