ミュージカル「ハミルトン」のリン=マヌエル・ミランダが、ハミルトンの前に手掛けた名作ブロードウェイ・ミュージカルの映画化です。
ミュージカルが好きなので楽しみにしていました。「クレイジー・リッチ!」(Crazy Rich Asians)のジョン・M・チュウが監督を務め、原作者であるリン=マヌエル・ミランダが製作を務めています。(ちょこっと出演も)
舞台となるのは、ラテン系移民が多く住む街、ワシントンハイツ。マンハッタンのハーレムよりもさらに北のエリアで、私にはほとんどなじみがないのですが、映画の中でランドマークとして登場するジョージ・ワシントン・ブリッジは
ニューヨークからニュージャージー、さらにその先まで出かける時に高速道路で必ず通る橋なので、とても懐かしかったです。この映画は、ドミニカやプエルトリコ等から移り住んだラテン系移民たちの物語。序盤から彼らのパワフルなラップや音楽、情熱的なダンス
カラフルで少々露出多めのファッションに圧倒されました。音響のいいシアターで見たので、迫力満点でした! 美容院に集まる女性たちのかまびすしいおしゃべりや、れんが造りのビルの鉄製の非常階段で語り合う恋人たちのシーンなど
ウエストサイドストーリーへのオマージュを感じさせる場面もありました。プールを俯瞰した大勢によるダンスや、れんがの壁をバーティカルに使ったニーナとベニーのダンス、ビルの上から布地が垂れ幕のように下りてくるシーンなど、映像表現も印象的でした。
私が涙ぐんでしまったのは、街一番の秀才だったニーナがスタンフォード大学に進学するも、差別と孤独、親の経済的負担への申し訳なさから、大学を辞めることを思い悩むシーン。
Breathe - In The Heights Motion Picture Soundtrack (Official Audio)
でも、ニーナの周りに同じような人がいないだけで、こういう努力や苦労は、アジア系にとっては結構当たり前だったりするのですよね。それに親の立場としても彼女にこんなことであきらめて欲しくない、と思っていたので、彼女の決断にほっとしました。
私は、ウスナビの店で毎日のようにLOTOを買う彼らの、棚からぼたもちを期待する考えに共感できなかったりもするのですが、ソニーたちが平等と機会を求めて社会運動に参加する姿、そして停電の夜に
街のお母さん的存在であるアブエラが、これまでの人生を振り返り、苦難への思いのたけをぶつける歌に頭をガツンとなぐられたような衝撃を覚えました。
Paciencia Y Fe - In The Heights Motion Picture Soundtrack (Official Audio)
アブエラがアメリカに渡ってきたのは、ちょうどウエストサイドストーリーの時代でしょうか。その苦難の道は現代とは比べ物にならなかったことでしょう。そして彼女たちを支えたのが信仰であり、幸運に与ることだったのでしょうね。
冒頭のドミニカのビーチの場面から、どういう結末になるのかと思いましたが、なるほどこれなら納得、というすてきなエンディングでした。