ナチス政権下のドイツを、ヒトラーに心酔する10歳の少年の目を通してコミカルに描いたヒューマンドラマです。
前評判がすこぶる高くて、アカデミー賞の作品賞にもノミネートされていたので気になっていた本作。日経金曜夕刊のレビューでも絶賛されていたので、イーストウッドの新作と迷って、まずはこちらを見ることにしました。劇場もほぼ満席という盛況ぶりでした。
でも... 私にとっては期待を大きく上回るものではなく、まあまあ...といったところでした。戦争を題材にしたコメディは、判断が難しいですね。レトロな映像は美しく、子どもたちもかわいかったのですが...
何が引っかかったのか、ずっと原因を考えていたのですが、たぶん、ナチスやヒトラーを美化している(マイルドにしている)ように感じられたのが、私の中では受け入れられなかったのだと思います。ワイティティ監督自身は決してそんなつもりはなかったのだと思いますが。
本作と比較される「ライフ・イズ・ビューティフル」(1997) は私も大好きな作品ですが、ナチスを美化した場面はなかったと思います。「ライフ~」では、暴力や憎しみを、息子の目に一切触れさせなかった父親の愛に心を打たれましたが、本作のジョジョは日常的に暴力や死を見せられていたのが気になりました。
それから、反ナチス運動に関わり、ユダヤ人の少女を匿っている母親(スカーレット・ヨハンソン)に育てられた子どもが、はたしてヒトラーに心酔するかしら? 映画を見ている時は、そんなところも違和感を覚えました。
でもあとから、ジョジョが10歳で入隊させられていたヒトラーユーゲントについて検索していくうちに、映画でははっきりとは描かれていませんでしたが、当時のドイツの子どもたちは洗脳され、親さえも拒絶するように教育されていたことを知り、少し考えを改めました。
10歳のジョジョが入隊したヒトラーユーゲントとは? ワイティティが描く人間の愛情深さと希望(シネマズ)
ちょっと辛口の感想になってしまいましたが、もちろんすてきな場面もたくさんありました。なんといってもジョジョがかわいかったし、お友だちのヨーキーがいい味を出していて最高でした。それからジョジョと、ユダヤ人の少女エルサとの姉弟のような友情も微笑ましかった。
サム・ロックウェル演じる鬼教官の、愛ある行動には泣けました...。ワイティティ監督演じる(空想上の)ヒトラーははじけすぎでしたが、いつもそばでジョジョを見ていて励ましてくれる父親代わりの存在だったのでしょうね。