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しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ヴォイス 西のはての年代記Ⅱ」  アーシュラ・K・ル=グィン 

2007年10月10日 | 読書
海岸沿いの都市アンサルはかつて大学や図書館があり「美しく賢いアンサル」と呼ばれていた。
しかし今は、文字を邪悪なものとする東方の砂漠から来たオルド人により破壊され、支配されていた。
ガルヴァ館(マンド)は市内でもっとも立派な建物だったが、オルド人は破壊し略奪した後は、悪魔と悪霊がいる館として誰も住まなかった。
ガルヴァマンドは主要部分は石造りだったので、それほど酷い打撃は受けなかった。
17歳のメマーはカルヴァマンドに道の長、サルター・ガルヴァたちと暮らしていた。
カルヴァマンドには隠された図書館があり、そこには秘密の文字を書いて入る。
入れるのは道の長と、母親がするのを見よう見まねで覚えたメマーだけだった。
メマーはそこで、道の長から読み書きすることを学ぶ。
ある時、メマーは一冊の本がうめき声を上げるのを聞く。
そんなアンサルに<高地>から創り人であり語り人でもある、オレック・カスプロと妻のグライ・バーレがやってくる。
オレックはオルドのガント(王)に呼ばれていたが、アンサルに来たのは、道の長、サルター・ガルヴァに会う為だった。



魔法の香りがする世界だが特に超能力を持つ人物もいなく、自分たちとは違う新しい習性を知らなくてもいいので、すんなりと物語に入っていくことが出来る。
主人公の少女、メマーはそんな中、道の長と2人で、普通の人たちと違った能力を少しずつ見せていくのだが。
これはメマーの活躍の物語だが、メマーが声を聞くことが出来たには、メマーに始めから備わっていた力なか、読み書きを習い覚えたからなのだろうか。
「ギフト」とは違うのか、同じものなのかはっきりしなかった。

この物語で興味深いのは、アンサルとオルドの二つの国の違いだ。
二つの国の対比が善と悪のようにはっきりしている。
ひとつの神だけを信じるオルド。
いたるところにそれぞれの神がいるアンサル。
「言葉は唯一神、アッスの息にほかならず、アッスの息によってのみ発せられるべきもの。それを書きものに閉じ込めることは、忌まわしき冒涜行為」
それゆえに、オルドはアンサルの本をすべて破壊した。
自分たちの神聖さを守る為に、反するものを破壊していったのだ。
本とともにそれに係わっていた人間の命も。
「アンサルの戦いの武器は剣ではなく言葉だった。わたしたちは残虐行為を卒業していた」
というアンサルは力による攻撃にはひとたまりもなかった。

オルドは自分たちが信じるものに反するものを破壊しる為にアンサルにやってきた。
なんだか、現在にもある思考だし、実際にも起こっている。

西のはての年代記Ⅰ「ギフト」のオレックとグライも登場する。

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