しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「後巷説百物語」 京極夏彦 

2009年07月22日 | 読書
「後巷説百物語」 京極夏彦      角川書店

「赤えいの魚」
男鹿地方にある幻の島、戎島(えびすじま)。
百介は盗賊に人質にされ海に出て、辿り着いてしまう。
そこは陸とは隔離された島で、独自の掟があった。

「天火」
小火騒ぎが続いた折、油屋の根本屋が全焼して死人が出る。
小火の現場では、根本屋の後妻、美代が目撃されていたので、火付けの犯人と疑われていた。
美代は根本屋の火事は火球が飛び込んできて、その日には前妻の顔があったという。

「手負蛇」
蛇を殺す時は、手負いにせず、完全に殺せという。
70年振りに開けた石の箱から、蛇が飛び出し首を咬まれて死亡する事故があった。
蛇はそんなに長く生きられるものだろうか。

「山男」
攫われた娘が3年経って、赤子を連れて見付かる。
今と昔、同じ様な展開で事件は起こり結末を迎える。

「五位の光」
公房卿が覚えていたこと。
それは青く光る女人から父親の手に渡された幼い自分。
女人はその後、青く光る鷺になり飛んで行く。

「風の神」
公房卿の息子で儒学者、由良公篤の塾で、百物語をすることになる。




“恵比寿像の顔が赤くなるときは、恐ろしい災厄が襲う”
明治10年。
一等巡査の矢作剣之進は、ある島の珍奇な伝説の真偽をめぐり、友人らと言い争いになる。
論議に収拾はつかず、ついに一同は、解を求め、東京のはずれに庵を結ぶ隠居老人を訪ねることにした。
一白翁と名のるこの老人は、若い頃、百物語開板のため、諸国の怪異譚を蒐集してまわったほどの不思議好きだという。
翁は、静かに、そしてゆっくりと昔の事件を語り始めた。
鈴の音とともによみがえる、あの男の声を思い出しながら。
「御行奉為―(おんぎょうしたてまつる)」
      <カバー見返し側 より>



矢作剣之進の友人は、笹村与次郎、武士を捨てられず道場主をしている渋谷惣兵衛、洋行帰りの倉田正馬。
そして、一白翁が山岡百介。
明治になり、警官の剣之進が、実際に起こった不思議な事件を解決するために、一白翁に過去に怪奇な例があったかを聞きに来る。
一白翁の語る物語は、又市が仕掛け人となった物語。
それを参考に、剣之進の持ち込んだ事件が解決される。
と思う、その不思議なことは、又市や百介が係わっていたのもの続きだったりする。
結構どんでん返しもあるし、本当によく考えられていると、面白い。

前2作とは、ちょっと今までとは違った雰囲気はある。
時代が変わったからかも知れないが、今の推理物と同じ感覚になる。
不思議なことは、目線をちょっと変えると違う物が見えたりする。
まとめて考えていたことを、一つ一つ別のこと捉えるとまた違ったものが見える。
物語は色々と示唆に富んでいる。
生きて行く上で、どう考えたらいいかも考えさせられる。
何事も気持ちの持ち方が大事なのだと思うけれど。

「赤えいの魚」はちょっと納得がいかないことが。
何年も続いた感情のない生活。
なぜ、寿美だけが感情を表したのか、というより、ある程度の感情はどんな人間も多少はあると思う。
それまで、全く無表情と言うのが信じられない。
そしてそんな中、どうして甲兵衛だけがあんなに感情を爆発させるのだろう。
生まれながらそうならば、同じ様な感情になって行くような気もするが。
しかし、これはかなり残酷なことがあり、読んでいてもぞわぞわと気持ちが悪くなるくらい。

後の事件もかなりおぞましいものが多いのだが。ぞわぞわする。

しかし、罪を犯した人間が、本当に罪に押しつぶされるのかは分からない。
それはそうあって欲しいという希望で、以外を平気に過ごしている人間もいたりするかも知れない。
犯人は見付からない事件も多いということは、その後も普通に生活が出来ているということにもなるのではないだろうか。
現在、たくさんの信じられないような事件が起きているが、人間の心に歯止がなくなっているのも事実な気がするから。
実際には分からないことだ。

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