しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「闇に問いかける男」 トマス・H・クック  

2006年10月27日 | 読書
1952年秋、公園で8歳の少女キャシーが殺害された。
公園に住み、遊ぶ少女を見ていたアルバート・スモールズが容疑者として逮捕される。
殺害を否定するスモールズ。物的証拠は見付からず、釈放まで後11時間。
事件を担当するのは、戦争で重苦しい闇を抱え込んでしまったユダヤ人のノーマン・コーエン刑事と、数年前に幼い娘を殺され深い憎しみを抱えているジャック・ピアース刑事。
ふたりはそれぞれの思いから、容疑者を絶対に社会に帰したくないと思っていた。
スモールズは、深い憂鬱が巣くい、内的な苦悩に苛まれている見た目のちょっと異様な若者だった。
自分の過去を全く話そうをしない点になにか手掛かりがあるのではと探るのだが、進展のないまま時間が過ぎていく。
刑事部長のトマス・バーグは、逮捕時の調書から何か見つけようとしていた。
その一方でバーグは自分が見捨てた息子が麻薬中毒で死にかけていることを考えていた。


なんとも悲しい、やり切れない結末の物語。
一応読者には真相はわかるが、物語の人物には分からない。
ひとつおまけのような意外な事実がわかるが。
登場人物はみんな、深い闇を抱えている。
しかし、同じような思いでも、相手のことはなかなか分からない。
容疑者のスモールズが本当に犯人なのかは分からない。
どちらかというと、犯人ではない印象を受ける。
なので、読んでいて執拗に責める刑事に感情移入は出来ず、かえってスモールズの方に同情を感じる。
警察の横暴な取り調べが、数多くの冤罪を生み出したという事実が浮かぶ。
決め付ける怖さ。普通でないものは排除したがる気持ち。
世の中の不条理をあらわしたような物語。

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