しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「6シックス ステイン」 福井晴敏

2007年09月08日 | 読書
短編集
防衛庁の極秘組織、防衛庁情報局やSOF(特殊要撃部隊)、通称市ヶ谷に席を置いた者たちの物語。

「いまできる最善のこと」
今は建築業界に席を置く元、市ヶ谷の中里裕司は、小湊鉄道の終電で、接待にあたふたしている部下に携帯電話で指示を出しながら、いらいらしていた。
乗っているのは自分と、小学生の男の子だけだった。
ところが、途中の駅から乗り込んだ男が、中里の命を狙う。

「畳算」
市ヶ谷に1通の手紙が送られてくる。
それは、ロシアのスパイだった男が預かっていた、スーツケースに入った核爆弾のありかだった。
それを取り戻す為に、男の妻だった元芸者、牧野久江がやっている山奥の民宿・清音壮を訪れた堤洋隆。
堤の正体をすぐに見抜いた久江は、スーツケースを売りつけようとする。

「サクラ」
高藤征一が同僚の代役として、サブジェクト(監視対象者)のウォッチャー(監視要員)として組んだのはまだ10代にしか見えない伝法真希だった。
高藤は人生を投げやりに捉えている真希に説教めいたことを言ってしまう。

「媽媽」
結婚、出産で市ヶ谷を引退した根岸由美子は職場復帰していた。
海賊シンジケート「九美神(ミューズ)」とかかわりを持つ男、ユイ・ヨンルイ(余永録)を探していて、確保。
しかし、自分の関知出来ない所で裏取引が行われ、ユイを引き渡さなければならなくなる。
それが納得がいかなかい由美子はユイを助けようとする。

「断ち切る」
「媽媽」の続編といえる物語。
元断ち切り掏りの椛山為一。
もう引退していた椛山に仕事を依頼しにきたのは、現役の時に自分を捕まえようとしていた刑事だった。
本来の依頼人という女性を見た椛山は仕事を引き受ける。

「920を待ちながら」
須賀義郎はタクシーの運転手だが、防衛庁情報局の非常勤務工作員(AP)でもあった。
ある時、仕事で出会った若いSOFの無愛想な男。
何も話さない男は名前を聞かれ、5人組アイドルグループの写真を見て「木村」と名乗る。



今までの福井さんの作品を読んでいる方が楽しめる、と思う。
こういう世界に馴染みがあるので、日常の中に突然起こる事件をすんなりと受け入れられるから。
短編だからか、日常でない事件が突然起こる感じがしたので。
日常に戦争が持ち込まれる感覚。
しかし、実際にはどうなのだろう。現実にあることなのかも知れないと思えるところが怖い。
そして、実際にあったら怖いと同時に、知られずに活動している人たちが寂しいし哀しい。

「920を待ちながら」が面白かった。
それは、この中では長い方でじっくり書かれているからかも知れない。
ひとりひとりの人物像がはっきりする。
福井作品によく登場する、無口な若いSOFの隊員も登場する。
名前聞かれて、近くに貼ってあった5人組アイドルグループの写真を見て「木村」と名乗るところも、今まで登場して来た人物に似ている。
こういう性格の人物が好きなんだろうなと思うが、SOFという役目や、生い立ちからそうならざるを得ないのか。
でも、それでもトコトン明るくおしゃべり、なんていう人物もいても面白いのではと思ってしまったが、無理か。
裏の裏の裏がある物語で、よく考えないとこんがらかってしまいそう。
しかし、「サクラ」もそうだが、こんなに裏の裏があると何も信じられなくなってしまいそうだ。
「920を待ちながら」では、懐かしい人物が登場する。サプライズ。
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