しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「沈底魚」 曽根圭介 

2017年10月04日 | 読書
「沈底魚」 曽根圭介   講談社   

警視庁外事二課は、中国と北朝鮮の事案を扱う。
朝毎新聞の朝刊一面に、『中国に機密情報漏洩、現職国会議員が関与か 米国亡命の中国人外交官が、重要証言』が載る。
中国と北朝鮮の事案を扱う警視庁外事二課は緊急に招集される。
捜査の指揮を取るのは凸井美咲理事官。
外事二課は癖のある捜査員が多く、特に1番のベテラン五味は慕う後輩も多く“五味一家”を形成する。
同じベテランの不破は1匹狼で、相棒の若林も無口で人付き合いをしない人間だった。

亡命者は、日本に大物の沈底魚が潜っていると言う。
沈底魚とは何年もの間一市民として暮らし、指示があると工作員として活動を始める。
そして、その沈底魚は国会議員だと言う。
凸井の情報によると、亡命者は亡命前からアメリカに監視下にあり供述はあてにならないと判断された。
しかし、別ルートの情報があり、あながち無視も出来なくなったとの事。
それは機密文書が漏れて、中国側に渡った事を知らせる情報だった。
捜査が開始される。
やがて、五味は国会議員の芥川健太郎に目をつける。
五味は優秀な情報屋「肉まん」を抱えていた。
芥川の秘書、伊藤真理は不破と小中高と同じ学友で、この捜査が始まる直前に、偶然伊藤と会っていた。








スパイ小説。
色々と入り組んで、筋を読み間違えないようにと慎重に読む。
登場人物たちも、何が本当でどれが偽装か判断するように取り組んでいるのだと思いつつ。
ただ、そんな知能戦よりも、お互いを威嚇し合い信頼関係もない世界で少々嫌気がさす。
そして思った。
信頼関係と思うと、自分の国の為と言うならまだ分かるが、他国の為に自分の国を裏切る人間を信用出来るのだろうか、と。
自分の国を裏切れるなら、誰でも裏切れるだろう。
それこそ二重スパイがゴロゴロいそうだ。
そして、スパイの存在価値は今もあるのだろうかと気になった。
これは2007年の現代の話と捉えていいと思うが。
現代だったら、宇宙からの写真とか、ハッカーとか。
そういう物の方が、何かを探り出すには適しているのではないだろうか。
この物語も、結局スパイそのものの存在を大事にしている。
が、双方ともそこまで守るべき人物なのだろうか。
何だか現実味を感じられなくなった。
他の事件は起きていないし。
ただ、それだけの為に民間人や警察官まで殺すような事になるなんて。
そうなったら、殺人事件を解決する方に力を注いで欲しいと思ってしまう。
そうか、これがボッシュが「死角」で思ったことなのだな。

色々暗号のように名前を付けるとスパイ物語らしくなるのだ。
沈底魚はマクベスと呼ばれ、謎の情報をくれるのはホトトギス。
警察内のスパイはモグラ。
肉まん、シベリウスと言う呼び名も。


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