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ジョーカー

2019年10月19日 | 映画

ホアキン・フェニックスが主演する、バットマンの悪役ジョーカーの誕生物語です。

ジョーカー (Joker)

公開前から傑作か、それとも問題作かと、国内外で大きく話題になっていた作品。ヴェネツィア国際映画祭ではアメコミ初の最高賞を受賞しました。日米同時公開でしたが、アメリカではジョーカーに影響を受けて銃を乱射する人が出るかもしれないと、厳戒態勢の中で公開されたシアターもあったとか。

そんな話題性もあって楽しみにしていた作品です。授業が休講になって急きょ見に行きましたが、平日の朝一番の回だというのにシアターはほぼ満席でした。ひと足先に見ていた息子からも興奮してLINEが来ていたので、この日の夜はテキストで1時間以上やり取りしてしまいました。見た後で無性に誰かと語り合いたくなる作品でした。

ジョーカーは、アメコミに出てくる悪役で、この作品はその誕生物語という映画独自のストーリーです。荒唐無稽なところは全くなく、リアルでシリアスな、大人のための考えさせられる作品となっていました。不寛容で生きづらい今の時代を反映していて、社会的、政治的メッセージも感じとれる、深い人間ドラマです。

舞台は荒廃したゴッサムシティ。コメディアンになることを夢見ながら、道化師として働き、孤独で報われない日々を送っていたアーサー(ホアキン・フェニックス)は、電車の中で3人のエリート社員たちにからまれて暴行されます。その時、とっさに持っていた銃で彼らを撃ち殺したところから、物語は動き始めます。

社会の変化の中で置き去りにされ、閉塞感を抱くようになった人が、ある日耐えられずに爆発するという事件は、ここ近年、例えば秋葉原の事件とか、日本でもたびたび起こっています。でもジョーカーがそうした犯罪者と決定的に違うのは、彼の怒りが弱者に向かわないということ。彼の犯罪にはちゃんと理由があるのです。

例えば発端になった3人にしても、ほんとうにクズなんですよね。 (私は「アメリカン・サイコ」を思い出しました) とはいえ、こういうクズがうまく世渡りしているのも現実で... いや、犯罪は絶対許されるべきではないのだけれど、うしろめたさを感じながらも、ちょっとすかっとしている自分がいました。

これが例えば、スパイダーマンだったら、悪者をやっつけた、よくやった!と素直に称賛していたのではないかと思います。ジョーカーだとどうしてもやもやしてしまうのか。自分の良心という仮面が引きはがされるような気がしてしまうからかもしれません。

アーサーに対しては、最初はまったく共感できなかったのに、ジョーカーとなった彼が、テレビのショーに華麗にステップを踏みながら登場した時には、カッコいい~ なんて思ったりして。一方ではそういう自分を認めたいような、認めたくないような、不思議な葛藤も起こっていました。

冷静に考えると、自分でもどうかしていたと思いますが、そうさせるだけの説得力のあるストーリーと、それを裏付けるホアキン・フェニックスの怪演がすごかった。是非見て体感していただきたいです。

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